第46話 上には上が居る。公僕って大変だぁ。
「っという訳で」
「なんかテストパイロットになった感じかな」
「そう、なんですの……」
彼女達に事情を説明した。
流石にアニエスさん達の事を言うのは避けたが、まぁ博士の事は少々説明を。
あまり悪し様に言うのは憚れるので多少オブラートに包んで。
ともかくそう言う訳で正社員になってしまったのだっ!!
テストパイロットか。いやぁどんな事をするんだろうなぁ。
「それで、鷹司様はそれを受け入れたと……?」
「まぁ、本当はあまり働きたくはないんだけど……。まぁこのままってのも」
「ともかく最近出入りしてた女の子もさ。しっかり学生に戻るって言うし」
「俺も多少は……」
「考える時かなぁって思って」
本当は考えたくない。このままずっと自堕落にゲームしていたいけど。
でも。それだと世間体がどうだとかって話にもなるし。
ああ……。働きたくないなぁ。
「それで……。鷹司様はそれで良いと……」
「おっと、もうだいぶ話し込んじゃったな」
「それじゃあ俺はそろそろ行くからっ!!」
「結城くんによろしくねっ!! それじゃあね――っ!!」
なんだかかなり話し込んでしまった。急いで研究所に帰ろうか。
借りた千円は……。お、お給料貰ったらしっかり返すからさっ!!
しかし結城くんに妹の結城……。あれ名前なんだっけ。
年取ってくると人の名前覚えられなくなるよね……。な、名前は次覚えるって事でっ!!
その時まで……。またねっ!
ふぅ、博士怒ってないと良いけど……。俺は2人を背にして走り出した。
「戦術歩行兵器研究所所長、三日月春美……」
「ふ――――――――――――ん」
◇ ◇ ◇
「遅いわよこの下僕っ!!」
「あらら、すいません博士」
案の定帰ったら怒られてしまった。まぁそこそこ時間かかったから……。
ここは素直に謝らなきゃね。
「すいません博士。遅れちゃいました」
「まったく30分もかかるなんてっ!! もうお腹空いてるんだけどっ!!」
ご飯は食べないんじゃなかったのか?
そう聞きそうになるのをグッと堪え、俺はコンビニから買ってきたオムライス4つを。
「あれ?」
オムライス4つ。
4つ買ってきたつもりだけど……。
1人多いような……。
「お、お初にお目にかかります……。あの」
「口調っ!!」
「お初にお目にかかります。だ、だ……」
「だっちゃ……」
「よ――し」
画面の中に先程まで一緒に戦っていた例の女騎士が居た。
彼女もアンデールの中に入ってきたのか。ああ、恐らく焚火で休んだのだろう。
焚火システムは本当に便利だけど、やっぱりセキュリティに問題あるよな。
しかし参ったな。
オムライス4つしかないや。
「これは中々……。美味しい。崩壊寸前の国勢と聞きましたが、物資は豊富にあるのですね」
「誰が崩壊寸前じゃあっ!! 崩壊を乗り越えて、だろうがっ!! あと語尾いいいいぃっ!!」
「あ。す、すまない……だ、だっちゃ」
「ちっ。この女他と比べると生意気ね。良い? あんた達の英雄は私のしもべ。奴隷なの」
「あとあんた達を救ってやったウォーカーは私が作った兵器よ」
「つまり、私がここでは一番偉いっ!! 今こうして話してるのも私の好意だって事忘れない事ねっ!!」
「私が飽きたって言ったら、このごっこ遊びだってすぐ終わるんだからっ!!」
「それが」
「お」
「わ」
「か」
「り」
「かしらっ!?」
「す、すいません……。言葉が過ぎました。だっちゃ……」
「ど、どうかご無礼をお許しくださいニャン……」
「我々が間違っていたでゴザル……。お、お許しを春美様」
なんだか俺が居ない30分の間で異世界騎士達はすっかり春美博士に屈服してしまったようだ。
まぁ、この威勢を喰らえば流石に面食らってしまうか。
ウォーカーという圧倒的な実績もある事だし、中の彼女達は頭が上がらないだろう。
「えっと。ともかくオムライス。ありがとうございますニャン。ニート様」
「色々ご支援くださり、ありがたく思ってるでゴワス」
「ははは、良いんだよ。えっと」
「マリベルさん、だっけ?」
「は、はい私は」
「口調っ!!」
「わ、私はマリベル、だ、だっちゃ」
「よ――し」
どうやら彼女は博士からだっちゃの口調を授かったらしい。
金髪碧眼の凛々しい女騎士。いかにも騎士って感じの女の子……。いや20代か。
ともかく20代の美人騎士様だ。名前はマリベルというらしい。
いかにも中世。いかにも王政。いかにも騎士道な出で立ち。
こちらが買った現代服を着こむ姉妹と比べると、まるで2人こそ異世界召喚されたお嬢さんのようだ。
「しかしエレノア女王国の儀が成功していたとは。儀式は失敗したと聞き及んでいたので」
「うるさいっ!! 身内にしか分からない話をするなっ!! このカスっ!!」
「えっ!? あ、す、すいませんっ!! だっちゃ」
「あ、な、ならご説明を。ニャ、ニャン……」
「なんで私がそんな話聞かないといけないのよ舐めてんのっ!!」
「知らない連中の知らない事情なんて知らないわよっ!!」
「何がエレノア女王国よっ!! 国がない私達への当てつけっ!?」
「あ、あの……ゴワス」
「良いわねぇ。他国がいっぱいあって。うん? それで国無しの私の前で?」
「あんた達は楽しくお仲間いっぱいの他の国がどうだこうだとか言うのかしら?」
「それで私はどう反応すれば? あんた達の知らない国の話を聞いて、私がどう楽しくなるの?」
「いや、あの……」
「知らないわよそんな事情っ!! 場の主導権は私にあるのっ!!」
「私が不快になる言動は一切認めないわっ!!」
「あんた達がここに居るのも。あんた達が飯を食えるのも。あんた達が生きているのも」
「全て私が居てこその結果よ。それなのにこの私の許可を得ず身内の話をしようなんて」
「随分お高くとまってるじゃない」
「ねぇ?」
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
「も、申しわけありません。春美博士の助太刀。感謝のしようがありません。だっちゃ」
「ウォーカーのその雄姿。おみそれしました。助けてくださり心より感謝しますでゴザル」
「こ、今後ともど、どうぞ我らに助太刀して欲しいですニャン」
ああ、どんどん力関係が決まっていく……。
春美博士って本当女王様気質だなぁ。彼女に敵う人物って居るのか?
いやぁ、本当にもう。ふふふ。
しかしお腹空いたな。オムライス、マリベルさんにあげちゃったから。
お金も4円しか残ってないあ。あ、後で追加で買った歯ブラシ2人にあげよ。
ともかくご飯を食べたら今後の事を色々話し合って。
「春美博士っ!! 春美博士居ないんですかっ!!」
うん? 玄関先から誰かの声が。誰だ?
「あ、やば……」
博士の顔がスーッと青くなり、さっきまでの威勢はどこへやら、
博士は声の方向に急いで走り去っていった。その様子は画面の面々も気づいたようで。
「何があったのでゴワスかね?」
「どうしたんだニャン?」
画面内の彼女達も興味津々のようだ。皆が見守る中、聞こえてきた言葉は。
「いやぁ、えへへ。ど、どうも国防委員会の方々。よ、ようこそおいでくださいましたぁ。げへへ」
「あ、あの今日は何の御用で? えへへ。あ――。ウォーカーのテストは順調ですよぉおお?」
「いや本当っ!!」
「いやぁ。え? 職員、全員首にしたのは本当か? いやぁ。それはですねあははっ!!」
「と、ともかく経過はもう、そりゃ。順調でっ!! えへへへへ。いやぁ本当おかげ様で」
「いやいや。ほんと、もう。えへへへへへへへ」
あら。なんだか凄い……。低姿勢な感じで……。
話しているのは政府の偉い人かな? 国防委員会とか言ってたなぁ。
つまり博士の上司って訳か。
「はい、はい。もうそりゃあウォーカーは次世代を担うっ!!」
「え? 今からスポンサー企業様が視察に来る?」
「あ、それは……。それは……」
「い、今から模擬戦の準備をしましゅぅうううううううううっ!!」
「はい、はい、分かりましたっ!!」
ドタドタと、博士がこちらに向かってきて。
「助手っ!! 今からスポンサー様が来るからっ!!」
「今から急いで」
「お出しするお茶菓子を買ってくるんだよぉおおおおおーっ!!」
ああ、あの天下無敵だと思われた博士がこんなになるなんて……。
やっぱり上に上が居んだなぁ。
公僕って本当、大変だぁ。




