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43話 緊急


 緊急警報を聞いた俺たちは大慌てでギルドまで走った。ちなみにヒートは流石にまだ厳しいとのことでエイサの研究所に留まっている。


 俺たちが冒険者ギルドについたころには、ギルド内はすでに急いで駆け付けた冒険者でひしめいていた。皆緊急警報を聞いて集まったのだろうが、そのほとんどはすでに戦闘態勢を整えているらしい。

 まあこの状況で緊急招集とくれば理由はひとつしかないし当然といえば当然だが。


「北の街ノースにて魔王軍四天王の一人と思わしき悪魔が発見されました」


 ギルドの職員が緊張の面持ちで報告する。やはり、遂に来たか。迅速な決着が鍵とは言ってたにしても、思ったよりずっと早かったな。


 冒険者達はといえば覚悟を決めた顔をしている者もいれば、不安そうな表情な人もいる。北の街はそこそこ大きな街だから、そこが故郷という人もいるだろう。


「北の街ってここからかなり距離があるぞ!? 急いで向かわないと皆悪魔にされちまう!」


 冒険者の一人がそう叫ぶ。


「皆さん、どうか慌てないでください。国から転送用魔道装置の使用許可が下りました、これで皆さんをノースへと転送します」


「そうか、よかった!じゃあ一刻も早く──」


「だから落ち着いて下さい! S級パーティーでも勝てなかったんですよ!? 何の作戦もなしに突っ込んでも死ぬだけです!」


 急いでギルドの外に向かおうとする冒険者達に、職員が怒鳴りつける。その剣幕に押され、ギルド内が静まり返った。


「‥‥こほん、いいですか? 四天王は人間を悪魔に変える力を持っていて、悪魔にされた人間は元々の強さが強いほど強力な悪魔になると言われています。ですから皆さん、どうか気を付けて。悪魔になるまで数秒かかるとのことですから、最悪の場合は自害する準備もしておいてください」


 職員の説明に、冒険者達は皆集中して聞き入っている。


「四天王と魔王以外の悪魔には悪魔化の力はありませんから、自信のない方々はそちらの相手をお願いします。…‥おそらくすでに、悪魔にされた人が何人もいるでしょうから」


 不安そうな顔をした冒険者達はこくこくと頷く。


「…それで、何か作戦はあるのか?」


 冒険者の一人がそう聞くと、職員は頷いて再び話し出す。


「さっき述べた通りの理由から、火竜討伐のような数で押す作戦はむしろ逆効果です。あえてはっきりと言わせてもらいますが、中途半端な実力では足手纏いにしかなりません。そこでS級パーティーと、それに近しい実力を持った方々にここで皆さんが一斉に支援魔法をかけ、数人の少数精鋭を四天王に、状況を見て残りの方々を街を襲っているであろう悪魔や魔物の討伐に送ります」


 作戦を聞いた冒険者達がにわかにざわめきだすが、異論がある者はいなそうだ。


「‥‥本来ならS級パーティーは全員送りたいところですが、残りの四天王は北の街にいるのを除いても二人、王都が手薄になったタイミングを襲ってくる可能性もありますから、三組のうち一組には残ってもらいます」


「じゃあ、俺たちが残ってやるよ」


 そういって手を挙げたのは、いつの間にかギルドの端の席に座っていたソードレットだ。腕は完治しているようだったが、表情にはかつての覇気がなくなっていた。


「…ではソードレットさん、お願いします。次に、まず最初にノースへ行き、四天王の悪魔と戦う方を決めたいと思います。S級パーティーの二組は決定として、サポートにA級パーティーの『魔光』の方々、それとルゥフさん、行ってくださいますか?」


「えっ」


 唐突に名指しをされたルゥフが思わず声を上げ、俺を見る。が、俺が頷くと、決意を固めた目で職員に向かって頷いた。


「ありがとうございます。それと──ジェシカさん、力を貸してもらえませんか?」


「‥‥え?」


 職員の言葉に、冒険者の視線が一斉にジェシカに集まる。


「わ、私は──」


 流石のジェシカもこの大人数に一斉に注目されるのは慣れていないのか、動揺を隠しきれない様子だ。しかし、すぐにいつもの表情に戻る。


「──悪いけど、こっちに残ろうと思ってたの。四天王って、S級パーティーが負けたんでしょ? じゃあ、王都に残るのがS級パーティー一組じゃ少し危険じゃない? それに、私は冒険者になったばかりだからチーム戦にも慣れてないし──」


 動揺を隠しながらのジェシカの言葉に、職員は確かに、と頷く。

 

「一理ありますね。ではジェシカさんは王都の防衛をお願いします。代わりにシッフさん、お願いできますか?」


「わかった。足手纏いにはならないよ」


「ありがとうございます。では早速支援魔法を──S級パーティーの方々はどこですか?」


 そういえばとギルドを見回すが、レイの姿は見えない。もう一組は──


「『影の衣』、ここに」


「ひゃあっ!?」


 と、いつからそこにいたのか、いつの間にか職員のすぐ横に、フードの三人組が立っていた。

 ‥‥あれ? よく見たらあの人たちいつだったか俺を回復してくれた人たちじゃん。

 え? S級パーティーだったの?


「お、驚かさないで下さい。それで、もう一組は──」


「すまん! 遅れた!」


 と、その時、ギルドの扉が勢いよく開き、レイが大声と共に入ってくる。


「…‥‥はい、これで揃いましたね。レイさん、北の街で悪魔が発見されました。今から支援をかけて転送するので、準備してください」


「了解だ! 俺はいつでも準備万端だ!」


 その言葉を聞きながら、職員はそうですか、と溜息をつく。しかしすぐに真剣な表情に切り替え、皆の方に向かって声を上げる。



「──それでは、これより四天王討伐作戦──開始します‥‥!」




 

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