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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
悲哀っ!! 正社員激闘編っ!!

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第66話 こんにちわロサガリカ公国の皆さん。俺は――。こ、皇帝陛下ですぅ。


 「え――。おほんおほん」

 「あ――。それじゃあ」


 「話し合いを始めましょうか」


 そんなこんなあり、俺達は「国際交流」を始める事となった。

 博士が俺の出自をばらしてしまった為、いつまにか俺は亡国間際で踏みとどまった瀕死の帝国。

 の皇子という事になり、国賓待遇を受ける事になってしまった。


 「では私から改めてご挨拶を。私はロサガリカ公国の辺境伯。アデルバート」

 「っと申す者ですわん」


 「はぁ」


 何とも素っ気ない返事。もう博士ったら。


 「ほら、博士。博士もご挨拶を」

 「ああ、はいはい。まったくもう」


 「ええぇっと。ああそうだ。私は三日月春美。陛下の」

 「陛下の家庭教師兼従者よ。今後は私が貴方達の応答に当たるわ」


 「家庭教師、なのでゴワスか?」

 「そうよ。博士号持ってる博士だもの。あんたが乗ったウォーカーを作ったのは私よ」」


 「ア、アレを……。そうだったのでゴワスか」

 「大型魔獣を一瞬で倒したアレを……。それは、確かに凄いですニャン」


 アニエスさん達が口を挟む。良いのかな? まぁ良いか他国の使者だし。


 「あの兵器を作った学者様。なるほどそういう事なのだわんか」

 「ふん、まぁね」


 「ウォーカーの武勇。聞き及んでいるのだわん。あの大型魔獣を一刀の元討ち果たしたと」

 「まぁね。それくらいの力はあるわ。それくらい出来ないと次世代兵器の名は名乗れないしね」


 ふふん。といった態度で博士が自慢する。

 実践で成果を上げた兵器の開発者である。と言う事で博士の発言力も多少は確保されるだろう。

 しかし向こうが貴族主義の威光を気にする人物なのであれば。恐らくもう一声何か……。


 「それで、春美様の爵位は? だわん?」

 「しゃく、なんだって?」


 ほら聞いて来た。どうやらアデルバート伯はそういうのを気にするタイプのようだ。

 俺が子供の頃もこういうの気にする人は居た。

 肩書というのは古い秩序を重視する社会の中ではかなり重要なのだ。

 いやはや。またこの部類を気にする世界へと飛び込むとは。


 あんまり気が進まないけど、そうなってしまったからには付き合わねばならないだろう。


 「しゃくい……。爵位ねぇ。う――んと……」

 「春美博士は正一位・左大臣家の娘。である為そちらの世界の基準で言えば公爵の地位に値します」


 「公爵っ!! そ、それは。へへぇ……」

 「なによ。変な肩書つけないでよ」


 「毒を食らわば皿までですよ博士。博士が言ったんですかね陛下がどうこうって」

 「ちっ。ああもう」


 聞かれたくない会話は通信機のスイッチをオフにして、俺達は「貴族」の会話を続けていく。

 

 「やはり皇帝陛下の家庭教師。そのような高位なお方とは。どうぞご無礼許して欲しいのだわん」

 「ああ、まぁ良いわよ。うん」


 恭しく挨拶され博士も面食らっているようだ。頑張れ左大臣の娘っ!! あはははっ!!

 

 「それで、話の続き」


 「では夏美公爵閣下」


 「ああ、うん? それで話をね」

 「ではこれより両国の親睦を祝う宴会を始めようと思いますっ!!」


 「うんうん。話し合いを……。はぁっ!?」

 

 「今宵はどうぞお楽しみください。少々遅い時間ではありますが……」

 「しかし両国の今後を祝う宴席っ!!」

 「精一杯のおもてなしをさせて頂きますっ!! どうぞ我がロサガリカ公国の宴」


 「お楽しみください。だわんっ!!」


 「は? 宴? いや、あの話し合いは? 今後の事とか……」

 

 「ありがとうアデルバート伯。貴方の心遣い嬉しく思う。今宵は楽しませてもらいましょう」

 「はっ!? いやちょっとっ!!」


 「ほら、駄目ですよ博士もしっかりお礼を言わないと」

 「お礼って……。話し合いをするんでしょっ!! なんで宴をするって事になってるのよっ!!」


 「貴種が集まっていきなり本題なんて出来る訳ないですよ」

 「まずは宴席などで親交を深めてから、それから本題を始めないと」


 「なによそれっ!! まどろっこしいわねっ!!」

 「博士が始めたんですよ。だから付き合ってください」


 「いや、そんなの無視して本題始めなさいよっ!! アッチは困ってんでしょっ!!」

 「困っていても大事にしたい体裁ってのがあるんです。はいスタートですよ博士」


 俺は通信機のスイッチをオンにしてアデルバート伯との会話を再開する。


 「伯。残念ながら我々は今ここに居ない。だから料理などは私の前に並べてくれ」

 「そうすればこちらの世界に転送される。疑問はあるだろうがそういうものだと思ってくれ」


 「分かりました陛下。ではこちらの者に用意させますわん」

 「よしなに」


 相手にこちらの事情を伝える。

 すると椅子に座らせられた俺の前に沢山の料理が並べられだした。

 目の前に置かれた事で「アイテム」として認識されてこちらに送る事が出来るようになった。


 そうして俺はテレビの中から料理を取り出して、会議室の机の前に並べた。


 「なにこれ……。これあそこの並べられてた物よね」

 「まぁ、そう、ですね」


 なにやらソースが乗った肉や海鮮などが並ぶ。見た感じかなり美味しそうだ。


 「え? これゲームよね? 中からなんで取り出せるの?」

 「さぁ、詳しい事はさっぱり。えっとそれで」


 「食べてみますか?」

 「う――――――――――――――ん」


 かなりの熟考を重ね、博士はどうするか考えているようだ。

 見た限りは普通の料理。さてさてお味は?


 「あっ!! こらっ!!」


 考える博士を他所に肉を一口食べてみる。うん、結構美味しいっ!!

 海鮮もひとつまみ。見た感じロブスターに近い甲殻類だ。これも美味しいな。

 エビが居るって事は、ロサガリカ公国は海に近いのだろうか。


 「うげっ。なによあんた。それ食べるの? なんかちょっと気持ち悪くない?」


 エビを食べる博士が気持ち悪そうな顔をして眺めている。

 ああ、そうか。


 「船の遺伝子パックにはエビありませんでしたからね。船の破損で紛失しちゃって」

 「あ、これこっちにも似たようなのあったの?」

 

 「はい、美味しいですよ。博士も食べてみてください」

 「ふぅん。こっちにもあったのかぁ……」


 現状地球上に居る生物は人類救済船ノア。そこにあった遺伝子情報から再生したものしかいない。

 しかしかつての船の損傷で紛失した情報も多く、エビなどの甲殻類も紛失生命の一種だ。


 つまり今の俺達の世界にエビは居ない。

 だから今目の前にあるエビ料理はかつて俺達が無くした味の1つという訳だ。


 「ほら、美味しいですよ博士」

 「なんか気持ち悪いけど……。食べ物なの?」


 「はい、美味しいです。おひとつどうぞ」

 「むぅ……」


 恐る恐る。といった動きで博士がエビ料理を口にする。

 ムシャムシャと怪訝な顔で咀嚼して、しかし途中、美味しかったのだろうか。


 悪くない。といった顔で顔を緩め咀嚼を再開した。

 

 「結構イケるわね、これ。プリプリしてて」

 「そうですね。美味しいです」


 「どうですか? 我らの料理、お口に会いましたでしょうか。だわん」


 画面の外からアデルバート伯が心配そうな顔で尋ねてくる。

 久しぶりにエビを食べた。勿論返答は。


 「美味しいじゃない。意外とやるわねあんた等」

 「おお、それはっ!! 大変嬉しく思いますわんっ!!」


 博士としてもかなりの好感触のようだ。ロサガリカ公国。結構豊かな国のようだ。


 「もっとないの? 他にも色々食べさせてよ」

 「はいそれはもうっ!! 我がロサガリカの実力、お見せしますわんっ!!」


 褒められた事に気を良くしたのか。俺のキャラの前に次々と料理が運ばれる。

 運ばれた料理を次々とアイテムボックスに入れ、色々と味見しだした。


 カレイ。タラ。スズキ。それによく似た魚などが出てきた。

 勿論どれもこちらの世界で既に失われた魚達だ。それがソースなどで味付けされている。


 昔食べた事ある魚が久しぶりに食べられて、なんだか楽しくなってきた。

 宴会の席。悪くないねっ!!


 「食べた事ない味ね――。これってどういう理屈なのかしら。ゲームの中の物が食べられるなんて」

 「なんでも良いですよ。どれも美味しいですよ」


 「しかし結構色々出てくるわね。もしかして私達が思うよりあいつ等余裕あるのかしら」

 「それは、どうなんでしょうね」


 ふとゲーム画面を覗くと広場で貴族であろう人々が。

 恐らくワインであろう。紫色の飲み物を片手に談笑をしている。


 その様子は実に華やかで余裕を感じるものだったが。

 だが、先ほどまで見る事が出来た外のキャンプの様子は……。隠されている。

 外の様子は陣幕のようなもので遮られて、望む事は出来ない。


 と言う事はやはり見られたくない。と言う事なのだろう。


 「外、隠されてるわね」


 博士もその様子に気付いたようだ。まぁ露骨に隠されているし、気にはなるだろう。


 「見せてって言う? せっかく色々買ってきたのに」

 「それは失礼に当たりますから止めましょう」


 「失礼、ね。そもそもこの空間は私達の物だった筈じゃない?」

 「なのになんでこいつ等が勝手に私物化してるのよ」


 「そういう事も含めて」


 「今はこうして楽しませた後に話すつもりなんだと思いますね」


 「ご機嫌を取って煙に巻こうって事?」

 「それもあると思いますけど」

 「けど?」


 「ただ単純に」


 「今は忘れて楽しみたい」


 「そういう考えもあるのかもしれませんね」


 「下々の者を餓えさせといて余裕がある事ね」

 「その余裕さえ出せなければ人間は終わりです」


 「彼らにはまだそういった余裕に手を出せる余地がある」

 「今は、それを祝福しませんか?」


 「祝福、ね」


 「京介」

 「はい、なんですか博士」


 「あんた、どさくさに紛れて酒も結構買ったわね」

 「提供してよろしいですか?」


 やはり円滑なコミュニケーションの為にもこういった嗜好品も必要。

 そう考えても酒もいくらか購入した。

 古い時代のようだし、こういった物には需要があると思ったから。


 「提供、良いわよ。貰いっぱなしも癪だし」

 「ああいう連中は酒でも飲ませとけば喜ぶでしょ」


 「ええ、そうかもですね」


 「でも、あいつ等が飲む分だけよ。兵士連中に配れるくらい与えたら」


 「何するか分からないしね」

 「ええ、そうですね」


 宴は続く。まだまだ本題の話は出来ないけど。


 こういうのも、悪くはないよなぁ。

 

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