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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
悲哀っ!! 正社員激闘編っ!!

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第73話 さすらいの……。 美人弾き語りだっ!!


 ガタン。ゴトン。電車に揺られながら、俺達はノア地区へ急ぐ。

 ノア地区。俺達の世界の首都だ。


 おお、麗しき首都。今日はその首都で豪華な朝食と洒落込む所なのだ。

 さてさて。今の残金は。


 230円。


 うん。うん……。


 くそっ!! 電車賃500円払ったら残りこれだけしか残らなかったっ!!

 コンビニでさっと買い物だけするつもりだったから電車賃の事まで考えてなかった。


 なにがファミレスだよっ!! こんなんじゃあジュース2本しか買えないよっ!!

 くそっ!! こんな事なら博士からお金借りてくれば良かった。


 でもあの場で博士金貸して。なんて言えないしなぁ。


 どうするどうする……。お、お金が足りないっ!!

 博士は相変わらず甘えモードで指舐めてくるし、たかしくんはじっとこっちの顔見てる。


 せっかく良い感じに「大人」してるんだからここは威厳を崩さずなんとか乗り切りたい。

 今の俺が「京介」なら良いけど、でも今は「京子」だから……。


 妹の威厳を損ねる訳にはいかない。 金っ!! 金っ!! 金っ!! 金がない……。

 さて、どうするべきか……。


 あ。


 そうだ。


 これなら……。イケる。か……?



 ◇ ◇ ◇



 「えっとお姉さん……?」

 「ママ、ここは?」

 

 たどり着いたのは昨日立ち寄った路上ライブオッケーなあの通り。

 今は平日の午前という事もあり、人はまばらだ。


 それでも幾ばくかの人通りがある。これなら……。イケる、かな?


 俺は昨日知り合った美容院の店主。

 重治さんの所を尋ねた。お金を借りに、ではない。


 「どうも重治さま。いらっしゃいますか?」

 「あら京子ちゃんじゃないっ!! 今日はどうしたのっ!?」


 「レッスンまでまだ早いわ。こんな時間にどうしたのかしら?」

 

 あれ、そういえば今日は普通に学校やってるよな?

 ならなんでたかしくんが……。あ、たかしくん学校さぼったな。

 

 たかしくんは学校の授業は退屈だとか言ってたまにさぼるんだよなぁ。

 今日もその部類だろう。まったく。


 やっべ。補導とかされたらどうしよう。

 まぁその時は博士になんとかしてもらおうか、ふふふ。


 ともかく。


 「預けていたギターを御貸し頂けないかと」

 「あら~ん。ふふふ、弾き語りでもするつもり? 武者修行かしら~ん?」


 そんなところだ。

 

 「お姉さん、何をするの?」


 何をするって。

 そんなの。


 弾き語りして朝食代ゲットって寸法だっ!!


 一度やってみたかったんだよなっ!! 路上に立って弾き語りでお金稼ぐのっ!!

 残金230円。これをせめて電車賃含めてぇえ。

 3千円くらいまで稼いでファミレス代ゲットだぜっ!!


 「え、なにをするつもり?」


 博士も疑問でいっぱいって顔だ。しかしここは黙って見ていて貰おう。

 そう。今日の朝食代を稼ぐため……。


 ジャラン。っとギターの弦を鳴らし路上に立つ。

 ギターケースを正面に置いて。あ、通じるかな? よ、良かったらこれにお金をって……。

 へへへ。さぁ、そう言う訳で。


 ちょっと。弾いて行こうか。


 まだ午前だし、って事で激しいのはなし。落ち着いた感じのポップスを。

 そうして俺はギター片手に路上で曲を弾きだした。


 昔は、将来はこうやってお金を稼いで知名度を稼ぎながら。

 将来はプロにっ!! なんて思っていた。


 まぁそれは色々な事があって出来なくなってしまったが……。

 この年になって、昔出来なかった事をする。


 その事にちょっと、いやかなり……。恥ずかしさを感じるが……。

 でも。ちょっとくらい。


 良いじゃないか……。


 俺はギターで歌を唄い続ける。その光景を2人は目を見開いて驚いている。

 なんで俺がこんな事を始めたか。そんな疑問を感じているだろう。


 でも、ほらアレだ。


 お金がね。無かったから。だからこうして弾いている。


 それだけ。

 本当にそれだけなんだよ。


 本当に……。それだけ……。


 

 ◇ ◇ ◇


 

 あれから。

 1時間は歌っただろうか。


 ああ、楽しくてついつい時間オーバーしちゃった。


 今は、何時だ……?


 ギターケースの中身は……。無い。


 やっぱり文化として定着していないからいきなりお金入れては無理だったかな。

 まぁお金入れてとも言ってないし、しょうがないけど。


 博士とたかしくんは……。あ。体育座りしながら見てくれてる。

 あはは。なんか着き合わせて悪いねぇ。


 人は……。結構多い。50人は居るだろうか。平日だけど、結構集まってるっ!!

 集まってるけどお金は0だ。ふふふ、こんなものなんだろうなぁ。


 でも。


 こうやって路上で誰かに音楽を聞かせる。


 そんな事、出来る日が来るなんて。


 ああ。


 本当はお金が入ってくる兆候が無いなら止めないといけないのに。

 でも……。


 チャリン。


 床に置いていた空のギターケースに、誰かが硬貨を入れてくれた。

 見れば重治さんが500円玉を2枚入れてくれていた。


 あら。


 あら――――。


 重治さんは笑いながら手を振ってくれていた。

 俺の意図に気付いてくれたのだろう。その気持ちが嬉しかった。

 振られる手を返しながら、俺は歌を唄い続ける。


 重治さんの行為を皮切りに、次々とお金を入れてくれる人が現れた。

 中には1万円札なんてのもあるっ!! お――。やったっ!! これで美味しい朝食……。

 

 いや昼食が食べれられるぞっ!! よ――――しっ!! そう言う訳でっ!!

 12時までライブしてやろ――っ!! ありがとうライブなのだっ!!


 あははははは――っ!!



 ◇ ◇ ◇

 


 「ふふふ、見て春美ちゃん。とっても美味しいそうですよー♪」

 「あ、ああ……。まぁ、うん」


 「ふふふ。一か八かだったけれど、やってみるものですね」


 「さぁ、君も」


 「一緒に、食べましょう」

 「は、はい……」


 儲かったっ!! 12時までのライブで8万2千円も儲かったっ!!

 みんないっぱいお金入れてくれてギターケースがお金でいっぱいだった。


 弾き語り。大成功じゃないかっ!!

 いやぁ。俺。


 もしかしてこの道でもやっていけるかもっ!! なんてっ!!


 あはは。


 「えっと、お姉さん……」

 「私は京子と申します」


 「貴方は」


 「どちら様ですの?」


 「あ、俺は……」

 「たかし。です……」


 「そう、たかしくん」


 たかしくん。

 どうだい?


 俺、実は結構歌うまだったんだぞ。なんてっ!!


 「お姉さん、その……」


 「歌」


 「上手いんですね」


 あら。


 「ふふふ」

 「ありがとう。たかしくん……」


 たかしくんに褒められた。あはは。なんだか嬉しいなぁ。いつぶりだろうか。

 いつもはわりかり馬鹿にされてたから。あはは。

 ああ。

 

 ああ。本当。


 「嬉しいですわ」

 嬉しいなぁ。


 「あ……」

 「へ、へへへ……」


 たかしくんが真っ赤になって照れている。

 こんなたかしくんは本当にいつぶりだろうか。


 ライブも成功するし、たかしくんに良いところ見せられるし。


 今日。


 結構、良い日じゃないか?


 「さぁ、では一緒に食べましょう」


 「美味しい」

 「美味しいラーメンですわよ」


 「おうっ!! たんと食べていきなお嬢ちゃん達っ!!」

 「はい、ありがとうございます。ご店主様」


 彼は昨日会った元物理学者のラーメン屋井上さん。昨日俺にラーメンを奢ってくれた。

 今日はそのお返しにせっかくだからって事で皆でラーメンだっ!!


 勝利のライブの後のラーメンは。

 とっても美味しいっ!!


 ああ。なんだか。


 俺。


 充実してるかもな――。


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