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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
悲哀っ!! 正社員激闘編っ!!

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第56話 迷惑路上バンドっ!! でもこれも青春だよねぇ


 とまぁ、そんな訳でナウヤンボーイに生まれ変わってラーメンが出来るのを待つ。

 待つ間暇なので、せっかくだし路上の彼らの事を聞いてみよう。


 「店主さん、ところで外のあの子達はなぜ楽器を?」

 「ああ? ああ、ほらお客さん知らないかい。最近は「超兵」が廃止にされたって」


 「ああ、聞いてますけど」


 「あの子達はそうして廃止にされた元超兵の一部だよ」

 「今はああして失った青春を取り戻そうとバンドマンをしてるんだよ」


 「そうなんですか。随分粗削りな演奏ですけど」

 

 「粗削り……。っていうかまぁ雰囲気だけでも味わいたいって感じかな」

 「地元の基地の子なんだ。だから可愛くてね」

 「だから、こうして場所貸して楽器弾くのを許してる。まぁ昼には帰ってもらうけどね」


 「学校には行ってないんですか? 学業再開されるって聞きましたけど」


 「今日は建国記念日だよ。学校は休み」

 「あ、ああ。そうでしたね」


 あらら、長いニート生活で休日がどうかとかって忘れてた。そうか今日は記念日なんだぁ。

 

 「かなりうるさいですけど、注意はなさらないんですか?」

 「しないよ。良いじゃないか楽しそうで。それに」


 「若者ってのは年寄りに迷惑をかけるもんさ。あの子達はちょっと良い子過ぎたからね」

 「ちょっと尖ってる子が居ても良いだろう? これもあれだ」


 「戦後復興ってやつさっ!!」

 「お優しいんですね」


 「そんなんじゃないよ。でもこの中から将来大物ミュージシャンが出てくるかもしれないだろ?」

 「そうなったらサイン色紙とか飾っちゃいますか?」


 「良いねぇ。お客さん分かってるじゃないかっ!! あはは、そうそうっ!! 色紙とか飾っちゃうよっ!!」

 「あれから色んな物を失ったけど」

 「でももう底値は終えた。ならこれからは昇りっぱなしさっ!!」


 「そうですねぇ。ここも後20年したら有名通りになるかもですねぇ」


 「ああ、そうだねぇ。そうなると良いねぇ」

 「でもこの雑音は……。お客さんは大丈夫ですか? クレームとか」


 「まぁ、ね。でも常連はそれでも来るよ。これも1つの味だってね」

 「お店の隠し味的な感じですか?」


 「そういう事っ!! お客さんほんと分かってるっ!! 通だねぇ」

 「あははっ」


 店の店主と取り留めのない言葉を繰り返す。

 つまりこの店主さん含め、店の人々はライブを戦後復興。文化再建の名目で黙認しているようだ。


 そういうの、なんか良いよね。そうして俺は出されたラーメンを食べながら店主と会話する。

 店主が昔好きだった音楽のジャンル。なんてのを話しながら俺達は会話を楽しんだ。

 

 その最中、がらりと扉が開く。


 「うわっ!!。あ、外の奴等か。あ――びっくりした」


 入ってきた来たのは店主と同じく50代の男性。彼は俺の姿を見るなり驚いているようだった。

 

 「なんだい常連以外の客が居るのがそんなに珍しいかい。あははは」


 店主は笑う。しかし現れた客の視点は違うようで。


 「いや、ほら軍人さんの恰好なんてして。外の連中が飯食ってると思ったよ」

 「え……?」

 

 その言葉を聞いて、店主が俺の恰好を見る。

 それから、ハッ。とした顔をする。


 「ああ……」

 「本当だ、ずっとそうだった。そっか……」


 俺の恰好を見た店主の表情。敵意ではない。ただ。

 その表情は虚無で。ああ、そうだ。


 昔こんな顔で歩いている人を沢山見た。

 虚無に振れた表情をスッと戻して、店主が問うてきた。


 「そういう、コスプレかい?」

 「いえ、仕事着です。間違って着込んだまま来ちゃって」


 なんとなく、嘘を言いたくなかった。俺は店主に正直に答えた。


 「仕事着……? つまり本職の?」

 「テストパイロットですけど」


 「そうかい。軍人さんなのかい……」

 「ちょっと街を見て回りたくなりまして」


 「お邪魔でしたか?」

 「そんな事ないさ。だけど」


 「見てまったく違和感を感じなかった。ああ、そうか……」

 「「処置」を受ければ全部鈍くなっちまうって思ってたけど、こうやって気付く事も出来るのか……」


 「あん? 何の話だ? ともかく井上。ラーメン一杯な」

 「ああ、田中……。作ってやる作ってやる」


 「田中……。処置を受けてから元気になったな。あれから、平気か?」

 「平気? 何の話だ? 俺はいつだって元気だよっ!! それでさー 山田の嫁の話なんだけど」


 そうして常連の客が来た事で俺との会話は中断され、店長は常連客との会話に集中した。

 話す内容はたわいない。最近孫が出来た。とか体のどこそこが痛いとか。そんな話。

 俺はそんな話をラーメンを食べながら聞いていた。

 聞く店主の顔は楽しそう、ではあるけど。でもどこか寂し気だった。


 「ご馳走様。美味しかったです」


 俺は早々と食事を終え、会計を済ませようとする。

 

 そうしてレジの前に立ち、お代を払おうと。しかし店主はレジスターを開けない。

 ただ静かに笑いながら、俺の手をギュッと握って。店主が一言。


 「頑張ってくれな……。軍人さん」


 悲しそうで。でも未来を見ているような。そんな顔。


 「はい、ありがとうございます」


 握られた店主の手をそっと握り返し、俺も笑った。

 

 「あんた良い男だね。兵士に飽きたら芸能人でも目指しな」

 「あはは、機会があれば」


 「ああ、機会があれば……」

 「今は誰だって機会がある」


 「ああ、ああ……」

 「俺は幸運だ」


 「そうだろう?」

 「若い人」


 「ええ、ラーメン。美味しかったです。ありがとう」


 店主の礼を言って店を出る。

 お金は払わなかった。ああやって古い記憶を持つ人は軍人には優しいのだ。

 あそこで払うと粘っても店主との押し問答になるだろう。だからあっさりと応じた。

 しっかりと奢ってもらう。そうする事で埋まる心もある。


 俺も世代は同じ。店主の気持ちはなんとなく分かる。

 ともかくアレだ。タダ飯食えてラッキーっ!! そういう事にしとこっ!!


 さて、そういう訳で店の外を出た。相変わらず外はうるさい。

 しかしそれなりに人が増えてきたように思う。店を去る時、店内の時計を見た。

 今の時間は10時くらい。休日という事もあり物見遊山な観光客でも覗きに来たのだろう。


 人が増えている事に気づいたのだろうか。演者の若者達の声が大きくなる。

 ガシャガシャと騒ぐその雑音に威圧され、人々が店の前を離れる。

 離れながら、遠くから見守るのだ。そうして人々が遠くの方から通りを眺めている。

 店には、入らない。いやぁ、本当営業妨害。見れば耳栓なんかして通り過ぎる人達も居る。


 絶対ここ地元の人に雑音通りとか言われてるよ。

 そんな事を思いながら俺は通りを後にする。若者のエネルギッシュなパッションは心強いが。

 正直もうちょっと実力を付けて欲しいというのが本音だ。


 ああ楽器か。俺も昔は……。おっと。昔語りはよしとするか。

 今の俺は若者。ナウなヤングなのだっ!! うわはははっ!!


 「はぁなんだってっ!?」

 

 通りを少し抜けた通りで。

 あら。

 通りを抜けた先の小さな公園。そこに俺と同じ戦闘スーツを着込んだ女の子三人組が居た。


 「明美の奴抜けるってどういう事よっ!! 一緒にバンドするって言ったじゃないっ!!」

 「なんか彼氏が出来たんだって。だから辞めるって言ってきたのよ」


 「彼氏ぃ? 彼氏って誰よっ!!」

 「その、ナチュラルの男の子捕まえたとか言ってた……。告白してオッケー貰ったって」


 「はぁナチュラルっ!? 何がナチュラルよっ!!」

 「お互い死ぬまで独身で居ようって誓ったばかりでしょうっ!?」


 「そんな事誓ったっけ?」


 「誓ったっ!!」


 女の子達はどうやら揉めているようだ。内容を察するにバンドメンバーが色恋沙汰から辞めたらしい。

 なんと青春な光景なんだっ!! いやぁ。微笑ましい微笑ましい。


 「どうするのよ。あの子がボーカルだったのに」

 「あの子の分のギターも持ってきてやったのに……。あの裏切り者がっ!!」


 「どうする? せっかくのバンドデビューがさぁ」

 「どうするって言ったって」


 「あ」

 「あ」

 「あ」


 「うわっ」


 目が合った。同じくぴっちりスーツを着込む俺と同じくぴっちりスーツを着込む3人組。

 彼女達の視線。その視線がこそばゆくて、その場から立ち去ろうするが。


 「そこの人っ!!」


 「バンド活動」


 「興味ないかしらっ!?」


 親指をグッと立て、緑髪の少女が宣言する。

 バンド活動かぁ。


 そういえば今の俺の若者。だったら。


 「馬鹿、興味ある訳ないでしょ」

 「ちょっと恰好が一緒だからって止めなよ」


 「興味あるよ――」

 「バンド、しよっかっ!!」


 「え?」

 「え?」

 「え?」


 せっかくの若者気分なんだ。


 ちょっとくらい、青春楽しんじゃおっとっ!!


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