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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
激闘、バイト生活っ!!

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第33話 テレビを付けるとそこは異世界だった。マジでほんとに異世界なのかなぁ。


 「う――――ん」


 コントローラーを握り、彼女達をソリに乗せながらゆっくりと街道を進む。

 それしかやる事がないからそうしている。相変わらず街道は長く、先が見えない。こんな事を。


 もう5時間続けてる。


 あ、2人の小さい方。コリーヌちゃんがこっちをモジモジしながら見てる。


 こりゃあトイレかな?

 俺はその場で止まり、ジャスチャーで林の方を指さした。


「わ、ああ。す、すいません英雄様っ!! ちょっとトイレっ!!」


 輪ゴムを使ったズルをせず自分でコントローラーを動かす事で彼女達の変化に気付く事が出来た。

 やっぱりゲームは自分で動かすもんだな。そう思う。

 ゲームを始めてすぐアイテム欄から缶詰などの保存食を取らせ、こうしてまた街道を歩いてる。

 彼女達のお尻が痛くないようにゆっくりと。

 本当はバイト終わりに毛布でも買って緩衝材にしたかったがそれも無い。


 だからゆっくりと。まぁ毛布は明日にでも購入するさ。

 それにしても。


 画面外。現実世界を見る。

 そこは白く殺風景な空間に椅子と机とテレビだけがあるような部屋。


 恐らくは会議室なのだろう。椅子の数は多い。

 正面のテレビは。まぁ20インチと言ったところだろう。


 俺は机に並べられている椅子から1つ取り、それをテレビの真ん前に置いてプレイを続けている。

 それなりに広い部屋。背後の静けさを感じながら俺は暗い街道を進む。

 5時間も……。いや本当、人家どこっ!?


 「お、お待たせしました。行きましょう英雄様」

 

 お、どうやら来たようだ。よし、なら出発しようか。

 コリーヌちゃんが来てそのままソリに乗る。2人でちょっと狭そうなソリの空間を分け合って座る。

 こういうのは姉妹だから出来る事だろう。狭いソリに体育座りで座る彼女達は可愛かった。

 俺はコリーヌちゃんが乗ったのを確認すると、またゆっくりと歩み出した。


 うん。普通に。プレイ出来ている。

 自宅ではない。ゲーム機もない。コントローラーはただ持っているだけ。

 そんな状況で俺はただひたすら画面のスティックを押し、前に進む。

 

 プレイ中、考えるのは。

 

 「なんで出来るんだよ……」


 その疑問。テレビを付けた瞬間、画面が出てきた。

 これは自宅のテレビからの現象だと思ってた。しかし、違うのだ。


 「これって俺から「生えて」るの? テレビ付けただけでゲーム出来るなんてお得だなぁ」


 「ははは……」


 ちょっとした冗談のつもりで口に出して言ってみる。言った瞬間、妙な感情に襲われ自嘲する。

 明らかにおかしい状況。

 先ほどまでは天使少女智代ちゃんとの別れを済ませたり。

 皆の為に頑張ろうという春美ちゃんの為にバイトを志願し、労使交渉の真っ最中だった。

 だが今はどうだ? ゲームをしてる。しかもゲーム機もなし。ソフトも機材も無しで。


 ゲーム内キャラはたまにトイレの為にソリを降り、そして乗っていく。

 もう5時間もゲーム内を歩いているのに家一軒出てこない。グラフィックは超リアルの現実クラス。

 こちらの時間と連動して道も真っ暗だ。これは。本当にこれは……。


 どういう事で……「おいゴミ、貴様何をしてる」


 あら。


 「あら――春美ちゃん。起きたの?」

 「その春美ちゃんって言うのは止めろっ!! 私はもう12だぞっ!!」


 まだ十分幼いじゃないの。でも嫌がってるし。なら。


 「ではなんとお呼びすれば?」

 「春美博士と言えっ!! 私は博士号だってしっかり持ってるんだっ!!」


 春美博士か。なるほど、なんか博士って呼ぶ方が可愛い感じするかもなっ!!

 

 「じゃあ春美博士」

 「では、だっ!! しっかり敬意を持て私にっ!!」


 「はい分かりました、では春美博士」

 「よろしいっ!!」


 どうやら納得してくれたようだ。なんだろう、5時間より大分機嫌が良い。

 やっぱりしっかりご飯を食べてしっかり寝て。

 しっかりリフレッシュしたから気分が良くなったのかな、なんて思う。

 目のクマも多少和らいだ印象を受ける。きつかった目元も穏やかに。


 「休んで少しスッキリしましたか? 博士」

 「はぁっ!? 別にっ!? スッキリなんてしてないんですけどっ!!」


 あらそうですか? でもさっきより言葉が柔らかい。やっぱりちょっとはスッキリしたのかな。


 「ともかくお前何してるんだ?」


 あ、気付いた? えっと、まぁゲームしてるんだけどぉおお。うーん。なんて言おうかなぁ。


 「あ、あのぉおおおおぉ……とぉおお」

 「ク、クラウドゲーム、を……」


 「クラウドゲーム? クラウドゲームって何よ」


 クラウドゲームってなんだ? えっとぉ。

 確かレイジさんからゲーム機が無くてもネット環境と機材があればゲームが出来るって話を聞いて。

 それがクラウドゲームだって。そ、そんな感じだった筈だっ!!


 「ゲ、ゲーム機が無くてもゲームがで、出来る画期的なほ、方法があって」

 「なんだそれ。民間の技術は分かんないわねっ!!」


 あ、あはは。そ、そうですかぁ。俺も分からんです。


 「ともかくゲームしてるの?」

 「そ、そうなんですようっ!! ひ、暇だったから」


 「ふ――ん。まぁ良いけどね」


 あら優しい。やっぱり寝てスッキリした?


 「でもなんか歩いてるだけじゃない? 後ろのソリに乗ってる子は誰? なんで裸の男にソリ繋げてこいつ等は移動してるの?」


 え、えっとぉおおお。


 な、なんて言おうか……。


 こ。こ。こ、これ。これ、は……。


 「これは最新のぉお。お、お散歩ゲームで。えっと、現実時間とリンクして、色々見て回るっていう」

 「暗い夜道しかないけど、こんな所移動して楽しいの?」


 「ああ、えっとおぉおおお」


 な、なんて言う? えっとぉ。


 「ほ、本当は色々とNPCの子とお話出来るんだけど、い、今は機材が無いから……」


 そ、そうっ!! だからこうやって移動してるだけなんですよ、よほほほっ!!


 「機材ってマイクとかそんなの? マイクならここにあるから私持って来ようか?」


 え?


 「民間の最新技術ってのにちょっと興味があるわ」


 「クラウドゲームってやつの実力」


 「私に見せてみなさい」


 ええ。あの、ちょっと……。


 「ともかくマイクを持ってくるわっ!!」


 「マイク持ってきたわっ!!」


 あ、えっとぉ。


 「それでどうやって通信するのっ!?」


 「あ、えっとぉ……。マイクというかトランシーバー的なものが必要で」

 「なにそれ。まぁ良いわ持ってきてあげる」


 「ほら、通信機持ってきたわっ!! 2つね。これをどうするの?」

 「あ、えっとぉおおお」


 「テレビに……」

 「テレビに、放り込むと言いますか」


 「は?」

 「ですからテレビに放り込むんです」


 「テレビに通信機放り込むの? そんな事出来る訳ないでしょっ!!」

 「いや、それが出来ると言いますか……」


 「なにを馬鹿な事を……。出来るって言うならやってみなさいっ!!」

 

 「なんで出来るのよっ!! どういう原理よっ!!」


 テレビに通信機を入れたら。


 普通に入っていった。


 「はぁあああああああっ!? モニターに物を入れるっ!? な、なによそ、そんな事……」

 「民間の技術はそこまで進歩してたのっ!? く、悔しいっ!! そ、そんなバカなっ!!」


 あ、ああ……。あはは、ほんとに入っちゃった。

 まぁ何度も入れてるんだけど、自宅以外でも入るのか……。


 「こ、これでそこの女共と交信できるの?」


 「あ、えっと……。声は出せるんですか?」

 「ええ、電源を入れて周波数を合わせた。繋がる筈よ」


 「ああ――なら」


 繋がる、かなぁ。

 俺はアイテム欄から通信機を選択し、それを落とした。


 「うん? 英雄様、これは何ですか?」

 「なにか黒い…… 鉄の塊?」


 「あーあ――。聞こえるかしら娘ども」


 「っ!?」

 「っ!?」


 「聞こえるかしらー? はは、まぁ聞こえるなんてそんな事ある訳……」


 「声、声が聞こえたっ!!」

 「塊から声がっ!! こ、これが英雄様の声なのですかっ!?」


 「え」


 あら――――。


 い、意思疎通……。


 出来るように、なっちゃった。

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