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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
悲哀っ!! 正社員激闘編っ!!

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第63話 なんか陛下とか言われ出した……。そんなん時代遅れですよっ!! なんて言えないしなぁ。


 「ははぁ――。陛下、どうぞご無礼お許しください」

 「京介さまが陛下だったなんて。皇族様……。どうりで発言に気品を感じた訳だニャン」

 

 「ああ、驚きでゴワスな。貴族どころか皇帝の一族とは。流石英雄様でゴザルな」

 

 ああ。なんかみんな変に盛り上がってる……。


 皇族だとか官位がどうだとか。ずっと前に立ち消えになった話なのに。

 今更そんな物ありがたがってもしょうがないだろうに。


 いや、そんな事この場では言えないか。向こうはガチファンタジーの世界だしなぁ。

 ともかく。


 ともかく話を進めたいんだけど……。


 「ほ、ほらしっかり謁見の場を整えるんだわんっ!!」

 「他国の皇族を袖にしたと知られれば辺境伯の家が泣くだわんっ!!」

 

 ああ、なんかアデルバート伯が俺の周りに絨毯敷いたり。

 王様が座ってそうな金色の椅子持ち出してそこに俺を座らせようとしている。

 こっちとしては色々と事情というか……。


 現在の状況を知りたかったんだけど……。俺は通信機のスイッチを一旦切り、博士に抗議を入れる。


 「もうっ!! 博士ったらっ!! 博士が変な事言うからなんか変な感じになったじゃないですかっ!!」

 「あはははは、別に良いじゃない。ゲームなんだしっ!!」


 俺の抗議をどこ吹く風で一蹴する博士。まぁ博士はあちらをゲームだと思ってるから。

 いっそのこと本当の事言うか? しかし……。


 これは本当に「本当」の事なのだろうか。


 正直、それは自分にも疑問なのだ。何をどう考えても、現状目の前にあるのはゲーム画面でしかなく。

 いくらこちらとの意思疎通が出来るとしても。

 確かに「よく出来たゲーム」だと言われたら俺は何も言えなくなる。


 ゲームの中に物を送れたり、あちらから物を送ってもらったりなど出来るが。

 しかし現実に物質転送の技術がある以上。

 それを使った「フェイク」などと言われたらやはりどうしようもない。


 これがゲームでないという確証は何1つない。

 俺が画面の中の彼女達の存在を「ゲームではない」と思っているから交流が成立しているわけで。

 それを廃し彼らとの交流を諦め、アレは「ただのゲーム」だったと無視しても。


 俺には何1つメリットも。デメリットも無いのだ……。


 だって全部画面の中なのだから。


 画面の中の。


 すべて。


 活劇?


 う――ん。


 まぁ細かい事は良いやっ!! 考えたってしょうがないっ!!


 ともかく今は話を進めないと。


 やはり今一番気になる事と言えば……。

 俺は通信機のスイッチを入れ、話を戻すべくアニエスさん達に話しかけた。


 「あの――」


 「は、はい皇帝陛下っ!! だわんっ!!」


 ああ、なんかいつのまにか皇帝陛下に格上げしてる……。

 しかし応答したのは初登場のアデルバート氏、すっかり小物感出しちゃって……。

 初めはあんなに威厳たっぷりに状況を説明するぜっ!! って感じだったのに。


 権威ってまぁ。本当に人を狂わせるなぁ。

 

 「あはは、ほんのちょっと権威を振りかざしたらこの有様」

 「封建社会に生きるような奴等は本当、単純ねぇ」


 そりゃあそうなんだけどね。でも階級という分かりやすい上下がある事で纏まりやすい。

 そういう事もあるのだろうし一概に良い悪いは言えないよね。


 しかし、だ。今はそんな事よりも情報を得たい。

 アデルバート氏がしたい事は分かるが、今は体裁を整えるより今何がどうなっているか。

 

 その実態を知りたいと思うのだが……。


 「まさか英雄が亡国の皇帝とは……。妙に従者が礼儀にうるさいと思った。これは対応を間違えれば本当に戦争になるぞ」

 「魔族との戦いもあるのに異世界の英雄の国との戦端など……。そんなものが開かれれば先祖に申し訳ない。だわんっ!!」


 この調子だ。

 頼りのアニエスさんとコリーヌちゃんも俺を歓迎する為の祭典準備を進めている。


 俺の出自が知られた瞬間この騒ぎ。俺にとっては血筋の話など済んだ話だ。

 今更こんな物がなんだと言うのだろうか。こんなものを使っても今更状況が変わる訳ではない。


 でも。


 古きものに縋ってでも自らのアイデンティティを確立したい。


 そんな感情は、なんとなく分かる。


 分かるからこそ……。


 いや、止めておくか。う――んしかしこの先どうしようかなぁ。


 「ねぇ……」


 「はい、なんですか博士」


 博士が俺に話しかける。先ほどと比べ、少し声のトーンが小さいように思える。


 「遠目に見えるNPC達のテント。なんかさ」

 「はい?」


 「子供が、ガリガリじゃなかった?」

 「え」


 博士の言葉を聞いて、俺も画面の奥を確認する。

 エンデールの広場。その奥の方には広い世界というか。

 エンデールという建物の外。その外には一面の「風景」が広がっていた。

 筈だった。

 しかし今その風景の先には無数のみすぼらしいテントが広がっており、その光景はまるで。


 「難民キャンプ、みたいですね」


 端切れを繋ぎ合わせたようキャンプの中にボロボロの衣服を来た一団がひしめき合っている。

 一様にその姿は垢や砂ぼこりで黒く汚れ、疲れ切っているように思える。


 その姿はまるで。


 「何か」から逃げてきたような。


 「あの頃もこうだったのかしら……」


 ぼそりと、博士が呟く。あの頃は……。

 そうだな。こんな感じだったかもしれない。


 「なんでこいつ等こんな所に居るのかしら」


 それは、そうだよね。


 「それが聞きたかったのに、博士が変な事言うから」


 ちょっと責めてみる。なんて言ってくるかな。


 「そうね。ちょっと軽率だったかしら」


 あら。

 

 意外としおらしい。そりゃあこんな光景見せられたらね。


 「ゲームとはいえ、難民なんて見ていて楽しいものじゃないわ」

 「そうですね」


 そうだ。難民なんてもう……。ああ、でも難民になれる事だって。

 難民である事はある意味幸せだった。「かつて」はそれになる事も出来なかったのだから。


 「京介」

 「はい博士」


 博士が俺の名を言う。いつかこんな光景が普通になるだろう。

 名前を呼ばれるのは好きじゃない。


 でも今は好きだ嫌いだなんて言ってる時じゃない事は分かってる。

 博士は、どんな事を決断するのだろうか。


 「コンビニは、24時間営業よね?」

 「はい、そうですよ博士」


 だから……。なんですか? 博士。


 「今すぐコンビニに言って食えそうな物片っ端から買ってきなさい」


 あら。


 「良いんですか? 博士」

 

 「良いのよ。財閥からの支援金がある」

 「その額に比べたらコンビニの商品買い占めるくらいタダみたいなものよ」


 あら。そんなに貰っているのか。まぁあんなに沢山の機械獣を揃えられるくらいだ。

 ならばそれだけ博士は貰っているのだろう。


 「でも良いんですか? そんな関係ない散財して」

 「あんたも言ったでしょう? 円滑にシミュレーションを行う為に」


 「こいつ等に恩を売っておくのは悪くない」


 「貴方も」


 「そう思うでしょ?」


 ああ。


 「そうですね、博士っ!! うん良い考えだっ!!」


 「行ってらっしゃい。私はここで待っててあげるから」

 「一緒に行きましょう。博士」


 「ん?」


 「ん」


 「うん……」

 「行きましょうか。下手に全部買われたら困るし」


 「私が、選別してあげるわっ!!」


 うん。


 じゃあ。


 「行きましょう。博士」


 支援物資。


 いっぱい送らないとねっ!!


 世の中助け合い、だよねっ!! いよっしゃーーーっ!!

 

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