表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/73

44話 匂いを頼りに


 王都の大通りの真正面、冒険者ギルドの前の広場。普段なら人々の交流の場となり行きかう人々で賑わうそこは、今は百人を超える冒険者で貸し切り状態だ。


 環状に集まる冒険者達の中央にいるのは数人の精鋭達だ。S級パーティーと上位のA級パーティー、ルゥフのような特別強い者。


「…皆さん、準備はよろしいですね? では、お願いします」


 ギルド職員の合図と共に、広場に大量の魔力が集まり、辺り一帯が光で満ちる。極度に圧縮された魔力によりあちこちを電気が走った。


 何とも凄い光景だ。火竜の時とは規模が違う。魔法使いだけでなく、少しでも支援魔法が使える者は全員魔法を使っているのだ。


 そうこうしているうちに早い者たちはすでに魔法を発動させ、中央の精鋭達に向かって魔法の光が飛んでいく。初めはまばらだったそれらは次第に数が多くなっていき、最後にはまるで流星群のようになっていた。


 俺もそれらに混ざり、彼らに手をかざし、加護を強化する。


 その間にも支援魔法は続き、そして誰かが一番最後の魔法をかけ終わった時には。


「これは‥‥凄いな!」


 レイ達は眩い光に包まれ、周囲にエネルギーが満ち満ちていた。さながら神話の英雄のような、もしくは、それこそ数百年前の勇者のような、そんな状態になっていた。


「‥‥支援魔法は完了しました。ではこれより──」


 職員は腕に抱えた円柱状の魔道具を冒険者達の中心に置き、職員は冒険者達に顔を向け、尋ねる。


「皆さんを北の街ノースに送り込みます。準備と覚悟はいいですね?」


 聞かれた者たちは皆決意に満ちた表情で頷く。


「それでは‥‥健闘を‥‥!」


 円柱状の魔道具からドーム型に光の幕が発生し、中心にいた冒険者達を包み込んだ。そして目が眩むような光を発し──


 ──光がなくなった時、すでに彼らはいなくなっていた。


「無事に転送が終わりました。皆さんは王都周辺の警戒と、後始末の準備を」


 職員の指示を聞き、冒険者達はあらかじめ決められた持ち場へと戻っていく。後はレイやルゥフ達に任せるしかない。彼らが勝利することを祈るのみだ。


 あの面子ならば四天王一人相手なら十分だろう。問題は他の悪魔の介入や、四天王が一人ではなかった場合。

 最初は他の街の冒険者まで王都に集めていることに疑問を感じていたが、今は何となくわかる。


 大勢の戦力を持たない人々が悪魔にされるより、少数の元々強力な冒険者が悪魔にされるほうが脅威となると考えたのだろう。


 弱い人々を見捨てた胸糞悪い作戦ではあるが、まあ実際合理的に考えればわからない話でもない。後はその作戦が吉と出るか凶と出るか──


 ‥‥考えても仕方ない。俺も、見回りの仕事に戻るか。



──────────────────────────────────────



「ここは──」


 眩いばかりの光が消えた時、ルゥフたち悪魔討伐隊の皆は王都とは別の街にいた。同じ大陸の同じ国の中ではあるが、比較的温暖な王都周辺に比べ、ここは気温が低い。おまけに空は一面厚い雲に覆われ、日の光を完全に遮っていた。


「北の街ノース…。懐かしいな!」


 レイが周囲の街並みを眺めながら呟く。世界中を旅した彼がそう言うのなら、ここは北の街で間違いないのだろう。

 とりあえず転送は成功したようだと、この街を始めて訪れた冒険者はひとまず安心する。が、すぐに気持ちを入れ替え、周囲を警戒した。安心している場合ではないのだ。


「‥‥静かだね」


 弓を構えながら、シッフがぽつりと呟く。

 落ち着いて改めて周囲を眺めると、所々に破壊の痕が見られるが、しかし人影は一人もいない。流石にこの短時間で全員悪魔にされたなどということはあるまいが、冒険者達の間に緊張が走る。

 と、その時。


「‥‥あ、あの…」


 ルゥフがおずおずとシッフの袖を掴み、話しかける。シッフがどうしたのかと視線で問いかけると、ルゥフは少し不安そうに答えた。


「‥‥街の人たちがいる場所がなんとなくわかりました。その‥‥ほら、これで」


 そう言うとルゥフは自分の鼻を指す。彼女の正体を知っているシッフは、それだけで状況を察し、他の者たちに声をかける。


「ルゥフが住人たちの居場所が分かったらしい。彼女の『鼻』は確かだ。彼女に案内してもらおう」


 すると、S級パーティー『影の衣』のリーダーらしき男がルゥフに顔を、というより仮面を向ける。


「居場所が分かった? 何故だ?」


「え‥‥と、その。加護の一部で」


 聞かれたルゥフは慌てて答える。が、仮面の男はルゥフから目を話す様子はない。


「今まで気づかなかったが、もしやお前は──」


「シャド! 今は彼女を信じよう! 一刻を争う状況だ!」


「…‥そうだな」


 レイの言葉に、シャドと呼ばれた仮面の男はしぶしぶ頷く。

 そうして、冒険者達はルゥフの案内のもと、街の中心へと歩いて行った。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ