第四十話 キャンプ
今日は子供会のキャンプの日だ。
夏休みになる前からずっと楽しみにしていた。
僕達は朝に集合すると、まずテントを立てた。
テントを立てるなんて初めての経験でワクワクする。
説明を聞く間も早く組み立てたくてしょうがなかった。
テントにポールを差し込んで、地面に固定用の杭を打つ。
たったこれだけなのに1時間以上もかかった。
それでも僕は楽しくてしょうがなかった。
友達と一緒に何かをやれるだけで嬉しいのだ。
そしてお昼ご飯を食べて、昼からは海水浴だ。
友達と浮島まで競争したり、砂浜の近くで貝を拾ったりした。
ゴーグルをつけて覗いた海の中はまるで別の世界。
色とりどりの魚が泳ぎ、砂の中でも生き物が動く。
どこを見ても楽しくて、友達とずっと笑いあっていた。
1時間程泳ぐと休憩。
それからスイカ割をしたり、ビーチフラッグをしたり、ビーチバレーをしたりして楽しんだ。
景品もあって凄く楽しかったけど、さすがにちょっと疲れた。
夕方には皆着替えて、昼寝をした。
テントの中で寝てもいいと言われたけど、それは夜までとっておく事にした。
友達と体育館に枕を並べて眠る。
起きたら皆で夕食作り。
カレーとサラダを作るんだけど、やった事が無かったから難しい。
でも友達のお母さんに教わりながら料理を作るのは面白かった。
ピーラーで皮をむいたり、包丁で小さくしたり、野菜を手でちぎったり。
一番楽しかったのはお肉を炒める時だ。
良い匂いが広がってそのまま食べたくなった。
お肉を水で洗おうとしたら笑われたけど、僕も楽しかったのでまあいいや。
出来上がったカレーはすっごく美味しかった。
最後に後片付けと花火をして1日が終わった。
花火で字を書いたら怒られたけど、楽しかった。
そしていよいよテントで寝るのだ。
テントは3人1組で泊まる事になっていた。
僕も友達と一緒にテントに向かう。
夜遅くまで遊ぼうと思っていたけど、お昼の疲れからか僕はすぐに寝てしまった。
ガサガサ、変な音がする。
僕が目を覚ますとテントの中には誰もいない。
外は暗いからまだ夜だ。
寝ぼけた頭で2人がどこに行ったのか考える。
トイレにでも行ったのかな?
少しの間ボーっとしていたが、そうだろうと考える。
なら自分もトイレに行こう、そう思って体を起こす。
その時テントの外からガサガサと音がした。
さっき聞いた音だ。
僕は音がした方を振り向く。
そこには影が踊っていた。
影が踊りながらテントに迫って来る。
さらに後ろからもう1人分の影。
僕が思わずテントの入り口を見るとそこから誰かがこっちを覗いている。
うわっと思わず声が出た。
そうしたら入り口が勢いよく開いて友達2人が笑いながら入ってきた。
うわってなんだよ、ビビりすぎ、そう口々に言っている。
あの影はこの2人だったのか!
じゃあ入り口から見ていたのは誰か別の人で、僕の事を撮影していたのかも?
僕がもうっと怒ると2人はごめんごめんと言って隣に座り、そのまま話だした。
あれ、さっきの人は帰ったの?
僕がそう聞くと2人はキョトンとした顔をする。
さっきの人って誰?
とぼけた感じで僕に聞き返す。
また怖がらせるつもりなんだ。
もうそんな手には乗らないぞ!
「さっきの人だよ、2人が外で踊ってたでしょ? その時に中を覗いてた人。」
「は? 中を覗いてたって、誰が? 俺達以外誰もいないぞ?」
「うそだ、だってさっき入り口から覗いてたもん。 僕を撮影してたんでしょ?」
「本当に知らないって! お前こそ俺達を怖がらせようとしてるんじゃないの?」
え、待って、じゃあ、あれは、本物のお化け?
背中がぞくぞくする。
友達2人も何が何だか分からないと言った感じだ。
心霊現象ってあるんだ、怖い!
あ~でも良かった2人がいてくれて。
1人だったらもう寝られなかった。
じゃあこのまま3人で朝まで起きてようよ。
僕がそう提案するとそうしようそうしようと賛成してくれた。
じゃあ楽しい話をしようと僕が言った時だった、入り口が開いて友達2人が入ってきた。
え?
おう、起きたのかと声をかけてくる。
あれ、今までどこに?
トイレだよ?
お前こそ1人で何喋ってたの?
いや、1人じゃなくてさっきまで僕は2人と・・・。
僕は言葉を失ってさっきまで2人がいたはずの空間を見つめる。
何も無い。
誰もいない。
僕が喋ってたのは誰?
あれはいったい何?
もうわけが分からなくて、怖くて、今にも泣きだしそうだった。
さっきまでここに2人がいたんだよ。
小さな声で言うと入り口にいた2人がああ知ってるよと笑いだした。
大きな大きな声で笑いだし、次第にその姿は闇に溶けていく。
そしてそのまま2人は消えて無くなった。
限界だった。
僕は怖くて怖くて毛布をかぶって震えながら過ごした。
しばらくすると眠っていたらしい。
翌朝2人に起こされて、思わず悲鳴を上げる。
何だよ、と言われたのでつい本物と聞いてしまった。
偽物なんかいねーよとわらわれたが、僕が昨日の事を話すと2人の顔が変わった。
口々に朝から怖い事言うなよと文句を言われた。
ああ良かった、この2人は本物だ。
怒られて安心するのも変な話だが僕はほっとしていた。
2人に昨日何をしていたか聞くと、トイレに行ったついでに持ち込み禁止のゲームをしていたそうだ。
本当は3人で抜け出すつもりだったが、僕はぐっすり寝ていたから放置されたらしい。
一緒に連れて行ってくれれば怖い思いしなくて済んだのにと2人の事をちょっと恨んだ。
結局昨日の事は夢だったのか、本当だったのか分からない。
どっちにしても怖い事は変わらない。
本当だったら家までお化けがついてくる?
夢であってほしい、そう願うしかなかった。




