第70話 甥っ子襲撃っ!! うわぁ。知らない振りしたろっ!!
「ここ、か……」
「ふん、あのニートがしっかり働いてるか」
「確認してやらねぇとな」
◇ ◇ ◇
「ふわぁあああ」
「う――――ん。ママぁ~~」
「ふぅ。朝だ」
起きた。さてさて、今は何時かな?
見れば時計の針は9時を指している。寝たのが2時だと考えれば、つまり7時間ほど寝たと言う事か。
うん、実に健康的っ!!
「ママぁ、私……。良い子をぉ……」
博士を見れば、よく眠っている。寝る子は育つ。せっかくだし寝られるだけ寝かせてあげよう。
それ、と……。
俺は机の上に置いてある通信機を持つと、その場でスイッチを切った。
昨日の寝言。色々な人に聞かれていた可能性は。まあ――――。大いにある。
だがここで切ってしまえば少なくとも博士が切り忘れたと思い立って慟哭する事もないだろう。
画面の中の誰かが空気を読まず。
「夕べはお楽しみでしたね」なんて往年の古いゲームみたいな事を言って茶化さないかぎり。
博士の名誉は守られるっ!!
っという訳でお腹が空いたな。ゲームの中から食べ物を取り出す事も出来るが。
だがあそこの中の物は救援物資として取っておきたい。ならばやはりコンビニに走るしかないだろう。
今の持ち金はさて、どれくらいある?
見てみれば……。1730円っ!! なんと珍しい1000円以上の余剰があるではないかっ!!
これはかなり豪華に食べられるかもしれないっ!! 博士の為のサラダを買っていかなきゃっ!!
さてさて。そう言う訳で向かうとするか。腹が減ってはなんとやら。
「じゃあ博士、俺。いや今は」
自分の恰好を見る。ぴったりフィットのバトルスーツを来た可憐な女の子。
そういえばウォーカーに乗る為に着替えたんだっけ。胸に張っているパットは付けたまんま。
だからぁぁ……。巨乳じゃん。良かったなぁ京子っ!! なんて、あははっ!!
どうも。私こと鷹司京子ですわん♪ 巨乳になって新登場っ!! なんてっ!!
てな訳で今の俺は京子だ。ならば俺なんて使えないだろう。
まぁいつまでもこんな恰好していられないけど、今は仕方ないか。着替える時間無いし。
ともかく今は外に出ないとな。コンビニに。そういえばコンビニの子にも10代に思われてたなぁ。
改めて自分の体を見る。見れば、まぁ確かにシワらしいシワも無いし、肌は綺麗だと思う。
毛もまったく生えてない。髭は……。無い。なんでだろう本当に。
俺は順当に年を取っているのだと思うが、なんでこうも若々しいのか……。
若く見える理由……。う――んなんだろう。特に何かした覚えはない。
食事に気を使ってる? いやぁ……。
普段の食事はたかしくんのご飯や、たまに結城くんから差し入れを貰ったり……。
普通な物しか食べていない筈だけど。年齢を考えればおっと衰えても良い筈だけど。
にも関わらず体は今まで通りに軽快だ。
一体何がどうなっているんだか……。
まぁ良いか。
今はコンビニに行って何か買いにいかなくちゃ。さてさて、今日は何を買おうかなぁ。
「すいませ――――ん」
うん?
外に誰か居る? 来客か? そんな話は聞いていないが。
「すいませ――――ん。誰か居ませんか――?」
なんだか、聞いた事あるような、気が……。
あれ、この声って……。
「ニート。じゃなかった……。きょ、京介さんはいらっしゃいますか――っと」
うわっ。え。
「すいませ――――ん」
うわ。わっ!! わあああああああああああああああああああああっ!!
これ、これは……。
これはたかしくんの声じゃないかっ!!
はぁっ!? なんでたかしくんがここにっ!?
いや。俺に会いに来たのかっ!! うわ。ぎゃあああああああっ!!
な、なんてこったたかしくんが視察に来たっ!!
うわぁ。あ。あ。どうしよう……。
お。俺こんな恰好してるけど……。
うわ。うわ。
恥ずかしっ!! 着替え。着替えは……。
あ、これは昨日のワンピース……。ああ、もうっ!! 女物じゃないかっ!!
男物の服は……無いっ!! うわぁ。なら今の自分の姿では……。
うえっ!! こんな姿見られたら変な性癖があると勘違いされるっ!!
これは……。これは……。
よし。
知らない振りして対応しよう。あーあーあー。
俺は京介なんかじゃな~い。
俺は……。俺は……。
今の俺は京子。ですわっ!!
◇ ◇ ◇
「ニートの奴。居ねぇなぁ」
「ここだって聞いたんだけど」
戦術歩行兵器研究所。確かにここがあのクソニートの職場だと聞いた。
ここ数日家にも帰っていない。ならばここで泊まり込みをしていると思ったのだが、当てが外れたか?
父が言うにはあのクソニートはここで行われている展示会のスタッフをしているそうだが……。
「かなり広い場所だけど……。フロントには誰も居ないし。展示物が飾られてる気配もない」
「もう終わった? ホームページにはあと3日はやってるって載ってたけど」
ネットで見た研究所の技術展示会の情報。そこを見れば展示会はまだやっていると書いてあった。
しかし施設内部には何1つ展示物がない。
展示会は9時からと聞いて、それに合わせてやってきたのだが……。
しかし内部に案内の人も居ないし、閑散としている。
いや閑散どころの話ではない。誰も居ないのだ。ならば人っ子一人居ないと評するべきだろうか。
「潰れたのかぁ? でも政府出資の建物が潰れるかね。このご時世で」
古い人々は「潰れる」だの「閉鎖」する、などの言葉に酷く敏感だ。
だから今の時世では商店などが潰れないよう。
国から補助金を出して店舗が維持できるようサポートする制度がある。
それが政府出資の建物とあれば尚更保護されるだろう。
だから潰れた、なんて事はないと思うだが。
しかし誰も居ない。あのクソニートがここに居ると思ってやってきたのだが……。
「居ないのか? そんな筈はないと思うんだがなぁ」
「すいませ――――ん。誰か居ませんか――?」
駄目押しとばかりに呼びかける。
しかし誰も……。
「は――――――――い」
あ、人だ。
人の声がする。誰か居たのか。
声からすると女性の声。ここの職員。
か……。
「っ――――――!!!!!?????」
職員、が……。
「ごめんなさい。対応が遅れてしまって」
「あら、小さいお客様、御機嫌よう」
「ようこそ戦術歩行兵器研究所へ」
「今日は一体」
「どういったご用向きで?」
研究所の奥から……。
天使が……。
天使が、やって、きた……。




