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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
激闘、バイト生活っ!!

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第35話 空気悪っ!! 空気悪いねぇっ!! あわわ。

 

 「…………………………」

 「…………………………」


 「うぐぅ……。私は。私は。ううう……」

 「おお。ほら、大丈夫だからね。泣かないで。ほーらほら」


 「ふ、ふざけるなっ!! 私はもう12だぞっ!! 何様だっ!! 私を膝に置くなんてぇっ!!」

 「うん、うん。大丈夫。大丈夫だよぉ。君は頑張ってるから」


 「馬鹿にすんな……。馬鹿にぃいいいいっ!!」

 「大丈夫。大丈夫だからねぇ」


 「うぐ、うぐぅ……。私は、私は……。死ね……死ねぇっ!!」

 「大丈夫、誰も死なないから、死なないから大丈夫だよぉ」


 「う、ううう……。なんだよ。馬鹿ぁ……」


 「…………………………」

 「…………………………」


 うぉおおおおおおおおおおおおおおお――っ!!

 空気が……。空気が悪いっ!!


 アニエスとコリーヌちゃんはあれから何も喋らなくなったし春美ちゃんはぐずってる。

 今は椅子に座りながら膝に乗せてなだめてる。


 すっごい泣いてるし、新品のスーツがもう涙でグショグショだ。鼻水もあるぞっ!!

 ワンワンと泣きながらワイシャツで涙を拭っている。たまに鼻水をスーツで拭ったりもする。

 俺は片手でコントローラーを握り、もう片方の手を彼女の頭に置いて撫で続ける。

 お風呂に入ってない人間のすっぽい頭の匂いが鼻腔をくすぐるけど、今は非常時だ。仕方ない。


 「うう……。わたしは……人類の今後の、ために……」

 「そうだねぇ。皆君に感謝しているよ。頑張ってくれてありがとうね」


 「うん……。うん……。私は頑張ってる。頑張ってるよね。お母さん……」

 「うん、頑張ってるよ。春美ちゃんは偉いねぇ」


 「そうでしょ? ママ……」

 

 小一時間ほどぐずっていたけど、今はなんとか落ち着いてきた。

 やれやれ、子供のヒステリーって収めるまで時間かかるよねぇ。


 たかしくんの時も大変だった。ママ、ママって預かった時に泣いて。

 それで通報されて警察が来たり。ふふふ、今は懐かしいかつてのたかしくんだ。

 いつまにかニート野郎だろうって罵ってくるようになったけど、それでも俺の可愛い甥っ子だ。

 そういう訳で、子供をあやすのはそれなりに得意なんだ。

 まぁあやすにしても春美ちゃんはちょっと成長しすぎたけど。


 「ママ……。ママ。ううぅん……。」


 あらら、指舐め始めちゃった。幼児退行かなにかかな?

 こういうの後で黒歴史化してうわあ―っ!!ってなる奴だからしっかり無かった事にしてあげないとね。


 「大丈夫、春美ちゃんは偉いねぇ。ママ嬉しいよ、夏美ちゃんは良い子。良い子だねぇ」

 「うん、ママ……。私頑張るよ。頑張るよママ……。皆の為に。皆の……」


 「みんな、の……」


 あ、寝た? よしよし、こうなったら儲けものさ。

 ふぅ。子供をあやす先のゴールはその子供が寝る事だ。って訳でなんとかゴール。

 でもこのままじゃなぁ。なんか毛布とか……。まぁスーツで良いか。


 俺は近くの椅子を2つにつなげ、そこに彼女を置いてスーツを被せた。

 彼女はスースーと寝息を立てながらその場で寝入っている。


 「あっ」


 しかしその場を離れようとした瞬間。何かが引っかかる。

 彼女が俺の片手を掴んでいるのだ。


 「ママ……。ずっと、一緒……」

 「あらら」


 俺は掴む彼女の手をそのままにしながら、足を思いっきり延ばしてコントローラーを引き寄せる。

 そのまま傍に寄せ、床に置いたコントローラーを足で固定しながらスティックを握る。


 「よし」


 これで、移動を続ける事に成功したぞっ!!


 「ふぅ」


 そうして作業を再開する。見たところ、画面内の彼女達が何かを言っている形跡はない。

 先ほどの言葉がやはり突っかかっているのだろう。


 俺はどうすれば良いか分からず、ただその場を進んでいくしかなかった。

 なんか、こう。話しかけた方が良いかな?


 「えっとぉ、あのね二人とも」

 「英雄様……」


 あら? おう、会話再開っ!? よしよし良いぞぉっ!!

 こう、空気悪いし何か話そうっ!!


 「英雄様の世界に……。何があったのですか?」

 

 うん。 



 

 「英雄様……?」

 「お姉ちゃん……」


 「ああ」

 「うん……」


 あら、返答に困って黙ったらなんか察せられちゃったっ!!

 す、すすす。すまぬ。なんて答えれば良いか分からなくて。


 「ママ……。おっぱい……」

 

 あらら、俺はおっぱい出ないよ春美ちゃんっ!!

 ちょ、ちょ。指吸わないで、わひゃひゃひゃひゃっ!!


 くそ。後門の春美ちゃん。前門のアニエスちゃん一行。

 状況が悪いぜっ!!


 「英雄様……。あの」


 「申し訳、ありませんでした」


 うん?


 「本国の状況が悪い時に……」


 「召喚、などしてしまった……」

 「いやぁ、俺ここに居るしねぇ」


 「あっ」


 「そ、それは……。そうなんですが」

 「ふふふ、異世界召喚されなくてちょっと残念だな」


 「えっと……」

 「大丈夫、俺本当は36歳で。ここでは実は仕事もしてない宿六だったんだよ」


 「ええ? そ、そうなのですか?」

 「そうそうっ!! それで、年齢を偽って就職活動真っ最中だったのさっ!!」


 「あ、そ、それは……」

 「だから結婚適齢期はもうとっくに過ぎてるし。まぁ色々と「終わった」人材だったんだよ」


 「終わった……。そうなのですか?」

 「そう。だからある意味召喚は正しい判断だったかもね」


 「これで身元がしっかりした適齢期の男子を誘拐。だったら色々と問題だったかもしれないけどね」

 「両世界同士の戦争に発展する可能性もあった……」


 「どうだろう。頻発するなら……。可能性はあったけど、そういう訳じゃないんでしょ?」

 「はい……。英雄は」


 「英雄は特別な存在……ですから」

 「そっか。でも残念ながら俺はそんな特別な人間でもないから」


 「だから」

 

 「だから、この状況はもしかしたら召喚という儀の中で最適解だったのかも」

 「最適解……。ですか?」


 「そう、もう俺達の世界に「英雄」を提出できる程の人間は居なかった」

 「だから、君たちの世界は選択した」


 「選択……?」

 「今の状況を」


 「だからこれが正解なんだよ」

 

 「だから落ち込まないで」

 「大丈夫」


 「君達は何も悪くないよ」


 「…………………………」

 「…………………………」

 

 「お手数を……」

 「お手数をおかけします……。英雄様」


 「ママぁぁあ……。んんぅううん。クチュクチュ」


 ああ。まだ指舐めてる。こらこら、指ふやけちゃうから。


 「あの英雄様。春美様は大丈夫なのですか?」

 「大丈夫だよ。よく寝てる」


 「そ、そうですか……。夏美さまはいくつなのですか?」

 「12歳だって言ってたな」


 「12歳。その歳で……。世界の命運を?」

 「そうみたいだね。いやぁ。若い力って凄いね。頼もしいよ。ふふふ」


 「逆を言えば、そんな小さい子を使わなければ世界がもたない……」

 「そういう事、なのですか? 英雄様」


 相変わらずコリーヌちゃんは頭が良い。

 なんというか、こっちの興味よりあっちの方がこっちの状況に興味持っちゃったみたい。


 まぁ80億の人口から400万だからなぁ。そりゃあ興味あるかぁ。

 

 「英雄様の世界は……。大変豊かで、様々な料理や技術。文化に優れる楽園だ。っと伝わっています」


 あらそうなの? まぁ隣の芝生は青いって言うしね。


 「その楽園が」


 「なぜ、そんな事になってしまわれたのですか?」


 

 うん。ああ。 ◇ ◇ ◇。


 「…………………………」

 「…………………………」


 「…………………………」


 「ママぁ……」


 「す、進みましょう……」

 「あい――。あ、そうだ」


 「は、はい何でしょうか英雄様」

 「俺の名前」


 「あっ」


 「そう言えば、聞いていませんでした」

 「英雄様っ!! 英雄様の名前って何なんです? き、気になりますよねぇ。お、お姉ちゃんっ!!」

 「そ、そうだなっ!! わ、わはははっ!!」


 「俺の名前……。俺の名前は」


 「俺の名前はニートっ!! ニートだよっ!!」

 「よろしくねっ!!」


 ちょっとギスっとした感じにもなっちゃったけど、ようやくお互い自己紹介出来た。

 これからどうなっていくかなんて分からないけど。

 ともかく意思疎通は出来たんだ。


 それなら。


 きっとなんとかなるよねっ!!

 

 

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