第48話 これが接待かぁ。 初仕事で接待とは緊張するなぁ。
「よし、それじゃあもうすぐ来るわよ。失礼のないようにね」
「は――――い。分かりました――」
「返事がふにゃふにゃしすぎよっ!! もっとシャキッとなさいっ!!」
「了解しました博士。大丈夫です」
「うわぁ急にシャキっとするなぁっ!!」
ええ……。もう博士がシャキっとしろって言ったのにぃ。
まぁ良いや。自分でペースでやろ。
「それで博士。接待とは言いますけど、先方はどんな方なんですか?」
「ここ最近ウチのスポンサーになった大企業の偉いさんよ」
「結構金出してくれて、おかげでウォーカーの予算が3倍になったわ」
「3倍。それは凄いですねぇ。でも大企業って?」
「今の俺達の規模で大企業ってなると……。厳しいですよね?」
「良いの大企業って事でっ!! そっちのが夢があるじゃないっ!! 大企業っ!! 大企業だもんっ!!」
あらら。ぐずっちゃった。やっぱりしっかり歴史習ったような子は色々あるな。
本当。歴史教育ってのは良いのか悪いのか。たはは。
「ともかく大企業が来るのっ!! 大企業よ大企業っ!! う――ん。大企業。良い響きじゃないっ!?」
「大企業か――。でっかいビルとか建ててるんですかね?」
「でっかいビル建ててたわよっ!! やっぱりでっかいビルはロマンねっ!!」
「大丈夫ですかね? そんなの建てて。「的」にされますよ」
あんまり大きい建物は「的」にされるからあんまり見ないよな。
その大企業ってのは豪胆なのかそれとも歴史を忘れてるのか。どっちなんだろ。
まぁ後者なんだろうけど、そっかぁ。もう20年だもんねぇ。
「もう大きなビル建てるような人が出てきたんですねぇ。勇気あるなぁ」
「う、うるさいうるさいっ!! もう時代は変わったのよっ!! っていうか」
「あんた……。「習ってる」の?」
あら。バレちゃった。
「はい。知ってますよ」
「そう……。なるほどね」
「だから戻ってきたんだ……。ウチの職員連中は。素養が無かったから……」
「それが普通です。それで良いんですよ」
「そうかもね……。でも」
「あんたは勇気があると思うわ」
あら。
「ふふふ。ありがとうございます博士」
「接待。成功させましょ。良い印象与える事が出来たら特別ボーナスあげるわ」
「おお。なら新しい白衣が買えますねっ!!」
「なんでよっ!! こいついくら金渡しても限界ギリギリまで使ってくるし……」
「もうちょっと物欲を持ちなさいっ!!」
「趣味がゲームくらいしかないもんで……」
「はぁこの現代っ子がっ!! 死ねっ!!」
30代なんですけど……。たはは。
「ともかく大企業さん。どんな名前の企業なんですか?」
「ふふん。聞いて驚きなさい。なんと私のスポンサーになってくれたのは」
「あの結城財閥よっ!! 凄いでしょっ!!」
ゆうきざいばつ?
なんだぁ、それ。
「ゆうきざいばつってなんですか?」
「なによ、あんた知らないのっ!? 結城財閥ってのは「後」から今まで」
「様々な分野で頭角を現してる新興企業よっ!!」
「新興企業……。今は誰も新興じゃ……」
「うるさいっ!! 新興企業は新興なのっ!!」
博士曰く、なんかこう凄い企業らしい。
ゆうき、ゆうき……。知り合いにも結城くんって名前の子居るし。
結城ってのは今人気ある名前なのかなぁ。
ふふふ。となると結城くんは流行の最先端を言ってるって訳か。
そういえば結城くんの実家はお金持ちらしいし、もしかして何か関係があったり?
「ともかくその結城財閥が今後の社会の安定の為に「超兵」を廃して」
「私のウォーカーに出資しようって話になったのよ」
「なるほどぉ。それで次世代兵器って事に」
「そういう事っ!! ほんとはウォーカーって超兵の補助って名目だったんだけど」
「でもここ最近、性能が認められて次世代兵器って事になったのよ」
「ここ最近……。そうなんですか?」
そうだったのか。もっと昔からそういう話になってると思って。
つい最近。なんでだろう? いや、でも超兵が無くなるのは良いか。かなり状況はアレだったし。
あれからもう20年だ。そろそろ色々と……。
「通常」に戻るべきだよなぁ。やっぱり。
「ともかく財団が超兵よりこっちに支援してくれた事が呼び水になって」
「ウチのウォーカーが日の目を見る事になったのよっ!!」
「それまで日の目を見てなかった?」
「そ、そんな事はないけど……。と、ともかく超兵より誰でも強くなれるウォーカーの方が強力よっ!!」
「もう「あの頃」とは違う。私が作ったウォーカーこそがっ!!」
「ウォーカーこそが……」
「残された人類の、希望だわ……」
希望、か。
そうだなぁ。
あの頃は本当に大変だったけど。でも今は特にこれといった騒動も起きず、平和そのものだ。
そんな状況で生まれた兵器だからこそ。
求められる性能ってのがあるのかも。よし、俺も未来の為に頑張るぞっ!!
たかしくんや結城くん。智代さんがしっかり青春出来る世の中。
作ってやろうじゃないかっ!!
頑張れウォーカー君っ!! まぁ俺も頑張らなきゃなのか。あはは。
「あ、車の音っ!! よし、一緒に外で迎えに行くわよ助手っ!!」
「は――い。分かりました――」
「だから態度がぬるいのよこの馬鹿っ!!」
「了解。では行きましょう博士」
「……。なんかキリっとされるとムカつくわ。いつも通りで良い」
ええ……。もう、わがままだなぁ。
ともかく今から偉い人が来るらしい。そういう訳で博士と一緒に施設の玄関先で待つ事になった。
偉い人か。どんな人だろう。偉い人、偉い人……。う――ん正直。
全員顔見知りなんだよなぁ。
20年前は30万人しか居なかったし、あれから色々あって人増えたけど。
でも、偉い人って事はたぶん知ってる人。俺の顔も知られてるかもだし……。
あーあ。だから顔を隠すタイプの何かが欲しかったんだけど。
っと、どうやら例の財閥の偉い人ってのがやってきたぞ。
さてさて、どんな人物がやってくるんだか。あ、せめてもの抵抗でこう、顔をキリっとだね。
よし、ここは凛々しい寡黙な凄腕パイロットって事にしよう。
そうすりゃバレないだろっ!! 半々くらいで……。
「来たわよっ!! よし、よし。あ、降りてきた。いよ――し。コホン」
「ようこそ結城慎之介会長。私が」
「私がこの戦術歩行兵器研究所の所長、三日月春美と言います」
「今日はよく来てくださいました」
あれ? この人は確か……。
「今日は私のウォーカーの性能を」
ああ、そうだよね。この人って。
「ぜひ、ご堪能ください」
ああ、そうだ。この人って。
うわ。
結城くんのお父さんじゃん。
なんてこんな所に居るのかしら。
あら――。




