第43話 経験値ゲットぉっ!! あれ、ウォーカーにも振れるの?
「うおぉおおおおおお――っ!! 見事に敵を倒せましたね春美博士っ!!」
「まぁ。アンノウンの装甲を利用した武器を使ってるんだから当たり前でしょう」
「ところでなんとなくスルーしてましたけどアンノウンってなんですか?」
「うん? ああ。まぁ」
「気にしなくて良いわ」
「こっちの話だから」
「そうですか」
「なら聞きません」
「よろしい」
激戦を終え、なんとかあのでっかい怪獣……。もとい「魔獣」という存在を倒す事が出来た。
目の前にその大きな巨体が横たわり、周囲の木々を押しつぶして息絶えている。
これが某ハンティングアクションなら剥ぎ取りでもして素材を取る所だが……。
しかしそんなコマンドなどある訳がなく、ウォーカーに乗りながら俺達はその死骸を眺めている。
ウォーカーの中では俺のキャラと他2人。ひしめき合って乗っている。
俺が生身の人間ならちょっとしたご褒美にもなろう展開だが、しかし現実の俺はしっかり現実に居る。
だからそのご褒美おしくらまんじゅうを受けているのは物言わぬ俺のキャラって訳だ。
「魔獣を……。倒した」
「これほどの大物……。なんと」
画面内の2人は相変わらず倒れた魔獣を見てぶつくさと何か言っている。
まぁ、まずは焚火で休んでアンデールに行こうか。経験値捌きたいし。
「き、貴公……。ま、待ってくれ話を……」
「ああ待って話をっ!!」
後ろから先ほどの騎士が追いかけてくる。話したいのは山々だけどまずは焚火に入りたい。
そういう訳で背後の騎士を気にしながら、俺はゆっくりと焚火に移動する。
焚火を使う為、ウォーカーを降り元の操作に戻ろうとしたが。
「あ、ウォーカー乗ったまま行ける。お――――」
しかし焚火の傍に寄り降りようとした時、焚火から例の転送画面が表示されているのに気づいた。
ボタンを押して選択すると、ウォーカーが座った。
「ウォーカーが座ってる。そんな機能無い筈だけど」
春美博士も驚いているようだ。
ウォーカーがその卵型の体型で器用にチョコンと座りながら焚火に寄り添っている。
「ふふふ、こうして見るとウォーカー君可愛いですね」
「変に擬人化しないでよ。こいつは兵器よ」
そりゃそうだけど。でもまぁちょっとくらいは良いじゃない。
「ゴーレムが焚火で休んでる……。あ、あの礼を言いたいのだが、出て来てくれないか?」
「あの、ああ言ってるでゴワスけど」
「どうしますニャン?」
いつの間にか語尾を戻し、2人が尋ねる。
話したいのは山々だが、やはり今は経験値を使用したい。またこんな事があってはならない。
だからこそ今のうちにキャラの強化をしておこう。
その旨彼女達に伝え、俺はアンデールへと移動した。
「な、き、消えたっ!? お、おい助けっぱなしで行くのは卑怯だぞっ!!」
騎士の非難の声が聞こえたが……。ちょ、ちょっと待ってねっ!
「って訳で来ましたアンデール~」
「なんか狭そうじゃない? ふふふNPCにぶつけないようにね」
確かにそうだ。しかし考えればこの場所にはNPCが1人しかいない。
本来なら鍛冶屋やアイテム販売のNPCが居る筈だが、彼らは一体どこに行ったのだろうか。
「まぁ良いか。えっと火灯女さん、経験値持ってきたのでステ振りお願いしまーす」
「ステ振り? たまにニート様は彼女に話しかけますが、一体何の目的があるんでゴワスか?」
「私も気になってました。何をしているニャン?」
それは後々に。ともかく今はステ振りだ。経験値結構入ったからかなり強化出来る筈だぞ~。
楽しみだっ!! アレ?
「レベル1になってる……」
「あら、本当。さっきまで25あったわよね」
一緒に見ていた為、博士も事情を知る。目の前のキャラのレベルは1。
本当は25あった筈なのだが。
「もしかしてウォーカーにステ振りしてるって事じゃない?」
「ええ、ウォーカーにですかぁ?」
博士の突拍子もない発言。ウォーカーにステ振りをする?
しかしウォーカーは現実の兵器だぞ? それにステ振りなんて。
「面白そうじゃない。ちょっと振ってみなさい」
「あら――」
どうやら博士の好奇心に火を付けてしまったようだ。
俺は博士にステ振りの仕方を議論する。
「えっと、上げるならどれを上げたいですか?」
「まずはどれを上げたらどうなるかの説明をなさいよ」
あら、ごもっともで。俺は博士にステータスの説明を行った。
博士号持ちのお偉い博士にレクチャーなんて。なんだか偉い博士になったみたいだ。
「ふ――ん。あんたが持久力に振ってたのはスタミナを上げる為だったのね。スタミナねぇ」
「はいそうですね。スタミナに振れば素早く動けますし」
「どうして他に振らないの?」
「あんまり攻撃力とか反映されてないみたいで……」
「なるほどねぇ。体力が上がれば積載量が上がるんだっけ?」
「まぁ、そうですね。色々装備を重くしても装備出来ます」
「そういえばあんたのキャラ裸じゃない。そういう縛りなの?」
「防具が手に入らなくて……」
「あ、それなら本拠に戻ったらこちらから提供するでゴワスっ!!」
「うるさい話に入って来るなっ!! 黙ってなさいっ!!」
「ご、ごめんでゴワス……」
「あら、駄目ですよ博士。彼女は一緒に戦った仲間なんですから」
「はぁ? ゲームの話でしょ? ともかく話に戻るわよっ!!」
やはりあくまで博士はこれまでゲームとしか見ていないようだ。
当然と言ったら当然だけど……。俺も正直未だ……。
う――ん。ま、まぁ今は強化の話をしようかっ!
「ともかく私としては体力を上げたいわね。いや、筋力も良いか? もっと重い武器を持たせたいし」
「重い武器ですか?」
「アンノウンランスと同等威力の武器を再現するとしたら艦船クラスの重量が必要になるからね。」
「あ、あの槍はそんなに強いですかニャン?」
「ええ、そうよ。あの武器は現状もっとも強力な武器。なんたってアンノウンを使ってるんだから」
「アンノウンって何なんですかニャン?」
「うるさいっ!!」
「す、すいませんニャン……」
博士はどうやら気に入らない言動には一喝して黙らす癖があるようだ。
もう駄目だよ。そんな言い方してたら友達失くしますよ。まぁ俺も友達居ないけど……。
「駄目ですよ博士。断わるとしてももうちょっと穏便に」
「うるさいわねっ!! 機密を知らない奴にベラベラ喋る訳にはいかないでしょっ!!」
「俺には話してますけども」
「あんたはもう私の助手で、奴隷なのっ!! 関係者でしょっ!!」
あら、そうなのか。ひえ――。決定してしまった。
「ともかくステータス振りよ。ふむふむ。運や技量なんてステータスもあるのね」
「あまりウォーカーには重要なステータスとは思えませんけど」
「運か……。発見力ってなに? 魔力や呪力? いらないわ」
「う――ん。何に振ろうかしら」
どうやら悩んでいるようだ。博士って意外とゲームとかやるのかな?
後で聞いてみよう。仲良くなれるきっかけになるかもだしね。
「よしっ!! 決めたわっ!! まずは体力に振るっ!!」
「体力ですか? それはなぜ?」
「やっぱり積載量の増加は大きいわっ!! でっかい武器持ちたいしねっ!!」
「ふふふ、そうなると筋力も必要になるんじゃ?」
「なるほど。なら筋力と体力を同時に振るわよっ!!」
「はい分かりました博士」
「早くなさいっ!! ほらほら」
博士は何気に楽しそうだ。こうしてみると普通の女の子だな。
やはり子供がしっかり子供してるのは見ていて気持ちが良いなっ!!
そんな訳で博士の言葉に従いステータスを振った。
レベル 24。
生命力 1。
集中力 1。
持久力 1。
体力 12。
筋力 12。
技量 1。
魔力 1。
呪力 1。
運 1。
ステータス振りとしてはこんな感じ。俺のキャラとは違いウォーカーは最初全て1だった。
なので他のステータスは1で、上げた奴がちょっと目立ってるかな。
そんな訳でウォーカー君のレベルは24。筋力と体力、丁度12で半々だ。
「出来ましたよ博士。ウォーカ君強くなりましたねっ!!」
「何言ってるのよウォーカーは最初から強いのよっ!!」
「ダッシュ関連の仕様は致命的なのですぐ直してくださいね」
「そこは……。しょうがないわね。散々言われたし」
あら素直。流石に部外者のアニエスさんにも同じ欠陥を指摘され考えを改めたのだろう。
「あの仕様無くなるでゴワスかっ!? 良かったでゴザルっ!! あれ使い辛かったでゴザルよっ!!」
「うるさいわねっ!! 直せば良いんでしょ直せばっ!!」
「ところでなんであんな仕様になったんですか?」
「シュッと前にダッシュした方が使えると思って……」
「それなら俺のキャラみたいにローリングを入れてみたら?」
「あとジャンプも棒立ちジャンプしか出来ないから使いにくいです」
「注文が多いわねっ!!」
「テストパイロットですから」
「なによ……。こ、この」
ふふふ。むくれてるむくれてる。ふぅ。しかしアレだな。ちょっとお腹空いたかな。
そう言えば朝ごはんまだ食べてないなぁ。
「よし、それじゃあ博士。ちょっと給料前借りさせてください」
「はぁ、何言ってるのよ」
「朝ごはん食べましょっ!! 色々買ってきますよっ!!」
「何言ってるのよっ!! 食事はしないって言ったでしょっ!!」
「俺が食べたいんですよ。だからついでに、一緒に食べましょう」
「朝ごはん。何食べたいですか?」
朝ごはん。一緒に食べましょうよ。博士、何食べたいですか?
彼女が言った言葉は。
「オムライス……」
うん。
子供らしくてよろしいっ!!




