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ハザマ~高校生男子は異世界で精霊に愛され無自覚無双~  作者: 木賊
第4章 庵の能力、迫る大群
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93話 アスピドケロン

「飲み物いかがっすか~!」


今まさに作戦中の後方、サイクロンを唱えた者たちの近くを俺は両手いっぱいに水筒を持ってウロウロしていた。


サイクロンを唱えた者たちは前線とは少し離れた後方の、弓矢を放っている者たちのすぐ後ろでサイクロンを調節するために魔力を送りながら待機している。

魔力が少しずつ消耗していっているので体には付加が少しずつかかっていて、サイクロンを唱えて20分ほど経った今は皆が額から汗を流して苦しい表情をしている。


魔力は精神エネルギーから作られるもので、魔力を使うということは精神が削られていくということだ。

次第に体が重くなり、汗をかき手足が震え血の気が引いて、意識が朦朧となりやがて倒れるとそこで魔力切れとなる。

魔力切れを起こすと2~3日は寝込むと言われていて、今回の作戦でサイクロンを唱えると決まった者たちは数日間寝込むのを覚悟でサイクロンを唱えたのだ。


そういったことは情報の精霊に教えてもらって、維持のことも考えて、なんとかならないかと動いたのだ。

ロディオータに「ちょっと用事ができた」と適当なことを言って戸惑うロディオータを置いて騎士たちのテントに向かった俺は誰もいなかったので侵入して、置かれていた騎士たちの身の回りの荷物から複数の空の水筒を見つけてそれを水の精霊を呼んで全部の水筒の中を水で満たしてもらってそれを持って駆けつけた。


「飲み物か・・・。すまない、もらって、いいか・・・?」

サイクロンを唱えた1人の騎士がそう汗をかき真っ青な顔をしながら言ってきた。

「はい、どうぞ。」

渡したら情報の精霊が俺に知らせてくる。

『この人間は魔力を70%消費してる。』

それを聞いて、俺は密かに20%消費した状態になるように魔力を送った。


そう、俺は誰にも気づかれないように【魔力譲渡】を使うことにした。


【魔力譲渡】は接触しなくてもいいが、ある程度の距離まで近づかないとできないようで、ロディオータの隣にいたときに試しに前線で戦っている騎士たちに送ってみようとしたが送れてる感じがしなかった。

なので飲み物を渡すという口実で近づいたら【魔力譲渡】ができると考えたのだ。

例え「飲み物いらない」と言われても通りすがりに近づいたら譲渡はできるので問題はない。

俺が【魔力譲渡】をしようと思いたち、騎士のテントに侵入しながら情報の精霊に説明したら情報の精霊は『だったらその人間がどれくらい魔力を消費しているか%で教えよう』と協力してくれることになったのだ。

魔力消費を0%になるくらい満タンに魔力をあげることも簡単にできるけど、急な体調回復は不審がられる。

ちょっと体調不良が続くぐらいが気づかれにくいと考えた結果、20~30%残しにしたのだ。

俺は邪魔をしたい訳じゃないんだし、飲み物を飲んで気力がちょっと回復した、くらいに思ってくれたらいいと思ってのことだ。


持っていた大量の水筒は次々と渡していって、その度に情報の精霊が言ってきた%にそって魔力を送ってった。


そうして20分が経過して、サイクロンを出して40分が経ったがサイクロンを唱えた者は顔色は悪いものの誰も魔力切れを起こしておらず、大群もいい調子で吸い込まれていっているようだ。

ロディオータのいるところまで戻ると、勝手に動いたのでちょっとたしなめられたが時間としては1時間で間に合いそうとのことだった。

「なんでかわからないけど、サイクロンは皆の様子を見る限りもうちょっと続けても大丈夫そうだから、もしかしたら全ての魔物を空間に送れるかもしれない。もう大群はあと100ちょっとまでになったようだし。」

どうやらロディオータはサイクロンが切れたら騎士たちとハンターたちの力で空間に押し込むか倒すことを考えていたようだ。

だけどこの状態ですみそうなまで大群は減ったしサイクロンを唱えた者たちは大丈夫そうだからこのまま終わらそう、という考えになったってとこかな。

まあ、その方が騎士たちやハンターたちが安全だもんな。


うーん、でもなんかさっきからズシンズシンと足音が聞こえるような気がするんだよなあ。

それがなんか面倒臭い予感がするんだよなー。



「騎士団長殿!た、大変です!!」

1人の騎士が大慌てで駆け寄ってきた。

その騎士は大群の最後尾の様子を見に行っていた偵察担当の騎士だ。

「大群の最後尾の様子を見てきたのですが!厄介なのがいまして・・・!」

厄介なの?

ロディオータはピクリと眉を潜めると騎士に続きを促した。


「最後尾に・・・アスピドケロンがいます!!」

「は!?」

予想してなかったようで、ロディオータは驚いて声をあげた。


アスピドケロン・・・。

確か、漫画かラノベかなにかで読んだことがあるな。

とんでもなく大きな亀の怪物で、背中の甲羅には草木が生えていて、ある時にアスピドケロンが海を漂っていたら島と勘違いした船乗りたちが上陸して焚き火をしてたら、急に島が動き出してアスピドケロンだと船乗りたちは気が付いた・・・なんて話の奴だよな。

あっちの世界では無害っぽかったけど、こっちの世界では大群の中にいるんだから人に害のある魔物なんだろうか?


うん、っていうか、さっきからのズシンズシンはアスピドケロンだね、絶対。

とか思ってたら、周りの木々をなぎ倒す勢いでとんでもなくでっかい亀が姿を現した。

海にいるイメージだから手足がヒレの海亀を想像していたけど、まさかの陸亀で手足はゾウのように固そうで、甲羅だけでも5メートルありそうだ。

甲羅から出ている細長い顔は亀そのもので、半目でとんでもなく眠そうな感じでボーっとしながらゆっくりゆっくり歩いている。


「なんて厄介な・・・。」

ロディオータが考え込むようにぽつりと呟いた。

厄介、厄介言ってるけど、具体的にどう厄介なんだろう?

「どう厄介なんすか?」

俺が首を傾げながら聞いたらロディオータは教えてくれた。


「まず、アスピドケロンは魔物たちの乗り物として有名なんだ。」

「乗り物?あんなゆっくりの亀が?」

すごいゆっくりだよ?

あれだったら早歩きの方が早いくらいにノロノロだよ。

「重量があって頑丈。辺りを蹂躙するにはぴったりだろ?」

はー、なるほど!

「つまり、大群にいるってことは・・・。」

「人間の村や町に対する蹂躙要員ってとこだね。その証拠に、ほら、アスピドケロンの頭の上をよく見るんだ。」

そう言われてよーく目を凝らして見ると、アスピドケロンの頭の上に人型の魔物が腰かけていた。

ゴブリンに似て体長1.5メートルくらいで紫の肌にボロボロの黒の軍帽をかぶって手には鞭を持っていて振り回していた。

「あれはゴブリンの亜種で、他の魔物を乗りこなすゴブリンライダーなんだが・・・魔王軍を表す黒の軍帽をかぶってアスピドケロンなんて魔物を乗りこなしているところを見ると、ゴブリンライダーの中でも上位の軍関係者ということだね。」


え、てことは・・・。

「この「魔物の大群」は魔王軍が関わっているってこと?」

「その可能性はあるってことだ。」

でも、魔王は情報の精霊によると人間界をどうこうしようなんて考えてなくて魔界で大人しくしてるって話だったけど・・・。

「まあ、そこはひとまず置いといて。本当に厄介なのはアスピドケロンがサイクロンにびくともしていないところだ。」

そういえばとアスピドケロンの足元を見たが、飛ばされないように踏ん張ってさえいない。本当にごく普通にゆっくり歩いているのだ。

「このまま空間に直行・・・とはさすがのゴブリンライダーがさせないだろう。横にそれるように指示するはずだ。横にそれてルートから外れられたら騎士たちやハンターたちの攻撃でルートに戻るとは思えない。なんせ甲羅がとんでもなく頑丈だからな。かといって倒すとなればある程度の犠牲は出るだろう。」

「ええっ!?」

犠牲なんて・・・そんなの絶対ダメだよ!

「横にルートをそれたら、それだけ南にある王城に向かう可能性が高くなってしまう。だから倒さねばならないのだけれど・・・どれだけ攻撃したらダメージを与えられるかわからない、というわけだ。な?だから厄介、なんだよ。」

ロディオータは頭をかきながらそう言って本当に苦し紛れという感じで苦笑した。

うん・・・それは本当に、厄介だね。



「因みにあのアスピドケロンは子供だ。成長すると軽く20メートルは越えるらしいよ。」

「ふぁ!?」




この次でやっとこさ「魔物の大群」は終わる・・・予定です。

それから2話くらい閑話があって、次の章にいく・・・はずです。

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