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第五話 お風呂

お風呂って何だか怖いよね?

特別何かあったわけじゃないのに無性に怖い。

ホラー映画とかではシャワーから血が出たり、髪の毛が出たりするけど、実際は無い。


鏡に人が映ることも、浴槽に人がいることも無い。

頭ではありえないって分かってるんだけどそれでも怖い。

特にシャンプーしてる時とかもうたまらない。


背後に気配を感じたりすることもあるけど、振り向いたらいない。

でもね、本当に全部が嘘って証明できる?

例えば、誰もいないはずのお風呂で自分を触る人がいたら?

これはそんなお話。




私がある日家に帰ってお風呂に入った日の事なんだけど、仕事であまりにも疲れていて、お風呂の中で眠っちゃったの。

その時は無事だったんだ、お湯に顔が浸かった時にすぐに目が覚めたから。


危なかった~と思ったんだけど、次の日も気づいたら寝ちゃった。

しかもその日はお酒も入ってて、たぶん普通にお湯に顔が浸かっても起きれなかったと思う。

そう、想像した通り、私は死にかけた。

あのまま目が覚めなかったら私は今ここにいなかったんじゃないかな。


何で助かったのかって?

最初に言ったじゃん、触られたからだよ。


私しかいないはずのお風呂で、私が眠ってしまった時に、誰かが私の首筋を触ったんだよ。

誰かが触ったってすぐに分かった。

冷たくて、力強かった。


冷たいだけなら水滴かなって思うんだけど、首筋全体を押された感じがしたんだよね。

それに気づいた瞬間ぎゃーって叫び声をあげてお風呂からあがったの。

夜中だったけど友達に電話して家まで来てもらって朝まで一緒にいてもらってさ、もう大変だったよ。


結局友達に頼んで一緒に朝から確認してもらったんだけど、何もいなかったの。

言いたい事は分かるよ、私の気のせいだったって言うんでしょ?

怒らないよ、実際私も気のせいだったかもって思ったもん。


しばらくは私も怖かったから家のお風呂に入らなかった。

確かめる事も出来なかったんだけど、1ヶ月くらい経った時によし、入ってみようってスイッチが入っちゃって。

夜は怖かったから昼間、しかも友達に外で待ってもらって、絶対安心って状態で入ったの。

私がずっと喋りながら入るから音が聞こえなくなったら助けてって。


うん、あのね、やめとけばよかった。

シャワーを浴びてる時は何も無かったの。

お風呂の中に入ろうかな、でもちょっと怖いなって中を覗き込んだ瞬間、すごく強い力で首と頭を押さえられて、水に沈められて・・・。


めちゃくちゃ苦しくて、どうしようもないってあきらめかけた。

正直死ぬかと思ったし、今生きてるのも不思議なくらい。

友達が助けてくれなかったら絶対に死んでた。


しかもね後から分かったんだけど、友達に聞いたら私はずっと喋ってたらしいんだ。

だから友達も最初は気づかなかったんだけど、何だか様子が変だって思ったらしいの。

なんかね同じ事をずっと繰り返して喋ってたから。


これはおかしいと思って扉を開けたって言ってた。

何を喋ってるかも分からなかったし、何て言ってるのって言いながら。

扉を開けた瞬間鳥肌が立って、叫び声を上げたらしいよ。


まあそうだよね、そこには頭を浴槽に沈めた私がいるわけじゃん?

めっちゃ焦って助けようとしたんだけど、一瞬動きが止まったんだって。


どうもね、天井から伸びてたらしいの、私を押さえつける無数の手が。

びっくりしたって、1本や2本じゃなかったし、何より喋ってた言葉もはっきり聞こえてきたんだって。


「早く、早く、早く」


「「一緒、一緒、一緒」」


「「「おいで、おいで、おいで」」」




その日から速攻ホテル暮らしで1週間で新しい家に引っ越したよね。

それまで何とも無かったのに急に心霊現象起こるなんて本当ビックリ。

あれはたぶんあの家じゃなくて私がどこからか拾ってきたんだろうなって。


お祓いには行ったんだけど、完全には祓えないって言われちゃって。

しかもさ出来る限り健康的な生活を送る事が唯一幽霊に付け込まれない方法だから、毎日楽しく過ごしなさいだって。

まあそれでどうにかなるなら毎日楽しく生きてやろうって。

あなたも気を付けたほうがいいよ、どこで何がついてくるか分からないし。


え、本当にそんな事あったのかって?

ああ、お坊さんのアドバイスがうさん臭く聞こえるんでしょ?

証拠見せてあげる、ここ、私の首の所。


残ってるでしょ、数えきれないくらいほどの手の跡が。

これね、半年経った今でも消えないの。

まだ狙われてるんだろうね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第一部分の入り方から心を掴まれました。 この話で鳥肌が立ちました。自然でテンポもよくて面白いです。 [一言] 他の作品も読むのが楽しみです。
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