第5話 悪の組織の下っ端には節操がない?
異形の戦闘員達が雪崩れ込む。
肉体改造をした者たち。
異形で産まれて居場所がなかった者たち。
下卑達とは違った理由で社会から弾かれた者たちの忠誠は、深い。
「ふふっ、皆、お疲れ様ぁ♡
はぁー、下賤、お疲れ様ぁ。意外にやるじゃなぁい。
まあ、あいつの薄汚いけどしぶとい血があればそりゃあできるわよねぇ♡
はぁ、本当に最悪で最高の気分よぉ♡」
押し入ってきた、『闇夜』の異形の戦闘員達が下賤に続いて幹部も戦闘員も皆制圧した後。
かつかつと迷いない足取りで現れたのは、妖艶な女だった。
「初めまして。特殊組織『闇夜』のボスよぉ。暗守と呼んでねぇ♡」
「……あんたらの目的は、なんなんだ……っ」
「『外道』を何度も殺すこと♡それ以外にないわぁ♡」
「……何度も?」
「『外道』は、私達の実験対象よぉ。くずな私の父をいたぶる為に故人AIとしてプログラムしたのだけど、それが暴走して脱走して、いつの間にかこんな立派な組織まで作っちゃってたってわけぇ。
お分かり?あなたたちが仕えてた相手、人間じゃないのよぉ」
「………っ」
「あんたたちだって、別に忠誠とかないでしょお?
あいつが拾ってくれた。あいつなら暴れさせてくれる。
だからそうやってこっちを睨んでるだけ。でしょお?
……そういうことにしておいてあげるから、私たちに寝返りなさい♡」
暗守の声は甘く、匂いもほのかに吸い寄せられるような香気を発していた。
洗脳によく使われるような、たまらない香り。
気付けば涎と汗と気持ち悪いほどの興奮が、下卑達を満たしていた。
「………っ」
「新しいワンちゃん、歓迎するわよぉ♡」
似た者親子だな、と毒気づいた『下劣』は、目が笑っていない暗守により、スタンガンで気絶寸前まで電撃を与えられていた。
「……このまま、寝返るのもいいんじゃねえ?」
捕獲されて数日後、喉を治療された『下種』はそんなことを言い出した。
「えーっ?仮にもあたしたち雇われよ?そんなこと出来るわけないじゃなーい!」
「暗守に貰ったカードで買い物しまくっといてよく言うわよねぇ、『下品』」
「もらえるものはもらっといたほうがいいでしょ、『下世話』!あんたこそ外道ボスの過去のやらかしライブラリに籠ったり闇夜の戦闘員と悪口や愚痴で盛り上がってるじゃないの!」
「だって楽しいんだもの!っていうか、知れば知るほどわたし、こっちに肩入れしたくなってきたわ!うちのボスいくら何でも屑過ぎるわよ!■■とか●●とか最低過ぎるわ!」
「なんでちょっとうれしそうに語ってんだよ、この下世話が」
「……チッ、どいつもこいつも……!おい、下卑ぃ!お前はこんなとこから脱出すんだろ!?」
「……俺は……」
下卑は、数秒逡巡し、答えた。
「『下賤』を取り返したいです」
「……初めて兄貴分になったもんな……」
普段ヤクザのように荒っぽいことばかり言う下劣が、珍しくしんみりした調子で返した。
下卑は、それでついほろりと来てしまった。
下賤は、同じ組織に来てもなお、つれなかった。
どころか、同型ボディの実験体たちの海に飲まれて見失うことさえあった。
たまに間違えて同型ボディを捕まえて下賤と呼ぶと、本物の冷たい視線が突き刺さる。
それで気付くこともあるくらい、下賤は徹底的に冷たい態度を取り、線を引き続けてきた。
「うぇぇぇん、下賤のばーか……!」
「負け犬の遠吠えだな」
「下劣さん言い方ァ……!」
そんな時だった。
彼らの集まる談話室に、突如びー、びー、と不吉な警告音が響き、異変を告げる。
『侵入者。侵入者、はっけけけけけけけkkkkkkkkkk』
「……っ!?」
騒然と立ち上がる下卑達。しかし、事態が向こうからやってくるほうが早かった。




