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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
激闘、バイト生活っ!!

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第39話 フロートユニットでスイスイ。いやぁ現代技術は最高ですなぁっ!!


 「うぉおおおおおおーっ!! こわ。怖いっ!! 怖いですぅううニート様ぁあああっ!!」

 「あらら、ちょっと高く飛び過ぎだね。えーっと。どうやって地面に降りるんです? 博士」


 「そこの下向いてるボタン押しなさい。まったく調子に乗って高度上げすぎるから」

 

 「うぁあああああああああっ!! 高いっ!! 高いぃいいいいいっ!!」

 「怖いよぉおおおおおおっ!! お姉ちゃぁあああんっ!!」

 

 「だからボタン押せって言ってるでしょこの低能共がっ!!」

 

 あれから博士のフロートユニットを借りて画面の2人に操作させた。

 3人用のフロートユニットは実に景気よく飛んで。


 結果。「うわあああああああっ!! 飛ぶとは聞いていましたけどここまで飛ぶとはっ!!」

 

 「い、異世界の魔法驚異的すぎるっ!! な。なんか寒くなってきましたぁあああっ!!」


 結果。なんか凄く上空まで飛んでしまった。

 雲まで飛んでいけそうっ!

 なんてロマンチックに言っていたコリーヌちゃんが本当に雲で行けるか試したら。


 本当に雲まで飛んで行ってしまい慟哭している。


「うわあああああああっ!! 雲ってもっとフワフワしてて、綿菓子みたいだと思ってたのにぃいい」

 

 ゲーム内の俺にしがみつきながらコリーヌちゃんが震えている。

 姉のアニエスさんもへっぴり腰だ。

 そりゃあそうだろう。何の防護も無しに生身で宇宙にまで上がるなんて。

 俺だってそんな事ごめんこうむる。宇宙怖い。ほんとマジで。


 「理論上宇宙まで行けるわ。展示する際には緊急用に紐を付けてたけど、今はもう外してるからどこまでも飛ぶわよ」


 「お姉ちゃんお姉ちゃんっ!! 早く下げてっ!! 地面にしてぇええええっ!!」

 「下のボタン。下のボタン……。うわぁあああああっ!! どれぇええええっ!?」

 「あららら」



 ◇ ◇ ◇



 「はぁ……。はぁ……。」

 「だ、大丈夫ー?」


 「し、死ぬかと思いましたっ!! な、何なのですかこれはっ!?」

 「うううううぅぅ。もう雲まともに見えなぁああい。あんな霧みたいなものだったなんて……」

 

 あれからしばらくして、ようやく彼女達が地上に戻ってきた。

 その後ユニットを動かし街道を進むが、以前のような高高度ではなく地上スレスレを這うように進む。


 「なによ、さっきみたいに雲まで飛んで移動すれば良いじゃない。クスクス」


 博士が煽るような口調で彼女達を挑発する。


 「あ。あ……。も、もう結構です……。博士様の実力。お、おみそれしました……」

 「本当に雲まで飛んでいくなんて……。い、異世界の技術。恐るべきです……」


 「あははっ!! そうでしょうそうでしょうっ!! もっと私を敬う事ねっ!!」


 ある意味での技術展覧が成功し、博士が腕を組みながらふんぞり返る。


 「あはは、中々リアルな反応を見せるじゃないっ!! 流石レイジ。良い仕事するわ」


 「あはは……」

 「こ、光栄ですぅ……」


 初手で異世界召喚する奴なんて殺す。なんて言っていたからだろう。

 2人は博士にかなり遠慮しているようだ。

 まぁ、それ以外に色々と痴態も晒しすぎたかもしれないが……。


 「ふんっ!! それで? 使い心地はどうよっ!?」

 「そこの小さいのっ!! 答えなさいっ!!」

 

 博士はコリーヌちゃんを指さして宣言した。こちらの宣言などあちらの彼女には届かないが。

 小さいの、と付け加えた事で誰を指名したか分かったのだろう。コリーヌちゃんが声を上げる。


 「わ、私ですか。えっと春美博士、さま……」

 「様はいらないっ!! 春美博士と言いなさいっ!!」


 「す、すいません……」

 「しかし声だけだから時々誰が何言ってるか分からなくなるわね」


 「よしっ!! アニエスとコリーヌって言ったわねっ!?」

 「は、はい春美博士っ!!」


 「今からアニエスは言葉の最後にゴワス。コリーヌはにゃんと付けなさいっ!!」

 「は、はい?」


 「声しか聞こえないから円滑なコミュニケーションが出来ないでしょっ!!」

 「だからこそ、こういう時は特徴的なイントネーションで違いを見せるのよっ!!」


 「ほら、早くなさいっ!! アニエスっ!! 分かったっ!?」


 「え、あの……」

 「ゴワスっ!! 言ったでしょっ!! 言いなさいっ!! ゴワスっ!!」


 「わ、分かったで……ゴ、ゴワス……」

 「よしっ!! コリーヌっ!!」


 「分かりました……。にゃ、ニャン」

 「俺も何か特徴的な語尾が必要ですか?」


 「目の前に居るんだからいらないでしょっ!! こいつ等だけで良いのっ!!」


 さいですか。まぁ博士はその自信満々な口調で分かりやすいから良いけど。

 でも確かに俺も2人を声色の違いで判断しているが、たまにどちらの発言が分からない時があった。


 面と向かっての発言ではないから、やっぱり色々混乱してしまう。

 だから語尾を付けろ、とは。なるほど、流石博士。やっぱり博士号取ってるような子は違うなぁ。


 「よしよし、これで分かりやすくなったわね。はいアニエス発言なさい」


 「え、え……。あのぉ……。これで良いんでゴワスか?」

 「なんだか恥ずかしいよぉ。お姉ちゃん……。ニャン……」


 「あははっ」

 「これで良しっ!! んでフロートユニット。使い心地はどう?」


 「えっと。最初はビックリしましたけど、なんというか凄く早く進むし……。これがあれば早く街に進めるかもっ!! ニャンっ!!」

 「これが異世界の魔法……。衰退している。ような事は聞きましたが、やはり侮れない力を持っているんですね。ゴワス」


 ちょっとぎこちないけど、確かにこれは発言が分かりやすいっ!!

 でもゴワスはちょっと……。もっと可愛い。ありんす。とか、ですわー。とか。

 う――んどうだろ、まぁ下手に博士を刺激するのもアレだし。今はこれで良いか。

 

 しかし、アレだよなぁ。もう随分進んでるけど。


 「人里、まだまだ無いけど。えっと、ここはなぜこんなに人が居ないんだい?」


 やっぱりそれが気になってしまう。街道とは言うが、道は酷く荒れ果て草は生え放題。

 まだ辛うじて道であると分かるが、もう少しすれば自然と一体化するだろう。

 これほどの惨状。一体何がどうなってこうなったのか。俺はそれが聞きたくなった。


 「ここは、何かあったのかい?」

 

 「はい。ここは魔族の侵攻によって滅びてしまった国ですから、ニャン」

 「およそ20年前。魔族が闇の勢力と結託し、このアルテナ王国に侵攻。そして」


 「打ち滅ぼしました。だからこの国には人が居ない。のでゴワス」

 「ふ――ん。でも他の国はまだ人が居るんでしょう? なら良いじゃない」


 「ウチなんてもう国が無いんだから。皆死んだからどこも森になってるわよ」

 「帰れる国があるだけ幸せ。価値観の違う他国がまだ存在する事に感謝しなさい」


 「あっ」

 「そうですね……。まだ私達には沢山の国がある。それは幸せな事なのかもしれませんね。ゴワス」


 うわっ!! 悲しい話をしてたのにこっちの方が状況悪かったっ!!

 まぁ、まだアニエスさん達は状況良さそうだしねぇ。こっちはもう。色々酷かったから。


 「あの、それで春美博士ニャン」

 「あら、なによ」


 「それで、春美様達に何があったのですか。ニャン」

 「ちっ」


 コリーヌちゃんの言葉を聞いて明らかに博士が機嫌を悪くする。


 「あ、いや、その……」

 「なに? 私達がどんな理由でどんな風に死んだか。そんな事聞きたい訳?」


 「は―――ん、ふ―――ん。それで? 私達をあざ笑おうって言うのねっ!!」

 「そうやって自分達がまだマシだって私達を踏み台にしてっ!!「あ――。コリーヌちゃんはそんな事を思って聞いた訳じゃなくてー」


 「ただ、興味があったんだよね? ね、コリーヌちゃん」

 「は、はいっ!! た、ただ興味があって……。ニャン」


 「うるせぇえええええええええええええええええええええええええええええええ――っ!!」

 「きゃっ!!」


 通信機越しに彼女が絶叫する。そりゃあもう大きい声で。それから何某と暴言を繰り返し。

 

 「ほら。大丈夫だからね。怖いのはもう居ないから……。大丈夫、大丈夫……」

 「ううう。ぐぅううう……。ひぐっ。ひぐっ」


 泣いちゃった。なもんでまた俺が彼女をあやしている。


 「す、すいません……。すいません春美様……。ニャン」

 「これは……。うん、すいませんもう聞きません。ゴワス……」


 そんな訳で俺達の間にちょっとしたNGワードが出来たことを確認しつつ。

 俺達は、道を進み続けた。


 そして俺と博士は。


 「う、ん……」

 

 「あ、アレ? ああ、いつまにか眠ってた……」


 「あ、おはようございます。こうして朝に会うのは初めてですねニャン」

 「ああ、いつもは朝には出勤してしまわれていたからゴワス」


 どうやらいつのまにか眠ってしまっていたようだ。

 彼女達の言う通り。最近は忙しくて朝に彼女達と会う事はあまりなかった。


 会議室は屋内。だから外の様子は分からないが、しかし前面に広がるスクリーンの大画面。

 そこから見える眩い陽光が、現在が早朝であるという事を明確に教えてくれていた。


 「君達は寝ないで大丈夫なのかい?」

 「ふふふ、そうですね。いつもはこの時間あの空間で眠っていましたからニャン」


 「そっか。昼夜逆転してたもんねぇ。これから眠る?」

 「いえ、イケる所まで行こうと思います。早くニート様に我らの世界を紹介したいで。ゴワス」


 「あはは、そっか。君達の世界を見るのを楽しみにしてるよ」

 「距離的に考えれば、もう少しな筈ですっ!! やっぱり異世界の技術は凄いですニャンっ!!」


 ふふふ。コリーヌちゃんの方は少し語尾を使いこなし始めたみたいだ。

 20日間移動し続けろ。

 なんて言われた時はどうしようかと思ったけど、この調子なら彼女達以外の人達とも……。

 うん?


 「う、んん? なぁにぃいい?」


 春美博士が起きてきた。先ほどまで穏やかに眠っていた彼女。

 そんな彼女がなぜ目覚めたか。それは。


 「音……。何の音。ですニャン?」

 「この音は……。ゴワス」


 画面の外で、何やら大きい音が……。

 まるで地面を揺らす「何か」が暴れているような。そんな音が……。


 「魔獣だニャンっ!!」

 

 コリーヌちゃんの声が合図のように、街道沿いの森から「何か」が顔を出す。

 それは森の木々よりも明らかに大きい。体長を推測すれば30mはあろうかという巨体。

 竜のような頭。太い胴に太い足。長い尻尾……。それは、俺が戦ったゴジュラ型ロボに似ていて。

 

 これが。


 「魔獣でゴワスっ!! こんな所にっ!!」

 「お姉ちゃん、アレ見てニャンっ!!」


 彼女の指を指した方。そこにカメラは向ける。

 そこには森を疾走する一匹の馬が。


 「人間が追われてるっ!?」

 「なに、なんかのイベント?」

 

 春美博士は画面の中の事をゲームと思っている為反応が薄い。

 しかし画面の中に居る「それ」には気付いたようで。


 「なるほどね」

 「うわぁ。デカ……。え。これどうすれば」


 「助手、アレは持ってきなさい」

 「え?」


 アレって。なんだ?


 「分からないかしら? 丁度良いじゃない。これは良いシミュレートになるわ」

 

 彼女は、何を言っているんだ?


 「ウォーカーを出しなさいっ!!」


 「さぁっ!!」


 「怪獣退治の始まりよっ!!」


 彼女が画面の中に指を指す。そう、その「怪獣」に。

 怪獣。それを退治するのが、俺の仕事。


 ああ。


 どうやら、忙しくなりそうだ。

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