第84話 決意
「あの時」から。
ずっと全てを我慢してきた。
我慢して、全て捨ててきた。
本当は。
本当は欲しかった。
学校にもしっかり通いたかった。
大学にだって行きたかった。
普通に就職して、普通に恋をして。
結婚だってしたかった。
子供だって欲しかった。
「普通」の生活が。
夢が。
希望が。
歌手になりたかった。
ライブで歌ったりしたかった。
学校に通いたかった。
青春を送りたかった。
軽音部なんて作って。
学際で歌ってちやほやされたりなんて。
まだ出来る年齢だった筈だ。
チャンスはあった。
でもそのチャンスを全て捨てて。
ただ。
ただ。黙々と生きていただけだ。
ゲームだって本当はそこまで好きな訳じゃない。
でもその部分だけは早く復興したから。
なんとなくやっていただけだ。
ゲームの中でだけは。
冒険だって出来た。
恋人だって出来た。
ハッピーエンドだって迎えられた。
そこに全てがあったから。
だからそれを好んだ。
そこには得る事が出来なかった全てがあったから。
だから。
でも時が経って。
もう、すっかり年も取って。
姉が結婚して。
甥っ子が生まれて。
そうして日々が過ぎていく中で。
もう大丈夫なのかなって思ったから。
思ったから……。
自分なりの人生を歩もうと。
自分が歩むべく、新たな明日を歩もうとしたんだ。
そうする事が許されると思った。
それが出来ると思った。
それが……。
そうか……。
そう。
そうなのか……。
まだ。
まだ駄目なんだ。
そうか。
そう……。
そうかよ。
分かった。
そっちがその気だって言うなら。
俺は……。
「変身」




