第38話 なんか良い手、ないかなぁ。うん? ふろーとゆにっと?
「うぅううん、ママぁああ……。おっぱあぁぁい……」
「う――ん。何か良さげな物ないかなぁ」
「あの、大丈夫ですか? ニート様……」
「ああ、大丈夫だよ。ともかく2人はそこで待っててね」
「は、はい……」
アニエスさん達を焚火を使ってエンデールに残し、俺は施設の中を探索する。
彼女達とは通信機を使って意思疎通可能だ。とっても便利通信機っ!!
っと言う訳で通信機越しに彼女達と通話しながら、俺は施設を歩く。
流石に20日も旅を続ける訳にはいかない。
何か使えるものは無いかと施設の中を見て回っているのだ。
懐中電灯を使って。
ふふふ、まるでゲームみたいだ。ホラーゲームにはよくあるシチュだよなぁ。まぁこれは現実だけど。
施設内部はすっかり明りが消え真っ暗だ。時間を見れば夜の9時。そりゃあ暗いだろう。
施設内部には誰も居ない。不用心。だとは思うがそも今の世界で泥棒みたいな事は早々起きない。
まぁ今は新しい世代の中で犯罪に落ちる者も居るらしいが。それもそう目立つわけでもない。
それい軍事施設の機密など奪ったところで売る先などほぼない。
悲しい事だが衰退という名のセキュリティは強力に機能しているのだ。
自然環境もしかり。あれから20年。世界は急速に「裏山」化している。
どこもかしこも裏山。裏山。で、でもいつか開発しちゃんだからねっ!!
なんて冗談はともかく。何か良い物はないかなぁ。
「うぅぅぅん……。あっ」
あっ。春美ちゃん起きた。
「な、こ、こらっ!! 貴様何してるっ!!」
いつもの調子を取り戻し、背負われている春美ちゃんが俺に抗議する。
先ほどまでの痴態はぁぁぁぁ。うんっ!! 忘れたっ!!
っと言う訳で忘れたので彼女は戦術歩行兵器研究所の所長、三日月春美。
博士だ。
「いえ博士。ちょっと不用心なので見回りを、と思いまして」
「見回り? ああ。そういえば警備の奴も首にしたなぁ」
イカンでしょ。
なーんか館内に誰も居ないと思ったらまさか警備の人間もクビにしていたとは。
不用心すぎでしょっ!! 機密盗まれたらどうすんだっ!!
まぁ盗んだところで使う先がね……。ははは……。
ともかく警備がてら何かあちらで使えそうな物を探そうか。
ん? つもりそれって俺が泥棒って事? あ、いやそんなつもりはなくてですね。
「ともかく見回りならなんで私を担いでやってるのよ」
「いや、1人にさせるのは不用心かと思いまして」
「私は大丈夫よっ!! いったいいくつだと思ってるのっ!!」
12歳でしょ? いやぁ。普通に危ない危ない。
「ともかくさっさと降ろせっ!!」
あらら、まぁそういうなら。俺は彼女を背から降ろすと、彼女は大地に立つ。
改めて見てみると小さい。彼女の身長は120センチと言ったところか。
彼女より1歳下のたかしくんは150センチあるし、そうしてみるとやはり栄養不足を感じる。
ここには食堂もないみたいだし、やっぱりサプリだけのご飯って限界あるよなぁ。
「博士、なんかお外で食べに行きません?」
「ああんっ!? なんだってっ!!」
「いえ、ちょっとお腹空いたんで。ついでにどうかなーって」
「はぁっ!? 何を言ってるっ!! そんな暇あるかっ!! 今すぐ実験を再開するんだよっ!!」
「いやぁ、でもお腹が空いてるから力が出ないと言いますかぁ」
「はぁっ!? 薬を飲め薬をっ!! 空腹なんて薬で抑えられるんだよっ!!」
「やだ」
「はぁああああああああああああああああ――――――――っ!?」
あらうるさい。あとちょっと臭い。
ご飯食べる前にちょっと銭湯でも連れて行こうかしら。
お金は……。よしちょっとある。
じゃあ。
「じゃあ行きましょうか博士」
「ふざけるなっ!! ふざけるなあぁああああああああこのクソガキがぁあああああああっ!!」
◇ ◇ ◇
「おいごろぁっ!! なんで私が風呂に入らなきゃならんのだぁっ!! さっさと行くぞぉおおっ!!」
「あ、湯舟に入る前にはしっかり体洗ってくださいね。これマナーですよ」
「あ、石鹸あります? 体しっかり洗ってくださいね。聞いてます?」
「う、うるさいっ!! く、くそぉ……。なんか黒い汁が体から溢れて来るんだけど」
「し、しっかり洗ってから湯舟入ってくださいね」
◇ ◇ ◇
「なんだこの食い物はっ!! こんなの食べたら体悪くするぞごらぁあああああっ!!」
「時間が時間だけにラーメン屋さんしか空いてなくて。でも美味しいですよ半チャーハン」
「ラーメンかチャーハンどっちかにしろっ!! こんなの食ったら腹壊すぞっ!!」
「博士はもうちょっと食べるべきですよー。暑かったらフーフーしますけど?」
「そんなの自分で出来るっ!! ふざけやがってぇえええええっ!!」
「あら――。そうですか。では食べましょうか」
「ラーメンが熱いっ!! なんとかしろっ!!」
「あら……。ならフーフーしますか?」
◇ ◇ ◇
「う――ん……。むにゃむにゃ……」
って訳で研究所に戻ってきた。
ラーメン屋で食事を取った後、彼女は眠くなってしまったのか俺の背でスヤスヤと寝ている。
そのまま応接室に戻り、つけっぱなしのテレビにお持ち帰りした炒飯と餃子をテレビに入れた。
おまけって事で杏仁豆腐も一緒に。
「これが「中華」ですか? へーどんな味がするんだろう楽しみですっ!!」
「通信機越しに話は聞いていましたが、なるほどこれが中華料理。どんな味するのだろうな」
「電子レンジがあれば良かったんだけどここにはないから。ちょっと冷めてるけどごめんねぇ」
「いえいえ、まだ暖かいですよ。早く食べようお姉ちゃんっ!」
「ああ、そうだな」
そうして彼女達に買ってきた中華を食べ始める。どうやら喜んでくれたようだ。
結構お金使ったけどぉ。えっと、今いくらある?
ああん。3円……。あ、明日からどうしよ……。
ま、まぁ買っておいた缶詰あるからそれで。でも若い子にはなるべく暖かい物を食べて欲しいなぁ。
自炊するか……? 米くらいなら家にあるからなぁ。
まぁ今はともかく。
「使えそうなもの、探そうか」
そう思い立ち再び研究所の中を探す。俺の背に担がれながら春美ちゃんはいまだ眠っている。
見た感じ、かなり気分が良さそうだ。変な寝言も言ってないし。やっぱり身支度整えたからかな。
黒だの茶だので汚れきっていた彼女の白衣はランドリーで洗って乾かした。
銭湯でしっかり体も洗わせた為、先ほどまで感じていた強烈な匂いも抑制されている。
もしかしたらここの職員がストを起こしたのも彼女のその匂いが原因だったのでは。
とも感じてしまう。それだけ臭くて不健康な感じだった。改善してくれて嬉しい。
俺はそんな身綺麗になった彼女を背負いながら再び館内を探索する。
なにかこう。使わなくなった古い移動の為の道具とかあればなぁ。
そう思いながら館内を物色する。何か見つけたら博士に貸し出しの許可を貰おう。
許可してくれるかは分からないけど、聞いてみるだけ良いだろう。
そうして見て回る中で、恐らく展示会で広報する筈だった物だろう。
それらが色々と保管されている場所に辿り着いた。
そこには様々な技術体験用であろう代物が展示されており、その中に。
「反重力型フロートユニット……」
「3人用……」
なるものを発見した。
見た感じ、なんかフワフワ浮いてるような。これって……。
「興味あるのかしら?」
「あら?」
背中から声が。どうやら春美ちゃんが起きたようだ。
「はい。ゲームの中に入れる乗り物を探してまして」
「堂々と窃盗宣言をするなっ!! ふざけてるのかっ!?」
「いやぁ。貸してくれないかなぁって話で」
「ふん」
「反重力型フロートユニット。これ使えるんですか?」
「使えるわよ。本当は展示会の目玉にするつもりで置いてたんだけどね」
反重力の乗り物なんてきっと子供が乗ったら大喜びだろう。
デザインも丸っこくて可愛らしい。きっと子供向けにって事でデザインしたんだろう。
彼女なりに展示会の事を考えて設計した。他の色々な展示物も、そういった苦労が感じられる。
「展示会。出来なくて残念でしたね」
「ふん、どいつもこいつも私の偉大さを分かってないのよ」
「まぁ食堂もシャワールームもないからここ」
「うるさいわね。そんなものなくても働けるの」
「でもあった方が気持ち良いですよ」
「そんなもの求めてないわ」
あら――。相変わらずストイックでいらっしゃる。
「でも、流石に気を遣わなさ過ぎたかもね。皆逃げちゃって。まったく」
「戻って貰ったら?」
「いやよ……。去ってた奴なんて戻ってきてもまた出てくじゃない」
「その為の待遇改善かと」
「うるさいわねゴミの癖に。超天才の私に指図しないで」
「ごもっともで。ふふふ」
良かった。調子が戻ってきたようだ。でも前よりはちょっと穏やかかな。
ご飯も食べたしお風呂にも入った。しっかり眠ったしね。
良きことだ。良きことだ。
「これ」
「はい?」
「これ、持ってって良いわよ」
「あら、良いんですか?」
「良いわ。どうせ展示会は中止だしね」
「わぁ」
やったっ!! なんか謎の乗り物の貸し出し許可が出たぞっ!!
これなら旅の短縮も出来るかもっ!!
でも。
「結構大きいですねぇ」
持ち運ぶ。という事を考えたらそのユニットはかなり大きいように感じた。
3人用と書かれていた通り、かなりサイズが大きい。
応接室にあったテレビの中に収まる範囲ではないだろう。
「それなら」
「良い物があるわよ」
そうして彼女に連れられた先。そこには大きな吊り下げ式のスクリーンがあった。
近くにはプロジェクターも設置されている。そのスクリーンは、大きい……。
ゆうに10mはあろうとかという巨大なスクリーンだ。何かの会議に使う機材か何かだろうか。
「プレゼンとかによく使う物よ。これならアレ、中に入れる事が出来るんじゃない?」
なんと。この形、理想的じゃないかっ!! これなら何でも沢山入りそうっ!!
「でもその代わり」
うん?
「その代わり、今後あんたは私の助手として働く事ね」
あら。
「私の手足となって、私の為に働く。その条件を飲む事が出来るなら」
「このプロジェクター。使わせてあげるけど」
「どう?」
彼女の提案。頭の良い子らしい。実に魅力的で己の利益にもなる提案だ。
俺は彼女の提案を……。
◇ ◇ ◇
「えっと、これは……。どう動くのですか?」
「こ、この丸い棒を引くんじゃない。あ、ほらお姉ちゃん動いたっ!!」
受けちゃったっ!! いえ――い反重力型フロートユニットゲットだっ!!
「よし、受け取ったわねっ!! これであんたはもう私の奴隷っ!!」
「今後は、私の為にあくせくと働く事ねっ!!」
「分かったっ!?」
「はーーい。博士ーー」
「返事が弱いっ!! もっとキビキビ返事するっ!!」
「はーーい」
「このっ!! なんて能天気なやつなのっ!!」
なんだか妙な事になったけど、彼女の力は今後ゲームをクリアする上で大いに役立つだろう。
これから何をされるかちょっと不安だけど。
「わわっ!! 本当に動きながら動いてる。す、凄いですよニート様っ!!」
でも、きっとなんとかなるだろうっ!!




