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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
悲哀っ!! 正社員激闘編っ!!

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第89話 決着


 体は既にボロボロだ。「芯」が疲弊し怪獣を出す事も、再生する事も出来ない。

 ほんの数分間の攻防。その一瞬でマリスは。

 マリスが繰り出した戦力の全てが一瞬で壊滅した。


 負けた。敗北した。その結果を持って。

 

 マリスはボロボロの体でアンノウンに飛ばされ、どこぞの大地に……。

 大地?


 しめたっ!! そこに大地があると言うなら吸収出来る「素体」があると言う事。

 マリスは損傷した芯を修復しようと力を込め、地面を取り込もうとする。


 が、取り込めない。

 本来ならば土だろうが塵だろうが、なんだって取り込んで糧に出来る。

 しかし、その地面は取り込む事が出来なかった。


 マリスは地面を見た。

 そこには。


 「きひ。ひ……」


 「気付いたか」


 もはや立てず、その場で寝転がるしかないマリスに。

 アンノウン。彼が立って彼に語り掛けている。


 「ひ……。ひひひひ」

 「そこは吸収出来ないよ。だってお前らは」


 「同族は吸収しないもんな。種の保存の為に」

 「ひひひ。ひ、ひひひ」


 マリス。彼が降り立った大地。

 そこにあるのは地平線の彼方まで広がっている。かつてのマリスだった者の死骸。

 広がる全ての大地はマリスの死骸によって構成されていた。

 

 そのマリスのおびただしい死骸が大気のない宇宙空間で重なり合い。

 まるでそこが「星」であるかのように振る舞っていた。


 「この星は芯までお前達の死骸で構築されている」

 「ひひ?」


 「可能な限り、集められる限りのお前達の死骸だ」

 「地球が地球としている為に、月はどうしても必要だ」


 「だからお前達には月になって貰った。貴様等の死骸は朽ちない」

 「良い材料になったよ。なぁマリス」


 「名前無き存在」

 「全てがマリス。ああ、空しい存在だ」


 アンノウン。彼の者の話をマリスは聞いていた。

 聞いて、思い出した。


 そうだ。かつてマリスが地上にあった。

 地上を支配していた頃。


 「悪魔」が。


 1体の黒い悪魔が降り立ち、全てのマリスを滅ぼしたと。

 宇宙艦隊を組めるほどの強力な力を持った文明も。単独で強力な力を持つ生命体も。

 あらゆる文明、生物を吸収。蹂躙し、苦しめてきたマリスが。


 たった1体の悪魔によって滅ぼされた。

 20年前「異世界」に逃れ、そこで産み育った彼はその悪魔の伝承を伝えられながら育った。

 悪魔。


 地上には。

 故郷には悪魔が居ると育った。


 悪魔。

 ならば目の前の存在が。


 「ひひ。ひひひ……」


 最初に感じたその悪寒の正体。これこそ体に染み込まれた悪魔への畏怖なのか。

 伝えられてきた力。マリス本来が持てる力の全てを解放して尚勝つ事が出来ない。


 ああ、そうだ。地上へと向かう時に伝えられた筈だ。


 悪魔には気を付けろ。


 そう、そう伝えられた。

 悪魔。


 我ら善良なるマリスを滅ぼした悪しき悪魔。


 それが。

 それが……。


 「きひ………。ひひひひ」


 そうか。


 「きひ」


 ああ、そうか。


 やはり。


 「人」こそが。


 人こそが我らの真の友人なのだ。


 「きひひひひひひひっ!! やっぱりマリスは正しいっ!!」

 「ああ、恨み。強い恨み。そして憎悪を感じるっ!!」


 「やはりマリス(悪意)こそがこの宇宙を統べる大いなる力っ!!」

 「きひひひひひひひっ!! 我らのする事は何1つ間違っていなかったっ!!」


 「マリス、マリスこそがっ!!」

 「この宇宙を1つにするっ……。ぐべっ!!」


 マリスが、殴られた。


 顔を一発。

 殴られた口元から血がにじみ出る。


 「どうやって戻ってきた」


 アンノウンが聞く。


 「きひ。ひひ……」


 「ひ……。びぃっ!!」


 マリスがアンノウンに蹴られる。

 思い切り腹を蹴られ、マリスはその場で悶絶する。


 「ぎぃっ!! ぎ。ぎひ……」

 「なぜここに居る。残党は他にも居るのか」


 「きひ……。ひひひ」

 

 アンノウンが、マリスの腕を掴む。

 そして。


 そのまま引き千切った。


 「ぎぃいいいいいいいいいいいい――――っ!!」


 マリスが悲鳴を上げる。人間のように。


 「答えろ。お前達はどこから来た」

 「ひぃっ!! ひぃいっ!! ひぃいいいいいいい――っ!!」


 マリスが痛みからのたうち回る。

 アンノウンは気にせず、マリスの耳を持ち。

 そのまま、抉り取った。


 「ぎゃあああああああああああっ!! ぎぃっ!! ぎぃいいいいいいっ!!」


 マリスが痛がる。苦しみ。


 「どうした。他者を悪辣に扱うのが貴様等の相互理解なのだろう?」

 「ならば自分にも同じ事をされたらとは考えないのか?」

 「これは貴様等が率先して行ってきた理解の形だ」


 「ならば、それを心から受け入れるんだな」


 「ぎぃいいっ!! 痛い……。痛いぃいいいいいいいいいいっ!!」

 

 マリスは痛がる。痛い。思わず出た言葉。

 かつてその言葉を数え切れない程聞いていた。しかしそれは。

 他者がマリスに対して言う言葉だ。

 

 その言葉を自分で言う事など。


 あってはならないのだ。


 「ぎぃいいいいいいっ!! 痛い、ひひひいいっ!! 痛いぃいいいいっ!!」


 芯を失い、体の防衛本能を失ったマリスは痛みを感じる。

 血が流れる。「臓器」が機能する。

 それはつまり人のように。


 アンノウン、彼はそれを知っていた。


 「どうした。これが相互理解だ。吐け、貴様等のアジトは何処にある?」

 

 「ひぃいいいいいいっ!! ひぃいいいいいいいっ!! マリスである俺がっ!!」

 「俺が痛いなんてありえないぃいいいっ!! ああああああああっ!!」


 マリスは痛みにもだえ苦しみのたうち回る。アンノウンはそんなマリスの顔を掴み。

 その片目を直接抉り取った。


 「ぎゃあああああああああああああああああああああああっ!!」


 裂かんばかりの悲鳴を上げながら、マリスはその場で叫ぶ。

 空気が無い筈のその宇宙で。


 マリスは。アンノウンは互いに通じ合う。

 それはまさに相互理解だろう。


 マリスは言葉を持たない。マリスはテレパシーで会話する。

 そしてそれは今のアンノウンも。


 そうして互いに分かりあいながら、その先をゴールを探す。

 探すのはアンノウン。

 彼はマリスから聞きだせるであろう「ゴール」を望んでいた。


 「答えろ」

 「貴様らのアジトはどこにある? 他の残党は。貴様は」


 「なぜ、ここに居るのだ」


 アンノウンがマリスの胸倉を掴む。そうして、マリスの残る片目に指を指し、向ける。

 それはつまり。


 言わねばもう1つの目も潰すという意味。


 「ひ……ひぃっ!!」


 マリスは思わずのけぞり、その行為に恐怖する。

 そうして、マリスは喋り出した。


 「ひひ。ひひひ……。異世界」

 「異世界、だと?」


 「そうだ。僕達は異世界に逃れた。い、異世界。異世界に……。き。きひひ」

 「異世界、まさか……」


 繋がっているのか?


 「ひ、ひひひひ……。ひ。ひ……」


 マリスが、弱弱しく笑う。

 体から血が流れ続け、機能し始めた臓器がその血の不足を嘆いている。


 「ひひひ……ひ。ほ、ほら。全部、白状しただろう?」

 「だから……。俺を、助けて、くれよ? ひひ、ひひひ……」


 マリスはもはや恥も外聞もなく、彼に助けを求める。

 アンノウンは問う。


 「貴様を助けて、それで回復したら」

 「貴様はどうするんだ?」


 「ひひ?」


 問われたマリスは。


 「そんなの全部殺すに決まってるだろっ!! また全部殺すっ!! この世の全てをマリスするっ!!」

 「きひひひひひっ!! 全部殺すっ!! 犯す痛めつける嬲る苦しめるっ!!」


 「きひひひひひひひひっ!! ああ、悲鳴が聞きたいっ!! なんでも良いっ!!」

 「この苦しみっ!! この痛みを他の連中にも与えてやりたいっ!! 全部全部にっ!!」


 「この痛みをっ!! 恨みを返してやるんだぁああああああ。きひひひひひひひひ――っ!!」


 ああ、そうだろうな。


 アンノウンがマリスの首を掴む。

 そして、ゆっくりと力を込めだした。


 「ぎぃっ!! ぎぃいいいい。許す……。許すと言った筈だぁああああっ!!」

 

 ゆっくりと。ゆっくりとその手を強くする。


 「ぎぃいい……っ!! ぎぃ……。いたい。いたいいぃいいいっ!!」

 「体が……。僕はマリスなのに。僕は全ての命を殺すんだぁああああっ!!」


 「なんで……。僕が……。あくま……。この悪魔が……」

 「そうだ……。悪魔。ああ。そうか……。そうかっ!!」


 「貴様が「きょうすけ」だなっ!! 悪魔っ!! 悪魔の名だっ!!」

 「きょうすけっ!! 悪魔っ!! 悪魔めっ!!」

 「ひひひひひひひ、伝説の悪魔きょうすけめっ!! ひひひひひ、復讐してやるっ!!」

 「我らを滅ぼした悪しき悪魔っ!! 貴様の家族を、貴様の仲間をっ!!」

 「根絶やしにしてやるっ!! 苦しめてやるっ!! 未来永劫苦しみをっ!!」


 「死ね死ね死ねええええええええっ!! きょうすけに呪いをっ!! 死の呪いをっ!!」

 「きひひひひひひひひひひひっ!! きょうすけっ!! きょうすけを殺すっぅうううううっ!!」


 「うるさい」

 「ぎびゃあっ!!」


 最後に思い切り力を込めて、マリスは地面に転がった。

 もう動く事はない。マリスは、倒された。

 アンノウンがそうして動かなくなったマリスを見下ろしながら。


 「良かったよ。あの頃と変わってなくて」

 「だから殺しやすい。ああ、お前達が相手でそれが唯一良いところだよな」

 

 「マリス」

 「お前達はこの世に生きていちゃいけない存在だ」


 既に動かなくなったマリスを一瞥する。人の形をし、人の言葉を話す化け物。

 マリス。もし彼らがまだ生きているのだとしたら。

 

 ならば。

 己が成さなければいけない選択は……。


 彼が。大地を見る。

 マリスの死骸で覆いつく尽くされた遺骸の月を。


 地球からは輝く月そのものに見える。

 ややサイズは大きくなったが。それでも月は月だ。

 近くで見れば、ピエロばかりのむさくるしい場所だが、それは本物の月も同じだろう。


 遠くから見れば美しいという事もある。

 マリスという存在も遠くで見るだけだったら……。


 相互理解。


 彼らとは結局分かりあう事は出来なかった。

 だが、それで良いと彼は思っていた。


 他者を苦しめる事で手に入る相互理解など無くて良い。

 人と人、他者と自分というのは。


 「歩み寄り、分かりあう事こそが……」


 彼が、地球を見る。そこは自分達が住む、安らぎ、愛しい。


 「俺の故郷だ……」


 帰ろう。


 ああ、でもちょっと憂鬱だ。


 たぶん色々混乱してる。きっと「アンノウン」の事も色々騒ぎになるかもしれない。

 かつて世代だった人達とは違う。

 彼らと同じように自分という存在を放っておいてくれるかは分からない。


 でも。


 「でも帰らないって手はないよねって話」


 異世界。その事を考える。

 たぶん、アレだ。


 「仕事、止めないとなぁ……」


 そこに奴等が居るなら。

 

 「放っちゃおけないよ」


 ともかく、まぁともかくだぁ。


 インフラ、無事だと良いなぁ。

 電気付かないとテレビ付かないじゃん。


 よし。って訳で。

 地球にご帰還っ!! よ――し家に帰ってっ!!


 「ゲームっ!! ゲームをしに行かなくっちゃねっ!!」


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