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22話 火の竜


「ゴァアアァアッ!」


 咆哮と共に火竜は身体を回転させ、尻尾を振り回す。巨大な尻尾はまるで鞭のようにしなり、冒険者数人をまとめて叩き飛ばした。


「ぐ、うぅ‥!」


「くそ、いてぇ…!」


 攻撃を受けた者達は何とか致命傷は避けたようだが、あちこちに打撲痕が残り、血がどくどくと流れ出ている。

 

 怪我人が増えてきた。特に、近接で戦っている者の中には、重傷者もちらほらと見え始めている。


 魔法チームを回復役と攻撃役に分け、重傷者を回復させているが、回復が追い付いていない。このままでは、いずれ回復薬の魔力が尽きる。

 そうなれば全滅は必須、その前に決着をつけなくては。


「シッフ!」


 攻めあぐねるシッフに、マホが呼びかける。


「今回復を受けてる人たちが全快したら、皆に全力の支援魔法をかける。そしたら一斉に攻撃して。こっちの体力的にも、それが最後のチャンスだ」


「…わかった! よろしく頼む!」


 マホが持ち場に戻っていくと、シッフも他の冒険者達に指示を飛ばす。


「皆いいか! 支援魔法が来たら一斉突撃だ! 火竜も弱っているはず、最後の正念場だ!」


「おおっ!!」


 皆が力を振り絞って叫び、戦線離脱していた重傷者たちも復帰する。


「皆準備はいい…!?」


 それを確認した魔法使いたちは、円状に並び、呪文を唱え始める。円の中に魔法陣が浮かび、眩い光を放つ。

 火竜がそれに気づき、魔法使いたちを攻撃しようとするが、戦士達が気をそらし、攻撃を遮った。

 そして──


「神よ…! 我らに、力を──!」


 詠唱と共に、冒険者達が白い光に包まれる。


「おお、これは…!」


 力を感じる。サイの加護とはまた違う、力を引っ張り出されるような感覚。


「いくぞおおお! 火竜を倒せえー!」


「うおぉぉぉぉおー!!!」


 強化された冒険者達が火竜に一斉に飛びかかる。先ほどまでの疲労が嘘のようだ。


 なおも勢いを増す火竜の猛攻を避け、防ぎ、捌き、反撃する。


 剣で鱗を斬り裂き、槍で肉を突き刺し、槌で骨を叩く。力を振り絞った冒険者の攻撃が、少しずつ、しかし着実に火竜に傷を負わせていく。


 そして一人、持ち前の怪力に身を任せ火竜の体力を大きく削っていたルゥフもまた、支援魔法を受け、これまで以上に縦横無尽に跳ね回る。


 しかし、追い詰められれば死力を尽くすのは人間だけではない。


「な、なんだ?」


 火竜が唐突に上を向き、喉を、まるで何かを吐き出そうとしているかのように動かす。

 そして、口端から何やら液体が溢れ、鱗を伝って足先まで伸びる。


「ははっ! 俺たちの攻撃にたまらずゲロでも吐いちまったか!?」


 冒険者の一人が冗談を言いながらも警戒心を強める。他の者たちも異変に気づき距離をとった。

 次の瞬間。


 火竜が小さく火を噴き、そしてそれが全身を伝う液体に引火する。

 全身が炎に包まれた。まさしく火の竜、といったところか。


「あっちぃ…!?」


 支援を受けているとはいえ、炎を纏った攻撃にはさすがに苦戦する冒険者達。それどころか、攻撃をしようとするだけで大火傷しかねない。

 再び形成が逆転する。


「迂闊に近づけないな…!」


「魔法で一瞬消せないか!?」


「任せてっ!」


 指示を受け、攻撃を担当する魔法使いたちが一斉に呪文を唱え始める。

 近接戦担当の者たちが魔法使いを守ろうとするが、しかし今回は火竜は魔法使いを狙わなかった。

 魔法使いたちが動けない間に、他の冒険者を倒してしまおうという魂胆らしい。

 

「ぐわあぁっ! 早くしてくれっ!」


「お待たせ‥‥! 皆、一緒に…! はあっ!!」


 ──強風が、激流が、氷塊が、一斉に放たれ、火竜へと集中する!


「ウゥゥゥ…!」


 全身全霊の魔法を一身に受け、火竜の身体を覆っていた炎が消える。


「今だぁぁぁぁっ!!」


 喊声を上げながら、冒険者たちは攻撃──ではなく。火竜の身体にしがみつき、動きを封じた。邪魔者共を振り払おうとする竜に対し、万力を込めて踏ん張る戦士達。


「やれぇぇぇぇっ!!」


 戦士達の声を受け、ルゥフが弾かれたように飛び出し、火竜の顔面目掛けて一直線に殴り掛かる。

 足と尻尾を押さえつけられ、身動きの取れない火竜は大口を開けルゥフに噛みつく。ルゥフは避けることも叶わず、火竜に咥えられる。


「うぅっ!?」


 彼女は噛み潰されまいとつっかえ棒のように踏ん張るが、それは悪手と言わざるを得ない。なぜなら火竜の喉の奥から、獲物を焦がしてやろうとばかりに緋色の光が迫り──


「こんのぉぉぉぉ…! せいっ!」


 間一髪、ルゥフは火竜の牙をへし折り、隙間から脱出する。


 そして火竜の頭の上に立ち、折った牙を振り上げ──


「これで…!」


 火竜の脳天へと、深々と突き刺したのだった!



  


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