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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
悲哀っ!! 正社員激闘編っ!!

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第59話 ワンマンライブは楽しいなぁ。でも若人達、なぜそんな無表情なのですかい?

 

 気づけばもうだいぶ空が薄暗い。そんな中俺は通りで曲を弾いていた。

 周囲の通りに溢れんばかりの人が。いつのまにか外の店の前には椅子が置かれ。

 大人達がそこでビールを飲んだり食事を楽しんだりしていた。

 

 楽器を弾いていた子供達は最前列でポカンとした顔で俺が奏でる音楽に聞き入っている。

 聞いてくれるのは嬉しいがそのキョトン顔はなんとかならなかったのか? っと思う。

 同じアンノウンズのメンバーもその列に加わり、一緒に曲を聞いていた。

 やはり、まぁポカン顔。

 遠巻きに食事を楽しみながら聞く大人達と、真正面で真顔になりながら聞く子供達。


 そういうの、社会の縮図みたいでなんかヤダ。

 とは言いつつも、先ほどまでの雑音の集合体だった通りは俺の歌によって統一され。

 ちょっとした憩いの空間と化してその場にある。

 疲れた子などは地面の下に上着を敷いて聞いていたりしていた。やはりその顔に生気は無い。


 聞いてくれているんだから需要はあるんだろうが、しかしどうして皆一様に虚無顔なのだろうか。

 子供達の視線が痛い。もうかれこれ4、5時間はこの状況を続けている。

 

 本当はもっと早い段階で撤収するつもりだったが。

 しかしなんとなくそのタイミングを逃し、俺は歌い続ける。


 幸いにもレパートリーはある。たまに深夜家でこっそりギター弾いてたりしてたし……。

 今は無い過去の名曲なんかを自分で再現したり~してたから。まぁ数は弾ける。

 今までの蓄積があるだけに続けられる。しかし、それが結果としてこの状況を生み出した。

 もし俺の引き出しの中身がもう空っぽなら止める事も出来るだろうが。

 しかし幸いというか不幸というか。


 まぁ、まだ歌えるから……。

 しかし、しかしだ。


 流石にこれ以上はもうっ!! 若者の視線に耐え切れないっ!!

 なんで皆、虚無顔なのよもうっ!! よし、もう一曲終わった。

 次は。次はぁ……。


 次で最後にしよう。こう。アレだ。最後はしっかりしたメタルをっ!!

 こう、激しい曲調で攻めて若者達の心をねっ!!


 ああ、一曲終わった後の大人達の拍手が痛い。

 前面の子供達は仁王立ちしてキョトンと見てるのに……。

 なんでっ!? なんで一番盛り上がらないと行けない若者が黙ってるのっ!?


 よーしっ!! ギターガンガン鳴らしてメタルやってやるぞーっ!!

 曲は……。昔のゲームのテーマソングっ!! ガンガンに鳴らすメタルだぞーっ!!


 これならきっと若者の心も……。うぉ――響け俺のメタル魂っ!!

 これ好きなんだー。デスヴォイス使ってガンガンに音鳴らして。


 過去何度もリメイクされたRPGの名作の曲で。主人公が突如異世界に召喚されて。

 最後は実の父親が変化した巨大な敵を倒すっていうっ!! そんな名作っ!! うぉおお懐かしいっ!!


 そんな名作ゲームのOPに流れる激しいメタルソング。

 ヘヴィメタルに足突っ込んでるくらいの曲だけど、俺は好きだった。


 それのギターアレンジ。妹に聞かせたら凄いカッコいいって評判良かった奴だっ!!

 ゲームも面白かったなぁ。異世界に召喚された主人公が仲間と共に冒険して……。

 異世界かぁ。うん、異世界……?

 異世界……。い、せかい。


 あ。

 

 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!


 異世界っ!! そう異世界だっ!! 

 ああああああ、忘れてたっ!! アニエスさん達の事っ!!

 なんかすっかり接待が終わってまったりしてたっ!! あちゃ――――。

 や、やっぱりアレだよね。異世界転生ってのは本当に異世界に行くから現実感が出るってもんで。


 そのぉ。なんというかテレビ越しの異世界ってのはぁ……。

 いや、それは言い訳か。たはは――。どうしようか。


 まぁ、ともかく今は。

 

 ライブ、楽しもうか。



 ◇ ◇ ◇


 

 

 よし、これでまた一曲歌い終わったっ!!

 大観衆の中。あら、お店前の椅子増えてる。


 あらーー。なんかちょっとしたイベント化しちゃった?

 あら。あらら……。


 こうなると……。ちょっと終わりですって言い難いというか……。

 

 「はいはい。じゃあ学生さんはもう帰る時間よ~ん♪」


 俺の表情を読み取ったのか。オカマの重治さんが手を叩いて場の空気を替える。

 重治さんの言葉を聞いて俺の周りに集まっていた若者は一斉にハッとした顔をして我に返る。

 そして、一斉に俺の顔を見るのだ。


 その顔は先程の虚無顔ではない。

 その顔は、何か得体のしれない物を見るような……。そんな目をしていて。

 えっと。これはどう判断すれば良いのかな?


 「京子ちゃん」


 若者達の間に割って入って重治さんが俺の前に現れた。

 そうして俺の手を掴んで。


「素晴らしい演奏だったわ。ありがとうねん♪」


 笑顔で、そう言ってくれた。へへへ、いやはや。どうもどうも。

 その言葉が皮切りになったのだろうか、周囲の子供達が。


 パチパチパチ。っと一斉に拍手で喝采してくれた。

 皆しっかり笑顔になってくれたっ!! いやぁ。なんか能面みたいな表情で怖かったっ!!

 え、あ。ライブ良かった? いやぁ。あはは。

 でも凄く怖かったよっ!! なんであんな無表情だったのっ!? まったくもう。

 ともかく、え――っと。ライブ、良かった? ふふふ。まぁ俺も楽しかったって言うか。

 

 「ズルいっ!!」


 なんとなく肯定の雰囲気に包まれた場に、1人の少女が声を上げる。


 見れば、彼女は緑髪のぉ。えっとぉ。

 名前は誰だったっけな。


 「あらん。涼子ちゃん、どうしたの?」

 

 ああ、涼子ちゃん涼子ちゃんっ!! そうだった涼子ちゃんだ。

 えっとぉ涼子ちゃん、どうしたの?


 「ズルい……。ズルいよ……」


 ズルいって。何が?


 「ズルい……」

 「そんな」


 「そんなに、出来るなんて……。私達は、今までそんな事出来なくて……」

 「私は、私達は……」


 あら。そっか……。そうだねぇ。


 「私達はっ!!」


 「楽譜」

 「がく、なに……?」


 「楽譜を読んで、音の鳴らし方を覚えて、歌もしっかり練習すれば」


 「貴方も同じ事が出来るようになりますわ」

 「な、なに……。そんな事言ってるんじゃなくてっ!!」


 「出来るというのはつまりこういう事です」

 「なに……」


 「私だって最初から上手かった訳ではありません。それなりに、練習しましたわ」

 「それは……。だから私達はそんな時間がっ!!」


 「時間ならこれからいくらでもあるではありませんか」

 「え……」


 「「これから」がありますわ。私も貴方も」

 「練習する時間が。上手くなるための時間が出来ました」


 「確かに貴方は今は粗削りかもしれません。しかし」


 「そうして己の粗を削り、自らを磨いていけば」


 「そうすれば、いずれ貴方達の音楽が仕上がっていくでしょう」


 「わたしたち、の……?」

 「わたくしが鳴らしたのは全て古い音楽。誰かが作って、そして伝えてきた。そんな古いものです」


 「わたくしに作曲の才はありません。みな全て他人の曲」

 「それを聞く、弾く事で私は過去を思ってきたのです」


 「……………………」

 

 「わたくしは常に過去を見ている。しかしあなた方には自らの力で未来を作り出す力がある」

 

 えっとぉ。

 なんか、こう勢いで良い事を言おうとしてドツボに嵌ってる気がする。

 京子はこういう時しっかり言うの得意なんだよなぁ。俺は……。

 う――ん。ともかく。ともかくだ。


 「未来を創る上で基礎は大事です。音楽の教本を読みましょう。どのように歌を進行していくか」

 「それを組む事も大事です。何事も全ては基礎。もし私のようにしっかりと組んだ音楽を創りたいというのであれば」


 「あれば……?」


 「基礎を学ぶ事です。そうすれば」

 「そんな事……」


 「そんな事教えてくれる人、何処にも居ないよ……」


 あら。


 「船に乗ってた人達、偉いエリートばっかりだったし……。

 「全部終わって商店とか作った人はいっぱい居る」

 「楽器屋さんだってある。そこに行けばギターだってドラムだって……。作ってくれる人は居る」


 「でも」


 「でも誰も、ギターとか。ベースとかドラムとか……。音の鳴らし方知ってる人誰も居ないもん……」

 「楽譜とか……。バイオリンとかピアノのやつはあるけど……」


 「誰もドラムの鳴らし方もギターの扱い方知らないし……」


 「そ、そうなんですの?」


 そういえばここ20年のゲームの音楽ってクラシック系が多かったなぁ。

 あとは打ち込みのやつとか? ライブ系音楽のゲームBGMって……。無かったような。


 「だから、私達が……。復興しようってっ!!」

 「なのに、貴方が……」


 あら。それは、そのぉう……。


 「私達だって……。何か作る側になりたかったっ!!」

 「だから、失伝したライブ文化を私達の手でってっ!!」


 「だから、だから……」


 そ、そんな事情があったのかっ!! あら――。ライブ文化失伝しちゃった?

 そういえばライブハウスがどうとかなんて聞いた事ないもんなー。

 テレビで出る芸能人も……。うわぁっ!! そういえばピアノとかバイオリンとかの曲ばっかりだっ!!

 え、もしかしてギターとかの扱い方も失念してるのっ!? ショックーっ!!

 嫌な事聞いちゃったなぁ。生き残った30万人にギター奏者は居なかった?


 ああ……。アメリカとか他の国の船なら居た可能性あるけど……。

 全部撃墜されちゃったしなぁ。

 

 ライブ文化……。消えちゃってたのか……。あらら。


 「だから……。だから」

 

 「だからズルいってっ!!」「それなら……」


 「そ、それならわたくしがお教えしましょうか?」


 「え……」


 い、言っちゃった……。俺が人に物を教えるなんて……。

 お、俺が教える事が出来る楽器なんて……。


 「ギター。お、教えてくれるの?」

 「ドラムもベースもキーボードもお琴も出来ますわ……」


 「お琴って?」

 「古い日本の楽器よん♪ 流石お嬢様、そんな事も出来るのねん♪」


 「ドラムとベースも出来るのぉ?」

 「ええ、まぁ多少は……」


 自分で鳴らした後に録音して聞いたりしてたから……。まぁ。


 「楽譜も読めるの?」

 「ええ、まぁ知っていますけども……」


 「それってつまり……」


 「貴方はライブ文化に必要な全ての文化を保有してるって事?」


 えっと。そう改めて言われると……。

 でも。


 「はい。全て保有しています。音の合わせ方も歌い方も知っていますわ」


 ヤバい。普通に全部知ってる。ええ……。もしかして本当に誰も伝える人居なかったの?

 まぁ30万の内だから……。ああ、思ったより忘れてる事ってあるんだなぁ。

 ええ。俺が最後の伝承者? ギター弾ける人今まで誰も居なかったの? ショック――。


 「全部知ってる……。ライブの作り方を……」


 「お、お願い京子ちゃんっ!!」


 「私達にライブのやり方を教えてちょうだいっ!!」


 あ。


 ああ――。


 そういう流れになっちゃう?


 えっと。俺は本当は36歳のおっさんな訳でねぇ。

 いやぁ。今更若い子にそんな偉そうな指導なんて……。


 ねぇ?


 「お願いっ!! 私達も貴方みたいに「音楽」をしたいのっ!!」

 「貴方の歌を聞いて目覚めたわっ!! ただ鳴らすだけが音楽じゃないっ!!」


 「しっかり組み立てていく事こそが本当の音楽なのよっ!!」

 「でも今までそれが出来なかったから私達はただ鳴らす事が音楽だと思い込むしかなかったっ!!」


 「でも、貴方のようなしっかり「音楽」が出来る人に教わる事が出来たら……」

 「私達は忘れられた文化を取り戻せるっ!! だからお願いっ!!」


 「私達に、ライブのやり方を教えてくださいっ!!」


 ああ。

 こりゃあ。もう……。


 「分かりましたわ……」

 「わたくしの修行は大変厳しいですが……」


 「皆さん、付いていく勇気はありましてっ!?」


 「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉおお――――っ!!」」


 うわうるさっ!! あれ? 他の子達も喜んで……。え、これってアンノウンズだけって話じゃないの?

 あ。あ。他の子達も教えろって事?


 え、そんな流れ? あ、あ……。

 えっと。


 教える日は。

 週末くらいで、お願いします……。



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