第13話 わたくしが図書館に行かない日
わたくしは週二、三回は恭介と放課後デートと称して、学校最寄り駅前の大変立派な図書館に出かけております。
そのうちの一日は大体図書館のテーブルを長時間占領して過ごします。
そして残りの日は、早めに本を借りたり文献でしか調べられない調べ物をしたりなど、図書館での用事をこなしたのち、図書館併設のカフェへ向かいます。
大きな図書館に大きなカフェ。
学校最寄り駅前であってもあまり同級生には出会いません。
そもそも学校の敷地も広大。生徒の借りられるスペースも多く、学校の図書館の蔵書数も大したものですし、学生が興味のあるジャンルを中心にそろえているのでむしろ学校の図書館の方が読みたい本が見つかるなんてことも多いはずです。
そして駅を反対へ渡れば大型ショッピングモール。映画館もカラオケも古着屋も手芸屋もスーパーも完備。生徒が放課後に交友とあれば、皆さんそちらに足が向かうようですね。
図書館に二人で行かない日。
恭介はいつも一緒に行動しているご友人と過ごしているようです。
何か動画制作など?を一緒にやっているようで、実は遊びに誘われたことは数回ありましたが放課後の集まりには誘われたことがありません。
放課後集まるからごめんと断られるのです。
遊びに誘われたことがあるというのも、翔子さんがいらっしゃったときで、わたくし薔薇子になってからのご紹介はまだになります。
一応彼女という立場ではありますが、まず翔子さんのときからなのですが、あまり恭介は恭介の友人と翔子さんが絡むのをよく思っていないのではないかと思いました。翔子さんは人見知りであること、うまく動けない自分に自己嫌悪してしまうことを察してくださっているようにも思いました。負担をかけたくない、無理に誘いたくないということなのでしょう。
恭介は遠目から見てもいつも友人に囲まれて、クラスにうまく馴染んでいるように思います。
わたくしはといいますと…。
実は今日は友人の三島燈花さんと憧れのファミレスのパフェを食べにいくのですわ!
「いやー、翔子ちゃんがパフェ食べたことないなんて信じられないよー。私が翔子ちゃんの初体験に立ち合ってしまっていいのかな?」
「燈花さん言い回しがおやじ臭いですわ。」
「翔子ちゃんお嬢様漏れ出ちゃってるよっ!学校では気を付けてるのにね。」
「そうでした。…でももう学校を出ましたし、よろしいですわよね?」
そうわたくしは学校ではこのお嬢様の喋り方?を直して普通の女子高生を演じているのです。ですがたまにお嬢様が出てしまいます。
以前学校で普通に話しておりましたら、偶然近くにいた恭介がいけないものを見てしまったと言うような顔をしておりましたのが印象的でしたわ。
…思い出すと失礼すぎて腹立たしいので省略します。
燈花さんは翔子さんが唯一心から仲良くしていた親友でした。
全部ではありませんが、お母さま、大崎家の皆さまの次に、大事な友人である燈花さんに事故についてお話ししました。
事故に遭い頭を打って、人格がお嬢様になってしまった。こう説明してあります。記憶の混濁があることも。
燈花さんも。恭介と同じく、わたくしを受け入れて、友達のままでいてくださるそうです。温かすぎますわ。
目の前に運ばれてきたチョコレートとイチゴのパフェをカメラに収めます。
まるで芸術品のようですわね。写真に映えますわ!
残しておきたい光景を切り取り収めることが出来るこの媒体は本当に素晴らしいですわ!
「最高ですわ!」
「そんなに喜んでくれるならもっと早く気づけばよかったなー。この写真を恭介君に送っておこうっと。」
「どうしてわたくしの周りの方々はわたくしの写真を勝手に共有しているのでしょうか。怖いですわ。」
「よきかな良きかな。良いものは共有して愛でるべきなのです。」
「全然よくないです!」
「そういえば近況はどうなの?ほら学校では聞きにくいし。
以前から大崎君との距離感で悩んでたでしょう?
翔子の記憶は戻ってないしいつ戻るかも不明なんだよね?ぶっちゃけ彼氏といっても知ってるけど知らない男性ってのがスタートだし。応援しているこっちもハラハラするんだよね。」
「えぇ、ですが心配をよそに、恭介は以前と同じように、いえ以前にも増して、わたくしを尊重し丁寧に大事に扱ってくださっているんです。」
「つまり以前の事故に遭う前の翔子と同じかそれ以上に優しいってこと?」
「その通りですわ。」
「うーんなるほどね。でもなんか大崎君の気持ちもわかるなぁ。」
燈花は自分のパフェをつんつんしながら話す。
「どういうことですの?」
「翔子はさ、自分のことをどう思ってる?」
「どうとは?」
「うーんと、以前の翔子とどう違うと思ってるか。確か別人格?のようなものって言ってたよね。」
「その通りですわ。以前の翔子さんは今いない状態のようなものとわたくしの中では理解しております。わたくしは令嬢翔子のような人格ですわ。」
「やっぱりね。でも大崎君はそうは思ってない。という気がする。」
「つまり、翔子さんの人格喪失に納得していない。諦めてない?そういうことですの?だから過保護になってるから大事にされてるように感じる?」
「そこまでは言ってないよ!
だけどほとんどそんな感じ。
私もね、あなたは別人格と言ってるから尊重しているけど、なんていえばいいんだろう、面影って言うのかな。翔子を感じるの!だからこうやって、すんなり仲良くなって、新しい翔子も大好きなんだと思う。
大崎君もね、新しい今の翔子に、以前の翔子の面影を見ているんだと思う。
悪くとらないでね。字面では今カノに元カノを重ねているように感じるかもしれないけど…。翔子は翔子だよ。私はそう思うんだ。」
「そう…、ですか…。」
「あなたは納得できないかもしれない。だけど家でもご令嬢翔子でやっていて、心配されていないんだよね?多分みんな翔子の周りはそう思ってる気がする。
翔子は内気なだけで、実は裁縫も歌も運動も勉強もポテンシャルがあったように思うの。
翔子は今の性格になってなんだか解放されたって感じで、私は今の翔子も大好きだよ!
羽が生えた鳥のように、ぐんぐん水を吸い上げて大きくなってく植物みたい。すぐに大きな花が咲くだろうな。
いつだって応援するからね!あまり考えこまないで。
あと大崎君にはどんどん甘えなさい!」
「ふふふ。燈花さんたら…。ありがとうございます。
わたくしって、昔から良い人に恵まれていましたのね。」
気が付くのが遅すぎますわね…、翔子さん。




