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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
悲哀っ!! 正社員激闘編っ!!

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第69話 同盟成立っ!! うんっ!! それはそれとして眠いですなぁ。 


 「テスト。テストとは、つまりどういう事なのですかわん?」

 

 アデルバート伯との交渉が続く。気付けば伯は「だわん」から「だ」を抜かして会話をしている。

 そちらの方が言いやすいのだろう。たまにだわんと戻る事もあるが。

 

 意外と使いこなしてるなぁと感心する。しかしよくもまぁ付き合ってくれたものだ。

 辺境伯という立場であるなら他人にかしずかれる事も多いだろうに。

 そんな事を気にしていられない程追い詰められているという事だろうか。だがそれにしても。

 

 偉い貴族が自らをだわんだのと言うのは、どうしても可笑しく感じてしまう。

 緊迫した空間の中の、ちょっとした清涼剤。口調変えて物を言うのって、意外と良いかもね。

 俺も何か……。いや、止めとくか。年甲斐が無さすぎるぅ。あはは。


 「テストとはつまり」


 おっと博士達との交渉は続いてるんだ。下手な事考えないようにしよう。

 うんうん。キリっ!! っとねっ!! あははは。


 「テストとはつまり「ウォーカー」の機動実験を手伝え。という事よ」

 「起動実験。とはどういうものですかわん?」


 「簡単に言えば」

 「敵と戦わせろって事」


 「敵、と……? つまり」

 

 「魔獣とやらと戦わせなさいって事よ。私が作ったウォーカーはまだ未完成」

 「あれほどの戦果があり未だ未完成とは……だわん」


 「そう言う訳でもっと実働データが欲しい。今からそちらにウォーカーを送るわ」

 「それに陛下を乗らせ、実働の為のデータを取る」


 「陛下直々に? 大丈夫なのですかわん?」

 「陛下はそこにある人形を動かしてるだけ。人形が攻撃を受けても陛下には何のダメージは無いわ」


 「そ、そうなのですかわん。なんだかよく分からないわんけど」

 「協力、して頂けるわんか?」

 

 「敵が居るというなら都合が良いわ。訓練用の機械獣を製造するのもコストだし」

 

 「つまりあんた達は私達にウォーカーを訓練する為の「戦場」を提供する」

 「そして、私達はその見返りとしてあんた達の戦力として協力する」


 「これならお互いの得になるでしょ? どちらも損はしないわ」


 「なるほど……。しかしそちらの戦は終わったのでわん?」

 「終わったから無防備って訳にもいかないでしょう」


 「それは確かに。無粋な事を聞きましたわん」

 「ええ。ともかくそれで良いかしら?」


 「はい。こちらとしては反対する理由がありませんわん」

 「なら決定ね。つまり私達は」


 「同盟を成した。と言う事で良いかしら」

 「それは……」


 「ああ……」


 「ありがとう、ございますわん……」

 「これより我がロサガリカ公国辺境伯アデルバートと日本との同盟は成りました」


 「今後とも」

 「どうぞよろしくお願いしますわん」


 アデルバート伯が膝を付き、礼を述べる。

 これにて同盟は成った。これで心置きなく彼らに協力する事が出来る。

 一時はどうなるかと思ったけど、なんとか丸く収まったようだ。

 俺は通信機のスイッチを消して博士に声を掛ける。


 「博士博士っ!! 上手く行きましたねっ!! 同盟成立ですよっ!!」

 「ふん、私は天才なのよ? これくらい出来て当たり前って訳よ」


 博士が楽しそうに笑う。俺達が国家として認識されたのは大きな誤算だったけど。

 でも結果としてこれで良かったかもしれないとも思う。

 

 利害が一致した事によって互いの協力関係が円滑に進む。

 「同盟」という考えは実に先進的で素晴らしい。

 まぁそれによってしがらみも増えそうだけど、でもまぁきっとなんとかなるっ!!

 っと思いたい。


 「一時はどうなる事かと思ったけど、英雄様の助けが得られるようになって良かったでゴワスっ!!」

 「同盟、か……。なんだか大事になったニャンね。お姉ちゃん」


 アニエスさん一行も交渉が上手く行った事で安堵している様子だ。

 彼女達ともまた話す必要はあると思うが、しかし今は現状の鎮静化が必要であるだろう。


 同盟を結んだ以上、今はこのロサガリカ公国から動く事は出来ないだろう。

 ともかく状況確認をしなければいけないだろう。


 が。


 

「眠い……」


 

 が、眠かった。

 

 今日はあまりにも色々あり過ぎた。バンド活動をしたり他国と交渉したり。

 朝から晩までなんかして、寝る余裕なんか無かったと思う。


 だからこそ。


 ねむ……い。


 「博士、眠いですぅ……」

 「はぁっ!? 何言ってるのよこれからって時にっ!!」


 まぁ、そうなのだが。しかし今はやはりどうしても眠い。

 緊張の糸が切れ、余計に眠気が襲う。


 「えっと、今日はもうお開きしません? 続きは明日にしましょうよ」

 「何を言ってるのよっ!! 話はこれからでしょうがっ!!」


 「でももう」


 ちらりと、会議室に掛けられている時計を見る。


 「朝の2時ですよ? 寝る時間。もう寝る時間ですよぅ」

 「まだまだ寝る時間じゃないっ!! 薬でもなんでも打って起きなさいっ!!」


 「そんな不健康な事、嫌ですぅ。それにほら、見てくださいよ」


 俺が指を指した先。その先には俺と同じように緊張の糸が切れ、眠そうに眼をこする貴族達が。

 そう。あちらとこちらの時間は連動しているのだ。

 ならば互いに深夜帯に居るという事。と言う事はあちらも相当に眠いのだ。


 見れば唇を噛みなんとか寝まいと堪える者。手首の皮を引っ張り必死に耐える者。

 そうして眠気に耐えまんと我慢する者達がちらほらと散見する。


 異世界という違う世界に生まれた人間だろうが、しかし同じ人間なら生理現象も同じ。

 「寝る」という基本的な行動をしなければ行動は出来ないのだ。


 「皆さんも眠たがってますし」

 「あの人達に薬を打って寝るな。なんて言えないでしょ?」


 「ぐっ!! ううっ……」


 流石の博士と言えど、同盟関係を築いた他国の人間にそんな事は言えないだろう。

 俺は彼らの道理の中に組み込まれてしまったが、しかしそれは博士も同じ。

 少なくとも交渉役という役目を負った彼女がそのような事をする訳が。


 「分かったわよっ!! 寝れば良いんでしょ寝ればっ!!」


 ないのだ。


 よしよし、これで寝る事が出来そうだ。

 博士は通信機のスイッチを入れて、同盟者達に宣言する。


 「今日はもう遅いから寝るわよっ!! 続きは明日ねっ!!」


 その言葉を聞いて周囲の人々の顔が明るくなる。やはり眠かったのだろう。

 集まっていた貴族の面々が広場奥にある幅広の長階段を昇り、就寝場所だろう所に向かっていく。

 どうやらアンデール城上部は貴族達の住まいとなっているようだ。

 

 そういえばあそこの上は大きな庭園などがあり、それなりの大きさの屋敷もあった気がする。

 ならば貴族達はあそこで寝ているのか。ああ、庶民は地面に粗末なキャンプを立てて。

 貴族様は住み心地が良い屋敷を占拠してそこで眠る。


 そこに封建社会の闇を感じる訳だが。


 「私達も寝るわよ。布団持ってきて」


 俺達は俺達で。安全圏で布団を敷いて快適に眠る。本当、格差ってのはなくならないものだよなぁ。

 そうして俺は博士と共に会議場に布団を並べ、そこで眠った。


 テレビは、つけっぱなしだ。なんとなくだが、消す気分にはなれなかった。

 本来は無音だった筈の空間に微かに聞こえる人々からの雑音。

 なんだかそれが懐かしくて、その音を聞いていたかった。


 人々の営みの音……。勿論その前途は多難で苦しいものなのかもしれない。

 それでも。


 「ねぇ……」

 「あら、なんですか博士」


 「まだその姿のまんまなの?」

 「着替えるタイミングがなくって……」


 見れば俺の姿は京子のまんまだ。流石に恥ずかしくなったが。

 しかし着替えもないし仕方ない。


 「まぁ、今日はこのままで良いかと思って。着替えもないですしね」

 

 「そう……」

 「それがどうかしましたか?」


 「いや……」


 うん?


 「声色……、変えてよ」


 あら。


 「あらあら博士」

 「博士じゃないでしょっ!!」


 ああ、そっか。


 「ふふふ。今日は偉かったねぇ春美ちゃん」

 「ママがよしよししてあげますから。今日はゆっくり寝ましょうね♪」


 「うんママ――。一緒に寝よ――♪」

 「はいはい。良い子良い子~♪」


 36歳元無職の親父が12歳の子供になんて事してるのか。

 とは思うが、これはこれで彼女にとって需要のある事なのだろう。


 頭が良くなんでも出来るような彼女でも、満たされない気持ちを抱えている。

 俺達の世界は基本誰でもそうなのだ。完全に過去の業が拭われるのは、もうしばらくかかるだろう。

 皆何かを抱えながら、気付かないように生きている。


 俺は今の世界が大好きだ。たとえ以前より壊れ、歪んでしまったのだとしても。

 だから。

 異世界なんかに、飛ばされなくて良かった。


 俺はこの世界で生きていく。

 ずっとずっとここで。


 そう、俺は。

 だから。


 「ママぁ……。寝る前にご本読んでぇ」

 「はいはい。何のご本が良いですか? 春美ちゃん♪」


 「エエト……」


 だから切り忘れた通信機からアニエスさん達の困ったような言葉が聞こえたのだとしても。


 「じゃあご本読んで上げますからね。春美ちゃん♪」

 「うんママ――♪」


 無視して、ママさんプレイを継続してやろうじゃないか。


 

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