第53話 接待は大成功だっ!! あれでもなんか忘れてるような
「それでは、今後ともよろしくお願いしますよ博士」
「えっと……。はい……」
「それと君」
「はい」
「名前は何というのですか?」
「名乗るほどの者ではありません。この場において博士の名だけ覚えて頂ければ」
「私は博士の作った物に乗っていただけですので」
「そうですか……」
そうです。だもんで知らない振りして頂戴ね。
どうだ? どうだ?
「分かりました……。では今後とも博士と共に。よろしくお願いします」
よしっ!! 無事乗り越えたぞっ!! 俺が36歳ニートって事はバレてないな。
ふぅ、乗り越えたぜ。良かった良かった。
「…………………………」
顔をベールで隠した少女がこちらを見ている。ような気がする。
体型は結城くんに似る。服装は……。なんか和装? 和服を着てベールを被って。
ふふふ。和洋折衷だ。
「お見事な働きでしたわ」
うん? 一言だけ言って。彼女はそれから何も言わなくなった。
お見事。あはは。そうでしょう? ゲームは得意なんだよっ!! また遊びに来ても良いのよっ!!
と言ってもまた訓練用のロボ揃えないとね。あれ作るのにどんだけお金かかったのやら。
まぁお金払ってくれるって言ってるし、そこは大丈夫。なのかな?
ともかく接待は大成功に終わったっ!! いやぁ、やってみるもんだなぁ接待も。
俺と博士。2人でたかしくんのお父さんを車に見送った。
しかしボディガード凄い数だったな。10人くらい居たぞ。隣のビルにはスナイパーなんかも居た。
撃ってこなかったしアレはたぶん味方。変な動きした奴をバキュンと撃つんだきっと。
やっぱりお金持ちって凄いんねぇ。
ともかくこれで接待は終了したっ!! いやぁ、急な接待だったけど乗り越えられて良かった。
「おい助手」
「あら。はいなんですか博士」
やりましたねぇ博士っ!! 接待成功ですよっ!! あははっ!! 祝いのラーメン屋にでも行きますか?
お腹空きましたね。なんか食べたいです。
「あんた。名前はなんて言うの?」
「名前」
あ、そういうターン。そっか。名前か。まぁ。
「鷹司京介って言います。よろしく」
「たかつかさ? 随分変わった苗字ね」
「まぁ。よく言われますね」
流石に雇い主に嘘を教える訳にも行かないし、ここはしっかり名乗っておこう。
なんでも嫌い嫌いで渡っていけない世の中だ。しかし本当にこのまま就職しちゃうのかな。
「正式に」
「うん?」
「正式にあんた宛てに採用通知書を送付するわ。自宅教えなさいよ」
あら。とほほー。やっぱり就職する事に……。
まぁこれもさだめか。あーあ。ちょっとしたバイトのつもりだったのに。
「それで住居は?」
「えっと。ここで――」
「ふん……。んん? ここって京都御所の近くじゃない。へー。良いところ住んでるわね」
「あら。歴史ロマン感じちゃうタイプですか? 今時そんなの誰も気にしてませんよ」
「ふん。まぁ今は全部廃墟か。千年の都が……。世の無常を感じるわねぇ」
「最近は区画整理で新しくなってますよ。新京都ってやつです」
「なんでも良いわ。ともかくこれからあんたは」
「私の正式な助手兼テストパイロットよ」
「今後ともよろしくね……。えっと」
「京介」
あら。名前で呼ばれてしまった。そっか、そうだよな。
これが普通、なんだよな。いやはや。
「はい、春美博士」
「ふん。あんたみたいなのを雇ってあげるんだから。今後も馬車馬のように働きなさいよね」
「はーーい。博士」
「相変わらず間延びした返事ね。まぁ良いけど」
就職決定。今日からここが俺の仕事場かぁ。あーあ。せっかくのニート生活が。
たかしくんに今度からなんて言わせれば良いだろうか。
う――ん。今まで通りニートって事で……。駄目かなぁ。むむむ……。
「ともかく、私はこれから仕事を始めるわ」
「あらそうなんですか? 何をするんです?」
「あんたが脳波コントロールを操れる存在だって分かった。そっちの調整もするし」
「それと、普通のコントローラーでの動作設定も変更するわ」
おおっ!! あのダッシュの不具合修正してくれるのかっ!!
どうせならキーコンフィグも弄ってくれると嬉しいな。
「だからあんたには勿論付き合ってくれるわよ」
「だってあんたは」
「テストパイロット兼助手。ですよね。博士」
「分かってるじゃない。ともかく今から始めるわよっ!!」
「お腹空いたんですけども」
「はぁっ!? 我慢なさいっ!! 舐めてんのっ!?」
あら、駄目? こう。休憩したいですけども……。
「あんたには特別な才能があるっ!! ならもうあんたの事離さないわっ!!」
「あんたは私の所有物よっ!! 今後は私の為に身を粉にして働く事ねっ!!」
「さぁ、じゃあ行くわよっ!!」
「良いわねっ!! テストパイロットっ!!」
「あんたは今日から正社員なんだからっ!!」
「キビキビ働く事ねっ!!」
正社員、か。嫌な言葉だなぁ。
ともかくバイト生活が終わり、正社員って事になってしまった。
って事は色々と手続きとかも必要になりそう……。
うわぁ。やだぁ。こ、こっそりレイジさん辺りにでも手伝ってもらおうかな。なんて。
あはは……。はぁ。俺の快適ニート生活が。
まぁ。
「ほら行くわよっ!! 私が正式に雇ってあげるんだから喜びに打ち震えなさいよねっ!!」
相手は幼女1人。それならちょっとは。
楽出来るかなっ!!
よーし。これから正社員として頑張るぞ――っ!!
◇ ◇ ◇
「ですからこの動きだとダッシュ後に硬直が発生して次に繋がらないですよ」
「もっとコンボを意識してですね」
「うるさいわねっ!! 何がコンボよっ!! こんなのは動けば良いのよっ!!」
「動きが単調なんですよ――。あと行動をキャンセルする仕様とかも欲しいです」
「あともっと攻撃の種類増やしてくださいな」
「うるさいうるさいっ!! 先行入力だのなんだのってうるさいのよっ!!」
「あとジャンプは棒立ちジャンプじゃなくて動かした方向にジャンプする方向で」
「うるさいわね分かったわよっ!! くそっ!! 文句ばっかり付けやがってっ!!」
「そんなに文句ばっかり言うなら」
「朝まで付き合わせてやるから覚悟する事ねっ!!」
「夜になったらしっかり寝ないと駄目ですよ。布団どこですか? まだ買いに行ける時間ですよ」
「はぁ。知らないわよっ!!」
「じゃあ今から布団買ってきますね。夜になったらしっかり寝る。重要ですよ」
「はぁ? いらないって言ってるでしょっ!! 死ね死ね死ねっ!!」
「死ねぇええええええええええええええ――っ!!」
◇ ◇ ◇
「ぐぅ……」
よし、布団を買ってきて眠らせてやったぞっ!! 俺の華麗な寝かせ付け技術を見たかっ!!
わはははっ!! 小さい頃よくこうしてたかしくんを眠らせたもんだ。
昔の経験が生きたなっ!! 俺の絵本の読み聞かせ術はまだ衰えていない。ふふふ。
えっと。今は何時だっけ? ああ、もう夜の12時か。本当はもっと早くに子供は寝る時間だけど。
でも今まであまり寝てなかったみたいだし、なら寝ただけで上々か。
ともかく今日は色々あった。
接待して就職して。そして最後にはウォーカくんのキーコンフィグの設定。
なんかこんな色々したのっていつぶりだろうか。大変だったけど、それなりに。
楽しかった。
これが今後の俺の日常になっていくのか? ああ、もうニートを名乗る事は出来ないかもしれない。
でも、なんというか。なんというか……。
なんか。「普通」になれた気がする。
良い事なんだろうけど。でもどこか焦燥感。あのまま気ままに寝て起きての生活が恋しい。
ああ。ああ……。
まぁ。
今は、良いや。考えなくて。なんだか眠くなってきた。
しかしアレだな。ここ博士の自室とか無いんだもんな。
博士今までどこで寝てたんだろ。ああ。寝てないのか。はぁ。
なら今日からこの応接室が俺の部屋か。ここくらいだもんな。寝られる部屋って言ったら。
他はどうにも広くて。
広い。広いって行ったら、たかしくんの家も広くて大きかった。
今はみんな誰もが広い家に住む。この広い広い世界で。
今はみんなのびのびと暮らしている。でも。これがいつかギュウギュウになる日は来るのかな。
そんな日が来たら……。
きっと、今より世界は賑やかになるよね。
おっと。ちょっとセンチな気持ちに浸ってしまった。
まぁ良いや。
ともかく今日はもう寝よう。
あれ? でもなんか忘れてるような気がする……。
うーんでも良いやっ!! 思い出せないって事はそんなでもないって事でっ!!
そう言う訳で、ニート生活最後の夜を祝してっ!!
おやすみなさ――いっ!!




