第72話 両手に猫っ!! そういえば久しく猫見てないなー。
はてさて、この状況はどう判断すべきか。
いま俺の両膝には2人の子供。左に春美博士。右に甥っ子のたかしくんを乗せている。
たかしくん。来て早々俺を見て倒れ込んでしまった。
最初会ったときからなんかずっと顔が赤かった。
それに気づいて声を掛けたら、そのままパタンと倒れてしまったのだ。
それから。まぁ今に至る。
しばらく休ませて、さてどうしようかと思ったら博士が来た。
それから。
なんか。
2人の子供を侍らせて、なんか頭とか撫でてる。
なんとかこう。ばれないように京子仕草で場を騙しつつ、この場を乗り越えようとしている。
ここは理由を付けてなんとか着替えたいのだが……。
その着替えが無い。
一張羅で来たから服が無いのだ。俺の服。どこにやったっけ……。
バトルスーツなら替えは沢山あるんだけど……。
うん?
あれ?
なら最初からバトルスーツを着て応対すれば良かったのでは?
あら。
まぁ。
う――ん。
まぁいっか。久しぶりにしおらしいたかしくん見られたし、ちょっと楽しいかも。
ふふふ、どうだいたかしくん。これが君の叔母の京子ちゃんだよ~。
綺麗でしょっ!? 昔はかなりモテたんだぞ~。
あはははは。義理の姿とはいえ、京子の姿を見せられてなんだか嬉しいな。
正体ばれてないみたいだし、結構楽しいかもっ!!
博士も偽装に協力してくれて、俺の事をママだって言っている。
まぁ若い里親なんてそんな珍しくないし、これはこれできっとバレないっ!!
博士を見れば猫みたいに目を細めながら、気持ち良さそうに日向ぼっこをしている。
そんな博士の頭を撫でると気持ち良さそうに頭を揺らす。
たかしくんの方はぁあああ。なんかさっきからじっと見て来るんだよな。
しょ、正体……。ば、バレてない。バレてないよね。
正直いつばれてもおかしくない状況。だからなるべく顔を合わせず横とか見せるようにする。
正面からだとバレる可能性アリっ!! バレたら親戚生活終わるレベルでヤバイぞっ!!
なんとかここはバレないように乗り切らないと。
しっかし本当たかしくん俺の事見て来るなぁ。ジロジロと口をポカーンと開けながら。
そんなに見られるとなんか気恥しいぞ。まったく。女の人の顔をじっと見るのは失礼だよ。
女の人と言っても女装した中年男性の顔だけどっ!! あっはっはっ!!
って、あらあら。ああ、博士。俺の指舐めたらいけないよ。
博士は頭が良くて凛々しいけど時々急激に幼く感じる仕草をする。
まぁ、色々と飢えてる要素があるのだろう。今は舐めさせるだけ舐めさせてあげよう。
ともかく。
この先どうしようかな。あれから30分近くこうして空を見ている。
いつもなら「空ばっか見上げるなこのクソニートがっ!!」
なんて言ってくるたかしくんも大人しくしている。
なんかさっきからずっと大人しい。まるで借りてきた猫のようだ。
左にメス猫。右にオス猫。両手に猫だっ!! 猫、昔飼ってたなぁ。
まぁ、今は猫なんて居ないけどさ。
左のメス猫により人差し指が吸われている。
その様子を見ていたオス猫は何を言うでなく怪訝な顔をする。
流石にここでお前何やってるんだよ。なんて文句を付けるたかしくんではない。
でも自分と同じくらいの少女が若い。
と思われてる女の子の指舐めながら甘えるのは妙だと思っているのだろう。
たかしくんは何も言わないけど……。ああでも博士。今の博士は威厳ゼロです……。
一応従業員の甥っ子なのだからもっと威厳を出して出して。
このままじゃあ貴方はただの甘えん坊幼女ですよ。昨日はカッコよく外交官してたのにまったく。
ともかくだ。
ともかくぅぅぅ。
ともかく……。うーーん。
こっからどうしようかなぁ。
京介さんは居ないから後日にぃ。って追い出すのもなんか気が引けるし。
正直異世界の事もあるから早めに引き上げたいけど……。
でも。
可愛い甥っ子を邪険にするのはどうも……。
しかしここは異世界の人々を守るために、馬謖を斬って正道を歩むべきで……。
ぐぅ――――――――――――。
あら?
「うっ……」
あら。
あら――――。
博士、お腹が鳴っちゃいましたね。そういえば朝ごはんまだでしたね。
「春美ちゃん、お腹減った?」
「あ、いや……。そのぉ」
来客の前で大きな腹の虫を鳴らしたのが流石に恥ずかしかったのか、博士が赤面する。
まぁ膝枕で指チューチューしてた時点で威厳ゼロなので気にしなくて大丈夫ですよ。
ご飯、ご飯かぁ。ちらりと施設の時計を見る。
時間は9時35分。もうそろそろ10時だな。ならば開いてる店舗もそれなりにあるだろう。
そういう事なら。
「では春美ちゃん。あと」
「君も」
「お外で食べに行きましょう。朝ごはんですわ」
「え、そろそろ10時ですけど……」
「うるさいわねガキがっ!! こちらと徹夜なのよっ!! 10時が朝食で何が悪いのよっ!!」
「え? 働いてる? お前はここで預かってるガキかなんかだろ?」
「はぁ何言ってんのよ私はっ!!」
あ、あら喧嘩が始まりそう。いかん、いかんよっ!! 喧嘩はいかんっ!!
ここは穏便。穏便にね。
「ふふふ。お外に食べに行きましょう。春美ちゃんも」
「な、なによ」
「ママと一緒に。外食。しましょうね」
「ね?」
にっこりと。笑ってごまかして博士を誘う。博士は「ママ」という言葉に弱いのだ。
ならば……。
「う、うん……。ママと一緒にご飯食べる……」
よし、大人しくなったぞっ!! なんだか扱い方が分かってきた。
なんて思うのは失礼だけど、ともかく博士はそういう性癖というか。
母性を求めるという癖があるようだ。ならばその癖、利用させてもらおう。
せっかくだしウチの甥っ子と仲良くしていってよっ!!
ちょっと生意気だけど良い子なのよっ!! ウチのたかしくんはさっ!!
「君も」
一緒にファミレス行こうぜーっ!!
「共に参りましょう」
「あっ……」
「は、はい……」
あら、しおらしい。ふふふ、こんなしおらしいたかしくん見るなんて初めてだ。
流石のやんちゃっ子も知らない土地では借りてきた猫って訳か。
良いじゃないか猫。猫かわいがりしてやろっ!!
それと一緒に叔母の京子のお披露目だ。
今日は京子仕草でたかしくんの度肝を抜いてやろうじゃないかわっはっはっ!!
そう言う訳でっ!!
俺は博士とたかしくんの手を両手で掴み。
「じゃあ行こっか。二人とも」
研究所を後にした。
「ママとお出かけだっ!! わ――いっ!!」
すっかり甘えん坊モードに切り替わった博士と。
「………………………………」
借りてきた猫となり、大人しいたかしくん。
両手に猫を携えながら。
さて、どこに行こっかな――。




