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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
悲哀っ!! 正社員激闘編っ!!

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第67話 楽しい宴っ!! だけじゃあ済まないよねぇ……。


 「お初にお目にかかります皇帝陛下。私はアデルバート様に御使いする貴族の」

 「お初にお目にかかります皇帝陛下。私はアデルバート様に御使いする貴族の」

 「お初にお目にかかります皇帝陛下。私はアデルバート様に御使いする貴族の」

 「お初にお目にかかります皇帝陛下。私はアデルバート様に御使いする貴族の」

 「お初にお目にかかります皇帝陛下。私はアデルバート様に御使いする貴族の」


 「ええいどんだけ紹介されるのよっ!! なんなのよこいつらはっ!!」


 博士が次々とやってくる人物達に激高して声を張る。

 勿論通信機のスイッチは切っている。

 博士はあれから続々とやってくる貴族の面々に面食らっているようだった。

 

 「やれ役職がどうだの。爵位がどうだの。何なのこいつら一体っ!!」

 「本題はどうしたのよ本題はっ!! もうっ!!」


 「ですから本題は宴が終わってからですよ。今は紹介された人を覚えるターンです」

 「次々と知らんような連中が来るんだけど、こんなん覚えてどうするって言うのよっ!!」


 「人の名前を覚える事も偉い人の業務ですよ。ほら、メモ帳にでも書いてしっかり覚えないと」

 「くそっ!! 貴族って言うのは思ったより面倒な職業ねぇっ!!」


 宴が始まってしばらく、俺達は来る人来る人の対応に追われた。

 アデルバート伯に雇われているだろう様々な役職の人々が俺に挨拶してくる。


 やれ大臣の何々だ。やれ軍団を指揮するの何某だといった具合に。

 様々な役職、身分の人々が俺に挨拶を返す。正直俺も面倒だと思っている。

 しかし俺の役職が「皇帝陛下」である以上それを怠る事は出来ないのだ。


 なぜならこちらが礼を欠いた事をすれば、俺含めた全ての「日本人」の印象低下を招くからだ。

 「皇帝」という存在はそれだけの効力を持つ。下手な事は言えないし下手な事も出来ない。

 実に不自由な身分。だがその不自由な身分を進んで選んだのから博士にはしっかり苦労して貰おう。


 「まったく……。これまだ続きそうな感じ……?」

 「いや、男爵の挨拶で終わったからもう無いと思いますね」


 「うん? どうして?」

 「皇帝に爵位持ち以外の紹介しないでしょうし、陪臣の紹介はここまででしょうね」


 「陪臣って?」

 「辺境伯の部下の貴族さんって事ですかね。男爵から下は準男爵か騎士でしょうし」

 「そこまでは流石に紹介しないでしょう。だからこれで終わりです」


 「流石に詳しいわね。そういうの習ってたの?」

 「そりゃあまぁ。多少は」


 「帝王学ってやつ? ふん、生意気――」

 「博士が彼らにその事を持ちださなければ今頃本題に入れてましたけどね」


 「はいはい。私が悪うございました――っと」


 そうだぞぅ。博士が悪い。でも今更ウダウダ言っても仕方ないし、続けるしかないよね。

 ともかくあちらからの紹介はもう終わりのようだ。


 博士は多い多いと唸っていたが、しかし紹介された貴族の数は13人。

 辺境伯という役職は国境地帯などの重要地点を任せられる代わりに領地が広いと聞いた。

 にも関わらず紹介出来る貴族がたったそれだけとは。


 こちらの気を使って。とも思えるがその少なくさはどうにも不安に感じる。


 「陛下、これで我が部下の紹介はこれで終わりです。謁見をお許しくださってありがとうですわん」

 

 部下達の紹介を終え、アデルバート伯が再び前に立つ。

 

 「しかしこのウイスキーと呼ばれる酒。かなりの美酒でありますわん」

 「良い酒がある国は良い国と聞きます。そうなれば陛下の国」


 「日本も良い国なのでしょうね。羨ましい限りですわんっ!!」


 「1億人居た人口はもう400万しか居ないけどね」

 「あっ……」


 博士の言葉で和やかに進行していた場が一瞬で凍り付いたのを感じる。

 その言葉を止めるべきとも判断したが、しかしこちらにもこちらの事情がある。

 それを知ってもらうのも大事かもしれない。


 アデルバート伯は一瞬固まったが、すぐに凛とした顔つきに戻し言葉を吐く。


 「なぜ」


 「理由を教えていただきませんか?」


 短い。


 飾りのないその言葉は、彼の武人としての顔を表していた。

 辺境伯というのであれば勿論武に秀でているだろう。

 その顔にだわん。などと間抜けな語尾で道化を装っていた者の顔は無い。


 その顔は、やはり武人の顔であった。


 「それは……」


 その顔を見て、博士が怪訝に顔を歪める。

 なるべくなら、言いたくない。


 こちらの人間としてはあまり思い出したく出来事。しかし。


 「博士」

 

 だがここで怖気づく訳にもいかない。

 ならば、知ってもらうのも1つの「交流」だろう。


 「分かったわよ。はぁ……」


 俺に促された事で博士もようやく決心がついたようだ。


 「怪獣が」


 「怪獣?」


 「そう、怪獣が現れたの」

 「怪獣とは、魔獣のようなものですか? だわん?」


 口調を戻した。こちらの事情を汲んでくれているらしい。

 やはり伯は賢い人だと思う。


 「魔獣。前に戦ったやつね。そうかもしれないわ」

 「どれほどの規模の魔獣が?」


 「星を覆う程」

 「ほ、星? だわんか?」


 「そう。だから全て終わって、今私達の周りに星はないわ」

 「ど、どういう事ですわんか?」


 「拠点にされると困るでしょ? だから無いの」

 「ともかく、宇宙から大量の怪獣が飛来してきたのよ」

 

 「どれほどの大きさの……。だわん?」

 「少なくともここで戦った奴の100倍以上の奴も居たわ」


 「100ばっ!! そんな……」

 「それで……。どうしたの、だわん……?」


 「ギリギリで勝って……。今がある」

 「元はどれだけの人間が居たのだわん……?」


 「80億よ」

 「それが400万に……。だわん?」


 「戦後すぐは30万しか居なかった。それから回復して今がある」

 「それだけの激戦だったと言う事ですかわん?」


 「そうね」

 「そう、そうよ……」


 「私達はなんとか生き残った。本当にギリギリだったけどね」

 「80億が……。400万……」


 場の空気が冷たい。並みいる貴族達の顔も蒼白になっている。

 まぁこんな事聞かされればそんな顔もするだろう。


 「古きから異世界の存在は確認されていましたわん」

 「異世界は我らの国よりずっと豊かで進んでいて、人々は夢のような生活を送っていた」

 「そう、伝わっていたのですわん」


 「この世界も今まで幾度も異世界の英雄に助けられてきましたわん」

 「しかしその我らの希望が……。そこまで追い詰められていたなんて……」


 「異世界の英雄? ふん、随分な存在が居たものね」

 

 「はい。我らの世界は異世界の英雄に幾度も救われてきたのですわん」

 「だからこそ英雄との交流を容易くするように、我らは世界規模で言語を統一したのですわん」


 うん? それってつまり……。


 「なにそれ、つまり私達とあんた等の話が通じるのは」

 「そう。異世界の英雄様としっかり通じ合う為に言語を合わせたのですわん」


 そうなのかっ!! なんかこう、妙な力が働いての物かと思ったのけど。

 彼らは普通に日本語を話していたっ!! そ、そうだったのか。

 でも文字の方は……。読めなかったけど。


 「それだけ、我らは異世界に対する憧憬は深かった。なのに」

 「何度も救って貰ったくせに、こちらからは何も出来なかった事……」


 「心より、謝罪致しますわん……」


 アデルバート伯が膝を曲げ、こうべを垂れる。この形、見知っている。

 

 それはまさに土下座の形であった。


 アデルバート伯に倣い、他の貴族も頭を下げだした。

 そうして場の者全てが頭を下げ、頭を上げているのは俺のキャラだけとなる。


 「なに、よ……」


 その様相に博士も驚いてるようだ。


 下げる頭のいくつかは顔を歪め、涙を浮かべている。

 その顔は絶望に満ち溢れ、まるで希望が潰えたかのように悲しい。

 他の者も同様だ。誰一人として希望に満ちたような顔などない。


 異世界の英雄。という存在はそれだけ彼らにとって……。


 「あなた方の」


 「あなた方の事情を」


 こちらの事情は話した。

 ならば次は。


 「聞かせて頂きませんか?」


 こちらの番だろう。


 アデルバート伯はゆっくりと口を開きだした。

 

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