第64話 月が~出た出た~♪ 支援物資購入作戦だっ!!
「ほら、博士。コンビニに着きましたよ~」
「そんな事分かってるわよっ!! もう何分歩いてるのよっ!!」
「30分くらいですか? でもそんな事言うくらいなら近場に誘致してくださいよ」
「ウチ身近に買い物できる場所ないじゃないですか。こんなだから職員さん逃げるんですよぅ」
「うるさいうるさいっ!! 下手に買い物できる場所が出来たら休憩するでしょっ!! 時間の無駄よっ!!」
「適度な休息は良い仕事する上で重要ですよ?」
「知らないっ!! ともかく今はそんな事言ってる暇ないでしょっ!!」
「それはそうですけど、職場環境の整備は重要ですよ」
博士を背に乗せて30分。近くのコンビニに辿り着いた。
やはり職場に売店が無いのはちょっとキツイ。今後の為にも環境整備、やっぱり必要だよねぇ。
っとまぁ今後の事を色々考えつつコンビニへ。
「あ、こらっ!! もっと注意して入りなさいこの馬鹿っ!!」
「あら、失礼しました博士」
そういえば背中に博士おぶってたっけ。降りる気配はない。
ふふふ博士。休憩がどうのこうの言うなら俺から離れて自分の足で歩いたらどうですか?
なーんて事は言わないけどね。
さてさて、それじゃあ救援物資の買い出しをしましょうかっ!!
ここからここまで全部っ!! なんて事は流石に公共良俗に反するし節度を持った買い物を。
「ここからここまで全部買い取るわよっ!! 必要そうだしねっ!!」
あらあら。
「駄目ですよ博士。そんな事したら次来るお客さんが困っちゃいますよ」
「あぁん? 大丈夫でしょ。どうせ客なんてそんな来ないわよ」
「今の世の中コンビニに採算なんてある訳ないでしょ。こういうのは公共事業なの」
「各自商店だってそう。店を維持できるだけの購買力なんてどこも無いのよ」
「でもそれだと困るから政府から補助金貰って維持してるの。このコンビニだってその部類よ」
「だったらウチの前にもコンビニ作ってくださいよ。買い物が不便で仕方ないです」
「ちっ。うるさいわねぇ。ともかく買い物するわよ」
「え――っとまず必要なものは。なにかしらねー」
「やっぱり食料じゃないですか? パンとかいっぱい買いましょうよ」
「それは後で出来るでしょっ!! まず必要な物。それは薬よっ!!」
「薬。なるほどそうかもしれませんね」
薬。そうか。確かに薬は必要だよね。でも。
「じゃあまずはここからここまでの再生剤。全部買い占めましょうねっ!!」
薬……。薬と言ってもウチの薬ってまぁ、再生剤よね。
再生剤。かつて世界が大変だった時に作られた究極の「薬」
まぁ有り体に言えばナノマシンによって人体を再構成する万能薬と言ったところか。
過去負傷した兵士をその場で復帰させる為に用いられた戦薬。
この再生剤の投入によって人間という生命は戦車などの機械製品より軍事面に置いて有利に立った。
なぜならその場で復帰できるからだ。傷ついても、すぐまた使える。
その再生剤による影響を強め、筋力などの増強措置を行ったのが超兵だ。
人間を超える圧倒的な力で敵を倒す。超兵となる為にはある程度薬剤の適合も必要だが。
その適合が出来れば非常に大きな力を発揮する事が出来る。
しかしその「かつて」が無くなった後は民生品として出回り、コンビニでも買えるようになっている。
勿論民生向けとして効能は最適化されてはいるが、もげた手足を容易に再生させる力を持つ。
軍用は頭部であっても復活させる。
博士はそれを使って元テストパイロット達の頭を破裂させていたらしい。
そんなだから1人になっちゃうのよ博士。もう。
「ともかくありったけの再生剤を買いましょう。これ買っとけば間違いはないしね」
まぁ、それは正解であるだろうが……。
本当にこれを持ちだして大丈夫だろうか?
異世界にこれを持ち込んた結果、権力者が薬を使って貧しい兵士を無限に戦わせる……。
とかならない?
「大丈夫よ」
「はい?」
「馬鹿となんとかは使いようって言うでしょ? 正しく使えば薬は薬なんだから」
「だから大丈夫。どうせ生産する工業力なんてなさそうだしね」
どうやら顔に出ていたらしい。博士に考えを見透かされたようだ。
「そうですかね。こんな物を作れる脅威の帝国とは思われないですか?」
「ギリギリで生き残った脅威の帝国よ。間違いではないわ」
それはそうかもだけどさ。
「まぁ良いや。他は何を買いましょうか。やっぱり食べ物ですよね」
「なに言ってるのよっ!! これ以外に重要なのは」
重要なのは?
「生理用品よっ!! やっぱりこういうのが一番入用でしょっ!!」
生理用品? そ、そうなのか?
「生理用品ですか? まぁ良いですけどそんな重要なんです?」
「なに言ってんのよ月経は災害時でも止まらないのよっ!! これこそ必要なものよっ!!」
そういうものなのか。しかし流石博士、女性特有の目線ってやつ?
やっぱり賢い子だけあって色々考えられるんだなぁ。
うんうん、女性特有の目線。か。よ――し。なら俺も男性特有の目線でいる物を。
う――んとう――んと。
お、お酒とか?
「お、お酒とかも買っていきますか?」
「酒っ!? 何言ってるのよこんな時に酒なんて飲ませたら女子のアレがピンチでしょっ!!」
「もうちょっと考えて物を言いなさいっ!!」
お、怒られてしまった……。確かに避難中で落ち込んでる時にお酒なんて飲んだら……。
う――ん。こういう時男目線で考えるのは駄目かな。ここは博士に任せよう。
あ。
「あ、博士プリンありますよプリン。帰ったら一緒に食べましょうね」
「なに悠長な事言ってるのよっ!! プリンより人命が大事でしょっ!!」
あ、あら……。ご、ごもっともで。しかしゲームだなんて言いながら結構考えてくれてるのか。
やっぱりなんだかんだ。良い子だよなぁ博士は。
「じゃあ、色々買っていきましょうか」
「ま、まぁ帰り際食べていく物くらい買ってあげても良いけど……」
あら。
「じゃあからあげ棒でも買っていきますか? 夜空を見ながら食べると美味しいですよ?」
「ふんっ!! しかたないわねっ!!」
それから俺達はコンビニで物資を買い漁り、帰路に着いた。
買った物資はどうしたか。と言えば。
「まさかと思うけど入るのね。思った以上に便利かもねこのゲーム」
「スクリーンを持ち込むだけでどんな物資もノーリスクで持ち運べるって革命だわね」
そう。持ち込んだ小型の液晶テレビをゲーム画面に見立て、その中に買ってきた物資全てを投入した。
薬に食料。生理用品に飲料。詰め込められるだけアイテム欄に詰め込める。
4、50万は使っただろうか。対応した店員もビックリしていた。
小さな液晶テレビに様々な物資を投下する俺達を見て。
「うわ――。これ結構楽しいねっ!! 流石研究区域、これが最新技術かー」
一緒にやりたいという事で共に物資をテレビにぶち込む。
最後にはコンビニのイートインコーナーで一緒にプリンとからあげ棒を食べた。
「じゃあね――。楽しかったよ京子ちゃん。また来てね。博士ちゃんも――っ!!」
「は――いっ!! ではまたいずれ――」
そうして店員さんと別れ、俺達は夜道を共にする。
「馬鹿っ!! 変にああいう輩と知り合いにならないのっ!!」
「16歳だって言ってましたね。バイトさんなんだって。頑張り屋さんですねぇ」
「だからいちいち世間話してんじゃないわよっ!! それといつまで女装してんのよっ!!」
「いやぁ、メイク落とす機会が無くて」
「あんたのそれ似合いすぎてヤバイのよっ!! 明日にはしっかり落としときなさいよっ!!」
「なら給湯室。それかシャワー室でも作ってくださいよ。施設に休憩所無いの辛いです」
「うるさいっ!! ……むぅ」
「……ちっ。分かったわよ、考えてあげるわ」
お、やったぁっ!! 言ってみるもんだなぁ。
「あ、博士。月が綺麗ですよ」
「月、ね」
「はい。でっかい月ですね~」
「デカすぎんのよ。地球よりデカいじゃない。アレは月でもない」
「でも」
「そうね、きれいな」
「綺麗な、月だわ」
「ふふふふふふ……」
「ざまあみろ」
あら。
駄目ですよ博士。そんな汚い言葉使っちゃ。
「月を見ながら散歩ってのも良いですねぇ。警官に呼び止められても博士が身分証明してくれますし」
「夜間警備が厳重すぎるのよ。あの頃より治安は良いんだからもう止めれば良いのに」
「まぁそうなんですけどね」
「でも治安維持の面もありますし、このままでも良いと思いますけどね」
「あんたはなんでも肯定しすぎなのよ。若いんだからもっと社会に疑問を持ちなさい」
「それが、私達若い人間がやられなけりゃいけない「義務」なの」
「義務を果たしなさい。変化を恐れてたら何も成す事が出来ないわよ」
若い人の義務、か。そんな事も考えた事もなかったなぁ。
そっかぁ。
「そうですね……。義務、必要かもですね。」
「うん。でしょう?」
「そう言う訳で博士頑張ってくださいね」
「あんたも頑張るのよっ!! このノンポリ野郎っ!!」
あはは。
しかし、月が綺麗だなぁ。
ざまあみろ。




