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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
悲哀っ!! 正社員激闘編っ!!

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第96話 いやぁ、今日は本当。色々あったなぁ。

 

 「怪獣討伐数11、12、13……。凄い……」

 「ウォーカー。次々と怪獣を討伐していきますっ!!」


 「なんだ……。これは」

 

 

 ◇ ◇ ◇


 

 「凄いっ!! なにあのロボットっ!!」

 「卵みたいだけど、凄く強いっ!!」


 「次々と怪獣を……。こ、これが私達を除隊させた兵器の実力なのっ!?」

 「凄い凄いっ!! かなり強いよぉ。や、やっちゃぇえ――っ!!」


 

 これはどういう事……?

 急に現れたウォーカーなんてふざけた名前の機動兵器が……。


 怪獣を、次々と倒していく……。

 私達が倒すべき筈の怪獣を……。


 あんな、ぽっと出の機動兵器が……。


 ぐるぐる回ったり槍で切ったり。そもあの槍はなに?

 どうしてそんな威力があるの?


 殺傷能力が高すぎる。こちらが10人がかりでなんとか倒した怪獣の足を。

 スパスパと草を刈るように切り倒してしまう。


 そうして倒した怪獣の上に乗りながら、そのまま解体していく。

 機動性も良い。卵型の体を利用してゴロゴロ転がり怪獣の足元を動き回り。

 あっという間に怪獣に近づいて足元を傷つける。

 それで、もうそこからは作業だ。


 途中、貞子の大群に出くわしてたりもした。

 だが。


 槍を薙ぐだけで全て真っ二つになっていく。

 ああ、分かってる。


 こいつは、強い。


 「す、凄いっ!! こ、これは……。つ、強いわっ!!」

 「これが超兵を引退に追い込んだ新兵器の力……。こ、これほどの物とは」


 隊長が褒めている。

 さっきまでは私を褒めてくれていたのに。


 周りに仲間達も同じだ。

 棒立ちで、その兵器の実力を褒めそやしている。


 状況が変わった。


 あれだけ皆でわちゃわちゃと。協力しながら怪獣を倒していたのに。

 もう。


 やる事がない。

 全部あの卵野郎が取っていってしまった。


 皆が喜んでいる。膝を付いて泣いている子まで居る。


 ようやく終わる。

 怖かった。

 あれに任せれば。


 みんな、みんな……。

 そんな事ばっかっ!!


 なんでっ!? 今までずっと仲間でやってきたじゃないっ!!

 こ、この戦場の主役は私達の数でっ!!


 そ、そう……。私達こそが人類を救う盾でっ!!

 あんな機動兵器になんて……。


 私は、私は……。


 いらない子なの?

 あれだけ頑張ったのに……。


 軍縮なんて……。そんなの。

 超兵こそが、戦場の主役で……。救い主で。


 「これはっ!! これは使えるわっ!! ウォーカーっ!!」

 「頑張ってウォーカーっ!! 悪い怪獣なんて……」


 「全部やっつけちゃってっ!!」


 隊長が喜んでる。

 この裏切りオカマ。


 ああ、もうやる事がない……。


 怪獣が……。怪獣が……。

 怪獣をいっぱい倒して……。あの人をお婿さんにするって私の計画が……。


 ウォーカー。いや。

 鷹司京介……。


 私はあんたを。



 ◇ ◇ ◇


 

 「凄い、凄いですわっ!! か、怪獣が次々と倒れていきますわっ!!」

 「ふふふ。大丈夫? 揺れてなーい?」


 「え、ええ。これほど動いても揺れないとは。ウォーカー。素晴らしい性能ですわっ!!」

 「そうだねぇ。やっぱり博士は優秀だねぇ」


 「博士、ですの?」

 「うん、可愛らしい女の子だよ? 君と同年代くらい」


 「そ、そうですの……」


 ウォーカーでの戦闘が続いている。といっても、もう殲滅戦みたいなものだけど。

 俺はウォーカーを駆り怪獣を駆除し続ける。

 敵怪獣のサイズは4、50m程度。正直、まぁ敵じゃない。


 でもこのサイズをアンノウンで倒すのはかなり過剰戦力なのだ。

 だから基本マリスとの戦闘後は超兵さん達を頼る事になるんだけど。

 それが、自分で出来るようになるなんて。


 ウォーカ。良いじゃないっ!! かなり動かしやすいっ!!


 頭で考えた通りに動くし、アンノウンランスの威力もあってスパスパっとっ!!

 小気味よく倒せて良いなぁ。


 「そこですわ京介さまっ!! やぁっ!! えいっ!!」


 同乗者の女の子も喜んでくれてるっ!! 

 思い出したけどこの子美代子さんと一緒に居た子だ。


 名前はぁ。

 うん、忘れた。

 

 なもんで極力名前を言わないで彼女との会話を合わせる。

 一度名乗った人に誰ですか? なんて言ったら傷つけちゃいそうだしね。

 まぁなんとか思い出せるよう努力してみるが。


 しかし今は。


 「えいっ!! 回転斬りっ!!」

 「わぁっ!! 怪獣が倒れましたわっ!!」


 今は楽しく怪獣討伐と行こうじゃないか。この子も喜んでくれてるしっ!!

 人にゲームの実況を見せてる気分。あの頃はスマホでゲームの実況動画をよく見たなぁ。

 今はぁ。スマホとかは危険だから無理か。パソコンでぇえ。

 家にネット回線無かったから……。


 「ほらっ!! そこですわ京介さまっ!! トドメをっ!!」


 でも今はこうして女の子の前でプレイして楽しませてる。

 かなり怯えていたから、こうして喜んでくれると結構嬉しいなっ!!


 あ、怪獣が火を噴いてきた。はい、転がって回避、っと。


 「コロリン回避ですわっ!! 危機一髪流石ですわ京介さまっ!!」

 「ふふふ、ウルトラテクだぞ――。凄いでしょ」


 「はいっ!! 素敵ですわ京介さまっ!!」


 ふふふ。感受性豊かな子だ。ともかく元気になって良かった。


 (怪獣残り1よっ!! 頑張ってっ!!)


 あら?


 「怪獣終わりだって。結構倒したからね――」

 「え? もう終わりですの? あ、あっけないですわ」


 まぁ、残党の小さいのだしね。これくらいは簡単って事で。

 ふぅ。ともかく。


 残党処理完了。あとは貞子みたいな小型種の撃退か。

 ここは本格的に軍隊に任せよう。マリスはもう居ない。なら掃討は容易な筈だ。


 「終わった……。本当に、終わったんですの?」


 うん。


 「終わったよ。怖かっただろうね。もう大丈夫だからね」


 ああ、終わった。少なくとも表面上は。

 まだ「これから」はあるだろうけど、それは静まっていく筈で。


 俺は、そのまま残り一匹となった怪獣へと向かう。

 暗い事考えるのは苦手だっ!! それなら。


 「ほーら見てっ!! 怪獣ダルマ落としだよ――っ!!」


 どうせなら最後は楽しくっ!!

 俺はアンノウンランスで振りながら、最後の怪獣を頭から千斬りにしていく。

 その最中に切った部分を飛ばしてダルマ落としの要領で小さくしていくのだっ!!


 「あははっ!! 怪獣が小さくなっていきますわっ!!」


 お、喜んでくれた。うんうん。やっぱり子供は笑顔が一番だよ。

 泣いてる子より笑ってる子が居た方が、未来も明るいしねっ!!


 ああ、そうだたかしくんは無事かなぁ。博士も。

 博士居なかったなぁ。死んじゃったのかな。


 意識をたかしくんに向けてからどうも。

 ああ、やはり俺って。


 誰かを助ける順に順序付けしてるんだなぁ。

 どんなに強い力を持っていても、結局は誰を助けるかで。


 おっと、また暗くなる。はい駄目駄目っ!!

 ともかくこれでもう終わりっ!!


 ほら、超兵の子達も見てるぞっ!! 実戦経験ないてなかったろうに。

 みんなよく頑張ったねぇ。おお、泣いてる子なんてのも居る。

 

 ここは勝利のポーズなんかしてカッコつけて見るかぁ?

 ふふふ。うん。アレは……。


 あ、智代ちゃんじゃないかっ!! おお智代ちゃん元気……。

 あれなんか睨んでる?


 ええどうしてっ!? なぜになのかな?

 あらぁ、怖い顔の智代ちゃん。あ、戦場で緊張してたとか?

 あらあら、君のそんな怖い顔は似合わないよ。


 もっとこう、笑顔笑顔っ!! ……いやぁ無理か。

 

 「お父様……」


 うん?


 「どうしたの?」


 「いえ」

 「いえ…………」


 「おとう、さんが……?」


 「……………………」

 「あの、きょ、きょうすけ……さま」

 

 

 

 ◇ ◇ ◇



 「ふぅ……」


 社員はみな死んだようだ。


 「う、あ……、しゃ、しゃちょ……う」


 美千代も限界か。よくやってくれた。

 誰も居なくなったビル。そこでなんとか援軍まで生き残ろうと耐えてきた。


 向かってくる貞子共を抑えながらなんとかカフェテリアに逃げ込んだ。

 バリケードを作り、そこで籠城する。


 道中貞子共に殺された社員を何人も見た。

 どれもズタズタに引き裂かれ、苦悶の表情を浮かべていた。

 貞子は非戦闘員と判断した存在を生きながら解体する習性がある。

 子供ならもっとだ。


 もしここに娘が居れば、それはもう筆舌に尽くしがたい所業を受けただろう。

 だから逃げだせて良かった。

 我が子に介錯など。流石の私が気が重かった。


 アンノウンが来たのであればマリスは倒せると思って良いだろう。

 ならばあの子が生き残る可能性は十二分にある。

 そう、アンノウンが居るのならば……。


 アンノウン。


 地球の。いや。

 全宇宙、全ての生命の希望。

 人類をすんでの所で救った英雄だ。いや、人だけではないか。

 地球の英雄。生命体の英雄だ。


 英雄。


 まだそんな物を頼る日が来るなんて。

 アンノウンには感謝している。だが……。


 奴は強すぎる。本来はこのまま静かに朽ちていくだけの存在で……。


 強すぎる力は身を亡ぼす。奴は今まで何をしていたのか。

 あれほどの力を持って。20年も大人しくしていられるものか。


 ああ。


 「彼」は……。


 まだ、我慢出来るだろうか。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


 ドアの外で声が聞こえる。ガラガラと鳴くようなおぞましい声。

 貞子ではない。伽椰子だろう。

 マリスは悪意の塊であるため、人を襲わせる化け物はかつてホラーなどの題材にされた物が多い。

 

 その中でマリスは日本のホラー映画が気に入ったらしい。

 故にマリスが出す小型種は貞子や伽椰子など、日本モチーフのキャラクターが多い。


 まぁ海外に行けば違うのも居たらしいが……。

 ああ、そうだ。今はもう我々しか居ない。


 我々が美しい地球の真の支配者だ。ああ。

 ははは……。


 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


 ドアを伽椰子が叩く。


 一匹だけ。とは限らない。一匹だけと勘違いし倒す為出てきた人間に複数でかかる。

 なんてのは普通にあった事だ。マリスの基本理念は他者に悪意を与え苦しめる事。

 その為ならどんな手段でも編み出すのだ。


 最初はもっと小さい戦力だった。だがそれがじわりじわりと……。

 

 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


 伽椰子の声が大きくなる。こちらの焦りを誘発する為だろう。


 「う……。お、お守り……。しゃちょ、を……」


 美千代はもう駄目だ。ならば私も終わりだろう。

 だが。


 自殺など、するつもりはない。

 私は武家の血を引く由緒正しい血筋だ。


 それに、誇りを持っている。

 無様に散るつもりはない。


 私は美千代が持っていた剣を掴むと、そのままドアの前に立ち剣を構える。

 私の身は滅び、その生は違う自分へ引き継がれるだろう。

 なればこそ。今ある自分の生を清く、美しく保ちたい。


 だから。


 「来い。私は逃げん」


 たとえ滅びても、戦って見せる。

 その一瞬まで。


 ドアが破られる。中から。


 ああ、やはり。


 外には多数の貞子共。種類は多数だ。

 恐らくズタズタにされるだろう。

 だが。


 私は。


 わたしは?


 なんだ?


 槍が。


 空から槍が降りてきた。

 槍が円を描き。そして。


 落ちてくる。これは、卵か?


 「お父様っ!!」


 卵の中から。

 あはは、なんだその帽子は……。


 あはは。


 そうか。

 やはり君か。


「いや――。どうも結城くんのお父さん」

「ご無事ですか――?」


 やはり君か。

 やはり、君が……。


 君が。

 

 君が、英雄なのか?



 

 ◇ ◇ ◇



 

 被害調査報告書。


 行方不明 831020。

 死亡者 113050。

 救出者 2。


 今回のノア地区襲撃により地区住民の9割が死亡。

 死因の多くは避難後のテレビからの襲撃。

 テレビから這い出た貞子ら小型種の攻撃で大半の住民が死亡。


 現在、街の封鎖を行い消毒。殺菌の作業中。

 作業後終了後。


 住民を「ロード」して、都市再建に当たるべし。

 


 人類はまたひとつ危機を乗り越えた。

 人類の英知は危機をいつだって乗り越える。

 ばんざい。ばんざい。人類の勝利万歳。


 あはは。ふふふ。


 人類は。


 今日も、生き残った。

 

 これはとってもめでたい事だ。

 めでたい。めでたい。


 でも。


 「怖い……」


 「どうしました春美博士」

 「あ、いえ……」


 「春美博士。今回の件、貴方が作ったウォーカー。多大な貢献を果たしてくれましたね」

 「いえ、は、はい……」


 「怪獣討伐数38。まさに鬼神の如く働きだ」

 「はぁ……」


 「博士、君が作ったウォーカーを正式に次世代兵器として量産する事に決定した」

 「君が成した功績は偉大だ。今後とも」


 「人類の為に、貢献してくれたまえ」

 「はい」


 「今後とも」

 「私は、人類の為に……」


 私達は。


 本当に、まだ生きられるのか?

 本当に。


 ほんとう、に……。


 ねぇ、あんた。

 あんたが、本当に……。

 

 

 ◇ ◇ ◇



 ふわぁ、今日は疲れたな。

 う――――ん。ゲームはぁ――。


 うん。

 明日。

 明日でいっかっ!


 今は。

 今はちょっと。


 ちょっとだけ、眠らせて欲しい、な。

 って訳で。


 おやすなさ――いっ!!

 

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