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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
悲哀っ!! 正社員激闘編っ!!

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第55話 ちょっと街を見て回ろっ! うん、皆どうして俺を見るの?


 おお。街よ。輝かしい街。麗しきの首都。いやぁ綺麗な街並みだぁ

 新しく洗練されたキラキラな街並み。道のタイルも汚れが少なく、町全体がピカピカに輝いてる。

 ノア地区の街並みを本当に美しい。

 道路も広いし歩道も広い。この街を歩くとなんだか小人になった気分だ。

 いやぁ。流石首都。都会だなぁ。


 ガラス張りの大きなビルがあったり、巨大な電光板が芸能人の商品紹介を映している。

 幅広の道路を人々が歩き、お洒落な身なりをした人々が行き交っている。


 おお、都会っ!! まさに都会って感じだねぇ。

 俺が住んでいる地区は住宅地が多くのんびりとした雰囲気の郊外ベッドタウンのような街並みだ。

 しかしノア地区は首都という事もあって人通りも多く賑やかな繁華街だっ!! 


 体的に若い人が多い気がする。若者の街って感じっ!! 良いじゃないいやぁ活気があるっ!!

 おお、これぞ街っ!! これぞ首都よっ!!


 そして俺もそんな繁華街の一員になってとことこ歩く。

 気分はおのぼりさんだっ!! 

 田舎から出てきた地方市民って感じで、見慣れない街をキョロキョロと見渡しながら歩く。


 そうして街に溶け込んで……。っという訳にも行かず俺はすれ違う人からジロジロと見られている。


 「やっぱりこの服目立つかなぁ」


 自分が来ている服。それは服というより鎧。俺はぴっちりフィットのバトルスーツを着込んでいる。

 着替えるのを忘れこのまま来てしまった。だからこそ、まぁ目立つのだ。

 歩く度に通行人からジロジロ見られる。他の人の服装を見るとスーツだったり洋服だったり。


 皆それぞれ街にあった装いをしている。

 そうして人々は互いに示し合わせたようにおしゃれをして。

 それぞれが街の一部になったかのように振る舞っている。だが今の自分はどうだ?


 おお、まるで宇宙から飛来した異邦人のように。

 浮いて浮いて浮きまくって。場違いな戦闘服を着て街を歩いている。


 いやん。なんとも恥ずかしい。いやぁ、そんなに見ないで通行人さん。

 別に好きでこんな恰好してる訳じゃないから。ほんとだよー?


 とほほ。まさかこんな目立つとは。なんかこう、着られる服はないかなぁ。

 そうしてチラチラと街のショップに目を向けて服屋さんを探す。


 しかし都会の中心地という事もあり、どこも洒落っ気溢れる衣類店しかなく。

 36歳独身元無職のおっさんが立ち寄れるような店はどこにも無かった。


 若者向けのファッションって難しい。なんかこう、量販店でもあればなぁ。

 なんて思いながら街を探すが、やはりどこも若者向けのショップしかなかった。


 ノア地区は「都会」を感じたい人が集まる場所だからか。

 他の地区にあるようなくだけた量販店は少ないように感じた。


 基本住宅を中心とした地区に住んでいた為、こうした商業中心の地区に来る事はあまりない。

 本来都心であろうと古い町並みの中に老舗の古い店があったり、古い住宅地を解体して景観無視の量販店が現れたりするものだが。


 このノア地区は街の作りからして新しい為、そんな横道は存在しないのだった。

 昔ながらの。が存在しない。全てが一応にして新しいの。それがこの街だ。


 全てが新しいから新しい物しかない。ふとそれを悲しく感じた。

 でも今の子達はなんでも新しいその世界に馴染んでいるのかも、と思うと。

 ちょっと、元気を取り戻した。


「智代ちゃんもここで遊んでたりしてたりさ。ふふふ、若い子だしねー」


 ふと元気に旅立っていった青春真っ盛りのあの子の事を思い出す。

 彼女も元気にしていると良いけど。


 とぼとぼと街を歩きながら目的もなく進み続ける。

 ほんとはお洋服屋さんに行きたいけど、無いから仕方ない。

 もうこのまま家電屋さんに寄っちゃおうかなーなんて勢いで街中を歩く。


 人々の視線もちょっと慣れてきた。

 いや、っていうかこの辺りはそこまで見られてないな。気付けば街のショップの装いも変わっていた。

 なんか変わった料理屋さんだったり楽器だったりを売ってる店が並んでいる。


 見ればそこらの路地や道路脇で若い子達が楽器を弾いたり歌を唄ったりしている。

 ああ。なるほど。そっかここは……。


 路上ライブとかするところなんだなっ!! へ――。もうそんな事する子も出てきたのか。

 見れば皆思い思いの恰好であれこれ曲を弾いている。


 髪を逆立てたピンク髪の子が黒っぽい服着てたり。

 おしろいをこれでもかとまぶした男の子が女の子の恰好してたり。

 パンク。ゴスロリ。メタル風。なんでもござれのコスプレ舞踏会。

 千差万別、十人十色。色んな人達が様々な恰好してライブを楽しんでいる。

 

 なんとも楽しそうなその光景。うぅーん。昔を思い出すなぁ。

 みんな嬉しそうな顔で歌ってる。きらきらの青春。なんともキラキラ青春風景。

 羨ましい。ああ、俺もこんなキラキラした青春が欲しかったなぁ。

 皆が歌う。弾く。賑やか賑やか。でも、まぁ……。


 上手くは、ないよね? 楽器さばきもぉ。まぁ、そのねぇ。

 ただなんか集まって楽器鳴らして叫び声を上げてるって感じ。なんというか阿鼻叫喚の宴というか。


 歌が歌として機能してない。

 本当、叫んでるだけ。よく見れば楽器を鳴らしている子達は楽譜を持っていない。

 聞こえる音色も不揃いな「何か」だ。見れば周囲に見物している大人や他の人達は居ない。

 

 これじゃあ周囲の店の人達も困るんじゃないか? 彼らは一体何をしているのだろうか。

 ガヤガヤと雑音を垂れ流す通りを抜けて、その先にこじんまりとしたラーメン屋さんを見つけた。

 

 せっかくだしちょっと食べて行こう。なんて考えて店の扉を開ける。


 「うわっ。え、客?」


 そこには50代くらいの中年男性が頭にハチマキを巻いて厨房に立っていた。


 「ラーメンくださいな」

 「あ、客。良いのかい? うるさいけど」


 「構いませんよ。若者の息吹ってのを感じますっ!!」

 「あんただって十二分に若いだろうに」


 残念ながら俺はもう年です。でも訂正するのも面倒だし。って事でカウンター席に座る。

 座って気付いた。このカウンター。少し古いような……?


 「随分年季が入ったカウンター席ですね」

 「お、気付いたかい?」


 俺の指摘を聞いて、店長の顔が明るくなる。


 「このカウンター席はね。俺の前経営してた店のカウンターを切り出して使ってるんだよ」

 「お住まいは?」


 「東京さ。まぁ今は廃墟しかないけど……」

 「ですねぇ。畿内以外はどこも裏山ですから」


 「まぁね。だが20年前はまだ道路が生きてたんだ。それでわざわざ取りに行った」

 「でも今は……。やっぱり人の手が入らないとどこも自然に帰っていくねぇ」


 「いつかまた帰れる日が来ますよ」

 「そうだね。ラーメンだったね。何を食べる?」


 「おすすめは?」

 「味噌ラーメンさ。東京時代から変わらない老舗の味だよっ!!」


 「あら老舗っ!! それは良いですねぇっ!!」

 「ふふふ、若い人ノリが分かるじゃないか」


 若い人かぁ。もう結構年なんだけど。俺ってそんな若く見える?

 嬉しい事だけど……。いや、ここは嬉しい事ってした方が楽しいかもしれない。

 

 どうせ知り合いなんて居ないんだ。だったら今日は若者になっちゃえっ!!

 ナウなヤングにバカ受けのシティボーイに早変わり、なんてさぁっ!!


 そんな訳でナウでヤングでバカ受けボーイになって。

 今日は一日、街の楽しんじゃうぞっ!!


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