第57話 若者の会話ってこんな感じだよねー。えっとバンドの話は?
「え……。バンドに興味あるって。えっと、マジ?」
「うわ。髪黒いよナチュラルの男子だ」
「ちょっとー。良いって言ってきたよ。どうすんのよ涼子」
突如バンドに誘われ即答してしまった。
そして当の3人組もまさか了承されると思わなかったのだろう。
かなり困惑している様子だった。
「えっと。なに? バンドやりたいの?」
君が誘ってきたんだろう? ふふふ。
仲間の子達から涼子と呼ばれていた緑髪の少女が怪訝な顔をして問うてくる。
断られると思ったのだろう。しかし了承されてしまい、なんだかあたふたしている。
「バンドやりたいねっ!! 青春って感じがするしっ!!」
「まぁ、確かに私達も青春感から始めちゃった訳だけど……」
「っていうかよく見たらこの子かっこいいね……。うぉぅイケメンだ」
「ほんとだっ!! ナチュラルイケメンだっ!!」
「もしかしてこれってナンパ? ねぇどうしよどうしよっ!!」
「お茶とか飲んじゃう? スタパ行こスタパっ!!」
涼子と呼ばれた子以外はちょっと軽薄な印象。
もう、バンドしてるんだからもっとバンドの話題をねっ!!
「赤青黙るっ!! まったくもう」
「赤青? ああ、髪の色か。って事は君は緑?」
「まぁニックネームみたいなものよ。た、たまにそう呼ぶの」
「じゃあ俺は黒だねぇ。あはは。髪色で判断出来るなんて楽しいねぇ」
「だからその呼び方やめようって言ったじゃん。それ人前でやると同じ髪の人が見て来るんだから」
「うるさいわねぇ。そっちの方がバンドらしいでしょ? 他の人が見て、あんた達も見れば良いのよ」
「赤青緑ってなんか信号みたいでやだぁ」
「信号は赤黄青でしょっ!! 全然違うのっ!!」
やはり仲間内という事でメンバーの仲は良さそうだ。
誘われたからノッてみたが、よく見れば全員女の子。ちょっと人選間違えたかな?
なんて思いつつ、まぁ色々聞いてみる事にした。
「ところでどうしてみんな戦闘スーツを?」
「うん? ああ、これはぁ。まぁなんというか、目立つかなって」
「着ていく服分からなくて着てきただけな感じっ!!」
「みんな意外としっかり服着こんできて浮いてるよね――」
なるほど。つまり彼女達は。
「元超兵なの? 君達は」
「超兵。そんなエリートじゃないかな。私達は兵士。沢山居る兵士の1人よ」
「超兵処理された子はバトルスーツなんて着ないよ。素で強いもん」
「私達は超兵審査に落ちた兵士よ。超兵は地方の基地とかに配置されてるエリートよ」
「私達は兵士だから沢山居て、集団で首都を守ってるのよっ!!」
「でも分類として超兵には近いかな。準超兵って感じよ。最近は軍縮で首になったけど」
「そうだよー。いきなりお払い箱。学校通って普通にしろってさ」
「ほんと、もうびっくりっ!! でも戦争なんて起きないし、仕方ないかなーって皆が」
「そうなんだ――」
赤青緑。それぞれの髪色の子が交互に話しかけてくる。
つまり彼女達は超兵審査に落ちた一般兵で、軍縮でお役御免になった後。
青春を求めてバンドを始めた。そういう事らしい。
「学校教育みたいなのも始まって、なんか色々算数とか習わされてる感じ」
「足し算とかやらされるよ――。そんなのパパから習ってたし、ちょっとレベル低すぎよね」
「そこは、親が居なかった子も居る訳だししょうがないわよ。でも一律同じ教育ってのもね」
「そうそう。試験とか出して差を出して欲しいよね。昔はそうしてたじゃないっ!!」
「教師不足って事なんじゃない? 基本生き残った人達って技術者気質だし」
「まったく選別するならもっと教師とか芸術家とか残してくれたら良いのに」
「ラーメン屋の井上さんは父親の店を継いで、みたいだし誰か教師の子が教師してくれないかな」
「教師の子だから教師にはならないでしょ。ああいうのは試験が居るのよ」
「井上さんは元なんだっけ?」
「遺伝子工学の博士でしょ確か」
「そっか――。右も左も博士か大臣。一般人が居ないよー。一般人が」
「ゲーム産業は結構早く復興したのに、他はさっぱりよねー」
「音楽っ!! もっと音楽を復興すべきだったよねっ!!」
「クラシック音楽とかは割と復活してるじゃん」
「お堅い人は「乗ってた」からねー。バンドマンは無理だったんでしょ」
「バンドマン差別だっ!! バンドマンも乗せろ――っ!!」
「「わははははははっ!!」」
あらあら。3人の空間になってしまった。えっと。
「それで、バンドは?」
「うん?」
「おう?」
「はい?」
「バンド、入れてくれる?」
「…………」
「…………」
「…………」
「えっと」
顔を見合わせながらこそこそと話し始める。内容は聞こえる。
「どうしよっか」
「顔が良すぎるよぉ。緊張するぅ」
「やっぱりナンパ? ナンパされてる?」
「軽薄な男子だよぉ。遊ばれてポイは嫌ぁ」
「いやいや、普通にバンドやりたいのかもしれないわよっ!!」
「顔が良すぎる……。アレはヤリチンだよヤリチン」
「そう? 優しそうだし穏やかそうだよぉ?」
「それが狙いなのよ。私達の体が目当てなんだわ」
「う――ん。ガールズバンドの中に男とか……。揉めそうではあるわ」
「じゃあどうする? お断りする?」
「よし、ここは……」
「貴方っ!!」
お、こそこそモード終わり? まぁ全部丸聞こえだったけども。
「貴方、ほらっ!!」
ほら。っと言いながらギターを渡された。これは、つまり。
「楽器、弾いてみなさいっ!!」
「腕前が良ければ採用してあげるわ。出来が悪ければぁ」
「ここはご縁が無かったと言う事で」
「女の子になって出直してねぇ。ごめんねぇ」
「こ。こらまだ追放処分とは決まってないわよっ!!」
「ともかくっ!!」
「ほら、弾いてみなさいっ!!」
おお、これはつまり入団テストってやつですな?
よ――し。
やったるぞいっ!! えいえいお――っ!!
◇ ◇ ◇
「……………………」
「……………………」
「……………………」
って訳で弾いてみたっ!!
昔聞いたアニメの主題歌の曲。歌ってるのはガールズバンドだったかな。
だから場に合ってる筈。いやぁ久しぶりに楽器を持ったなぁ。
やっぱり音楽って良いよねっ!! うんうんっ!!
それでどうですかい?
「どう? こんな感じだけど」
「オッケー貰えるかな?」
結構さまになってたでしょっ!? 感想聞きたいなー。どんな感じだった?
「……………………」
「……………………」
「……………………」
あれ?
「え。これ即興?」
「即興でこんな組み合わせなる?」
「いや、普通に繋がって聞こえた」
「なんか、なんか」
「なんか、凄い……」
あら、えっとぉ。
「あのぉ。それで」
「あんたっ!!」
「はい?」
緑髪の涼子ちゃん。彼女に手を引かれ、近くの店に連れていかれた。
ここは、美容院か?
「重治さ――んっ!! この子、整えてあげてっ!!」
「可愛らしい」
「女の子みたいにねっ!!」
え?
◇ ◇ ◇
「あら――ん。見た時から女の子みたいって思ったけど」
「整えてるとますます磨きがかかるわね――ん」
あら――――。
「綺麗よ――ん貴方♪ うふふ、でも私には及ばないけどね――ん♪」
「うふふふ。ようこそこちらの世界へ♪」
「今日から貴方も」
「立派なオカマって訳よっ!!」
あら――――。
「あははははっ!! 似合ってるわよっ!!」
「っていうか似合い過ぎじゃない?」
「流石重治さん。こんなに仕上がるものなんだ」
「蛇の道は蛇ってねっ!! ふふふ、元が良いから可愛く仕上がったわ~ん♪」
「どう? 女の子に生まれ変わった気分は~ん♪」
「ふふふ……」
「あらん?」
「非常に清々しい気分ですわ。この長いカツラも気に入りました」
「っ!?」
「っ!?」
「っ!?」
「あら~ん?」
「大変良い腕をお持ちで。礼を言いますわご店主」
「あら~ん」
「しっかり声まで揃える事が出来るなんて」
「貴方、もしかして経験者。なのかしら?」
あははははははははははっ!!
なんかオカマになっちゃったっ!! あはは、こうして女の子の恰好するのは子供の頃以来だ。
双子の妹と昔はこうやって変わり身ごっこしたっけなぁ。
その過程で女性の声の出し方も覚えたのだ。つまり昔取った杵柄ってやつっ!!
まさかこの年になってこの手法を使う事になろうとは。
女装中年を加えたガールズバンド……。
なんだか新しい気がするぞうっ!!
あはははははっ!! すっげぇ馬鹿らしくて良いぞ――っ!! あははははーっ!!
よーし、今日の俺は女の子っ!! って事でっ!!
「私の名前は京子と申します。どうぞよしなに」
あはははっ!! いえ――いっ!! 俺、じゃなくてわたしく。
わたくし頑張りますわ――っ!! おほほほほ――っ!!




