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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
激闘、バイト生活っ!!

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第36話 えっとぉ。つまりこれは長旅って事ですかぁ?


 「いやぁ、しかしアレだねぇアニエスさん」

 「ママぁ……。うぅん。ママぁ」


 「あ、はいなんですか。えいゆ……。ニート様っ!!」

 「もうだいぶ進んでるけど、次の街までどれくらいなの?」


 「ううん……ママぁぁぁあ。ちゅぱちゅぱ」

 「次の街まで、ですか?」


 「うんうん。実は君達と会話できるようになったら、それを一番聞きたかったんだ」

 

 「ここから人家がある所まで、あとどのくらいかなーって?」

 「ああ。えっと……。ここからですと」


 「うんうんっ!! どれくらい?」

 「あ、えっと。待ってくださいニート様。今魔法で地形を把握しますから」

 「ああ、そうだな。よろしく頼むコリンヌ」


 「はぁっ!! マッピングイメージっ!!」


 うわぁ。なんか横文字言いながらコリーヌちゃんが魔法を唱えて光った。

 これが魔法かぁ。まぁ召喚だのって概念があるくらいだし、魔法くらいそりゃあるよね。

 んでんで? 目的地まであとどれくらい?


 「分かりましたニート様っ!! 目的まであと20日以上歩けば付く筈ですっ!!」


 うわぁ。20日かぁ。そういえば最初のボス倒すまで1か月近くかかったっけ。

 それは考えれば……。妥当な数値、だよなぁ。


 「えっと、すいません……。色々と不都合が重なり。かなり遠くの位置に召喚されてしまって」

 「そ、それで我々がニート様を探しに来たのですっ!! しかしやはり慣れない旅で色々ありまして……」


 「良いんだよぉ。ご苦労様だったねぇ」

 「ご迷惑おかけして……。も、申しわけありません」


 「いやぁ。俺は別に迷惑って訳でもなかったから。召喚されてないし」

 「あ、ああ。それはそうでした、ね」


 「でも君達は大変だったろうねぇ。無事に合流出来て良かったよ」

 「ママぁ……。抱っこ。抱っこ、ママぁ……」


 「あらあら。こらこら引っ張たらいかんよ夏美ちゃん」

 「ママぁ。ママぁああああぁあ……」


 「あらら、仕方ない。今ちょっと抱っこするから待っててね。うぉぉぉ、臭い」

 「ママぁ……ううぅん、ちゅぱちゅぱ」


 「ああ、ワイシャツのえりを齧ったらイカンよ。うぅ。口臭が。歯しっかり磨いてる?」

 「ニート様は」


 うん?


 「ニート様は穏やかな性格の方ですね」

 「そうかな」


 「はい、なんというか。落ち着いてらっしゃいます」

 「たかしくんが小さい頃はこうやって預かってたから、こういうのは慣れてるんだよ」


 「失礼ですがご結婚は?」

 「あはは、残念ながら縁はなかったね――」


 「そうなのですか? ニート様ならきっと良縁が」

 「まぁ無職だったしね」


 「あ、うん……」

 

 コリーヌちゃんが俺の言葉で固まった。そりゃあそうだ。

 どんな世界でも無職男など眼中にない。子供なんて勿論。結婚なんて無理。

 だからこそたかしくんが生まれた時は嬉しかったな。

 独身中年は他人の子供に優しいというデータがあったらしいし、俺もその範疇なのだろう。

 

 「えっと……。なぜ仕事をなさらなかったのですか?」

 「う――ん? まぁ面倒くさいし」


 「ヴェっ……」


 アニエスさんがカエルみたいな声を上げる。

 そりゃあそうだ。必死の想いで見つけだした英雄が無職のめんどくさがりだと気づいたら。

 あははっ!! 召喚の儀さん。本当に俺で良かったかな? ふふふ。


 「でもまぁ、ゲームは好きだから。それは欠かさずやってたかな」

 「ゲーム? ゲーム、とは?」


 ついに来ました核心に。そう俺、こと今君達の世界に居るそれは。


 「ゲームってのは画面の中のキャラを動かして戦ったり冒険したりする活劇の事だよ」

 「君達の目の前に居る彼はそのゲームで動かす筈だった存在って訳」


 伝わりやすいよう頑張ったつもりだけど。伝わった、かな?


 「えっと……。はい?」


 アニエスさんは駄目か。コリーヌちゃんはどうだ?


 「つまり、これは遊戯の為に作り出された人形であると?」


 お、ちょっと伝わった、かな?


 「そうだね。そういうゲームのキャラなんだ」

 「ではこの人形の顔は貴方とは違うのですか?」


 「いやぁ。それはそっくりだけど」

 「あ、そうなのですか?」


 「うん、ふふふ。無精ひげで髪モジャで、結構不格好でしょ」

 「いえ、そんな事ありませんよ」


 「大変精悍で、立派な御姿です」


 あら、お世辞かな? ふふふ。それでも嬉しいな。


 「ありがとう。君達もとっても可愛いよ。こっちの服似合ってるよ」

 

 「着心地が良い服ですね。ちょっと小さいですが……。お、主に胸の部分が」

 「わ、私のは……。ちょ、ちょっと大きい気がします」


 「あらそうか。ごめんねサイズ分からなかったから」

 「いえ、新品の服など。高かったでしょう。本当にすいません」


 「いやぁ、そうでもないよ。近くのニットリで1980円くらいだったかなぁ」

 「そ、それって安いんですか?」


 「それなりに安いかな。ともかく身綺麗になって良かった」

 「いえ。本当にお世話になってしまって」


 「良いんだよぉ。他に何か欲しい物あったら言ってね」

 「あ、指輪、高く売れましたかっ!?」


 あら――――。


 「ま、まぁ……。そ、それなり。にぃいい――?」

 「それは良かったですっ!! お役に立てたなら良かったっ!!」


 ほ、ほんとは智代ちゃんにあげちゃったけど。こ、ここはしっかり売ったって事でっ!!

 あ、あはははは。


 「ママぁ……。おっぱい。おっぱい……」

 

 あらあら、俺からおっぱいは出ないよ。しかし随分幼児退行してるなぁ。

 やっぱり仕事ってストレス溜まるんだなぁ。

 ほんとう。ニートで正解っ!! あはははっ!!


 「えっと。春美さまは……。12歳なんですよね。お母さまの方は……」


 ええ? ◇ ◇ ◇。


 



 「…………………………」

 

 「あ、はい……。聞かなかった事に」


 言いにくい事言われたら黙っちゃうのは駄目かな。

 うん、しっかり返答しよう。ちょっと言いづらいけども。


 「春美ちゃんの世代は特定の親が居ない世代だから」

 「え?」


 「彼女が言ってるのはたぶん育て親の事だろうね。今どうなってるのかは分からないけど」

 「親が居ないとは? 先ほど言っていた人造で作ったという……」


 「そうだね」

 「世界で人口が400万しかいないと」


 「そうだね」

 「大きな。戦いがあった、と」


 「そうだね」

 「戦いとは」


 「どんな戦いがあったんですか?」


  大きな戦い。それは。


 「所長」


 うん?


 「所長、居ないんですか?」

 

 あ、この声は。


 「所長。ここですか? あっ」

 「あはは」


 いや――。どうもどうも。


 「京介くん。帰ったんじゃないのかい?」


 あ。


 嫌だなぁ。


 俺の本名は。


 言わない約束ですよーっ!! レイジさんっ!!

 まぁそんな約束してないけどぉ。


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