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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
激闘、バイト生活っ!!

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第31話 いやいやいやっ!! 正社員は勘弁してくださいっ!!

 

「そう言う訳であんたをウチのテストパイロットに任命するわっ!!」


 えっと……。


 はい?


 テストパイロットに任命する?


 えっと、どういう事?


 「テストパイロットに決めた奴も辞めてったから丁度良かったわ 次からはキビキビ働く事ねっ!!」


 いや、その。あのぉ……。


 「そ、そんな話聞いてないんですけども……」

 「今決定したんだけどっ!! 文句あるっ!?」


 「いや、あるでしょうともよっ!!」


 会って一日のバイトを次世代兵器のテストパイロットに?

 そんなの流石におかしいよっ!! ちょっとちょっとどういう事っ!?


 「お、俺アルバイトぉおおおおおおお――――っ!!」

 「正式に私が雇ってあげるから喜びなさいっ!!」


 よ、喜ぶって。そんな……。


 「ともかくあくせく働く事ねっ!! 一日中徹底的にこき使ってやるわっ!! 私達の働きが後の人類の礎になるって事。誇りに思って働く事ねぇっ!!」


 一日中っ!? そ、それはフルタイムって事? 正社員っ!?


 「私の認められ事、誇りに思いなさいっ!! あんたをクズからゴミに格上げしてあげるわっ!! クズゴミじゃなくてゴミっ!! だからゴミはゴミらしく。ゴミとしてあくせく」


 正社員……。フルタイム……。

 え。毎日満員電車に乗られながら出社して、ゲームも出来ない一日をずっと……。

 そんな、そんな苦行をしないといけないの?


 そんな、そんなの……。


 「や、やだぁあああああああ――っ!! 働きたくないっ!! 働きたくないでござるぅうううううーっ!!」

 「あ、こらっ!! どこに行くのよ奴隷っ!!」


 「帰って来いっ!!」

 「帰ってこぉおおおおおおおおおおおおおお――――いっ!!」


 俺は逃げた。一目散に逃げた。なぜって?

 働きたくないからっ!!


 あんまりにも働きたくないから逃げたっ!! フルタイムの正社員なんてまっぴらごめんだっ!!

 うぉおおおおおおっ!! 働きたくないっ!! 働きたくないでござるぅううううっ!!


 

 ◇ ◇ ◇


 

 「うおぉおおおおんっ!! 自宅到着っ!! こんにちは我が家っ!!」

 「うわびっくりしたっ!! ニートさん、お早いご帰宅ですね」


 お早い? 今何時だ? 時計を確認してみると1時くらい。おお、確かにお早い。

 ってそれよりも。


 「智代ちゃん居たのかい?」

 「鍵を付けずに行ってしまったので用心の為に留守番を」


 「あ、そっかぁ」


 なるほど。戸締りしなかった事を心配して家に居てくれたのかな。

 そういえば鍵かけてなかったなぁ。

 あれ、鍵どこに置いたっけ。鍵……。鍵……。やっば鍵の場所忘れた。

 まぁいっか。


 「ともかく帰ってきて良かったです。お仕事は順調でした?」


 う……。それを聞く? いや普通聞くか。まぁせっかくだから聞いてもらおう。

 本当、とんでもない目にあったよぉ――。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 「ええっ!? ウォーカーのテストパイロットに選ばれたっ!?」

 「選ばれたというか急に任命されてね。っていうか智代ちゃんウォーカーの事知ってるの?」


 「ええ、まぁ……。はい。それで、どうしたんですか?」

 「いや、だから逃げてきたんだよ。フルタイムで一日中働けとか言われたから」


 「そ、そうなんですか……? っと言うかいきなり素人を機体に乗せるなんて……」

 「いきなりでっかいゴジュラみたいなのと戦わされたよ。アレには驚いたなぁ」


 「ええっ!? アレとっ!? そ、それでどうなったんですかっ!?」

 「転ばせてなんとか勝った感じ。あれなんか凄く固くてね。それを利用して転ばせたんだ」


 「勝った……。え、ニートさん軍務経験は……」

 「そんなのはある訳ないよ~。でもなんとか勝てたし、素人でも使えるって事は凄い兵器なのかも」


 「そう、ですか……」

 「うん? どうしたの?」


 「いえ……」


 「ほんと、時代って」


 「変わっていく、ものなんですね……」

 「そうだね。色々と操作面で惜しい面はあったけど、でも素人が怪獣を倒せるんだから凄いよ」


 「そうですね。ニートさんみたいな素人さんでも扱える程の汎用性があるなら」

 「うん、なんか凄かったよっ!!」


 「そうですか……」


 「なんというか」


 「なんというか、もう踏ん切りが付きましたっ!!」

 「うん? 踏ん切り?」


 「はいっ!! 私、これから……」


 「これから普通の女の子に戻りますっ!!」


 あら。


 「そっか。学生さんになるんだったね」


 そっか。そういえば彼女は軍人を止めるんだった。

 これからは普通に学生さんやって、普通に生活していくんだ。


 もう剣を振りながら丸太を削る生活をしなくても良いんだなぁ。

 ちょっと寂しいけど、それは彼女にとって良い事だろう。


 「寮生活だし、学校はここから結構遠いんです。だからもうここで訓練する事が出来ません」

 「そっか」


 「ここで訓練して、一緒に昼食を取ったり、お夕飯食べたり……」

 

 「ここでの生活は楽しかったですがっ!!」


 「でも」

 「同年代の子達と「青春」を楽しむのも重要だって言われて」


 「それも、良いかなって」

 「良い事だよ。いっぱい楽しみな」


 「はい……」


 ああ、そっかぁ。今日から彼女、来なくなるのかぁ。

 ここ最近はこうやって一緒に居たから、やっぱり居なくなると寂しいな。

 独身生活のおっさんに現れた。ちょっとした天使様って感じだった。


 ふふふ、そんな生活はもう終わりか。でも彼女にとってそれが一番の幸せだろう。


 「正直に言います」


 うん? なんだい?


 「ニートさんの事」


 「ちょっとお父さんみたいだなって思ってました」


 あら。


 「こんな自堕落なお父さんだったのかい?」

 「いえ、顔を合わせた事はないんですが……」


 「でも、年上の男の人とご飯食べる経験なかったし」

 「なんだか、楽しかったです……」


 そうか。彼女達はそういう世代だし、仕方ない事なのかもしれない。

 でもお父さんか。あはは、こんな自堕落ニートをお父さんなんて呼んだら駄目だよ。

 しかし、そうだね。俺ももっと普通に人生だったら、子供が居たりなんて事もあったかもしれない。

 でもそんな事にはならなかった。

 でも。


 こんな可愛らしい娘が居たら、俺の人生どんな事になっただろうなぁ。

 なんて、小さく考えてしまった。


 「そうか、俺も楽しかったよ」

 「色々とありがとうございます。あ、そうだニートさん」


 「うん? なんだい?」

 「私が持ってきたロングソード。ここに置いて行って良いですか?」


 「ええ?」

 「いつか、戻ってくるかもしれないし」


 「だから……。ここに保管しておいて欲しいんです」


 あら。


 「分かった。ここに置いておくよ」

 「やったっ!! ありがとう、ございます……」


 「うん」


 なんだかお別れって雰囲気だな。彼女から剣を預かっちゃった。

 まぁ学生になったら剣なんて必要ないだろうし、たぶん廃棄になる感じだったんだろう。


 だったら俺の所に置いておくのは良いかもしれない。

 剣。ロングソード。ああ、そうだな。


 使っちゃう。せっかくだしね。まさかこんな所でまた剣を手にする事が出来るなんて。

 借りてるだけ。だけど、ある種彼女からのプレゼントだって考える事も出来る。

 それなら、俺から何かあげる物ってないかなぁ。


 あ、そうだっ!!


 「そうだっ!! 君に最後にあげたい物あるんだっ!!」

 「はい? なんですか?」


 「これこれっ!!」


 俺が彼女にあげた物。それはアニエスとコリーヌから貰った金の指輪だった。


 「これは?」

 「綺麗だろう? え――っと。金メッキのぉお。指輪だよ」


 流石に本物の金だって分かると遠慮されそうだから金メッキって事にしておいた。

 本当は換金しなきゃなんだけど、この子の将来でいつか何かしら入用になる事もあるかもしれないし。

 そんな時この指輪があれば多少は役に立つだろう。


 「綺麗な指輪……」

 「まぁ、金メッキ。だけどね」


 「でもこんなので売ったらいくらかになるかもしれないよ?」

 「そんな事しませんよ。大事な指輪です」


 あら? でもまぁいつか心変わりする事もあるかもだし、その時は役に立てて欲しいな。


 「こんな物しかあげれなくてごめんね。何分お金なんてないもんで」

 「生活費にしてくださいって思いでお金出してたのに全部私と食べる食べ物にしちゃうんですもん。ニートさんは本当欲がないですね」


 「家でのんびりゲームしてたら満足だしねぇ」

 

 「ふふふ」

 「……ニートさん」


 「体には、気を付けて……」

 「ああ、それじゃあ」


 「それじゃあ、ね」


 そうして、彼女は行ってしまった。帰り際何度もこちらを見て手を振って。

 16歳の可愛らしい軍人の女の子。


 乾いていた俺の人生にちょっとした潤いを与えてくれた彼女。

 若い子が新たな旅路に向かっていく。ちょっとした感動だ。


 今後彼女の人生に潤いと平穏があれば良いなぁ。


 若い人が頑張ってるのを見るのって良いな。

 若い人。若い人、か。


 三日月春美ちゃん。彼女もそうやって若いながら頑張ってる子の1人だ。

 皆の為に、強力な兵器を作っている。そんな子。

 つい就職したくなくて逃げてしまったけど、彼女は今頃。


 困ってるんじゃないかな。


 「就職、か」


 「フルタイムは嫌だけど」


 「でも……」




 ◇ ◇ ◇


 

 

 「うぐっ。くそぉ、なんだよなによっ!!」

 「どいつもこいつも、なんで私の凄さを理解しないんだっ!!」


 「ぐすっ。私は頑張ってる……。私の下では働けないだとか。クソガキの面倒は嫌だとか」

 「私が。私を誰だと思ってるのよっ!! 私は超天才なんだっ!!」


 「天才で、誰よりもなんでも出来るから……。だから私が守ってやろうって言うのにっ!!」

 「なのに、なのに……」


 「なのに……。どうして皆私の傍から離れていくの?」

 

 「なんで……。なんでよっ!!」

 「私が何をしたって言うのよっ!! この愚民っ!! くそ愚民共がっ!!」

 「私は偉いっ!! 私は賢くて……。だから、だから……」


 「ううう……」

 「なんでみ゛ん゛な゛わ゛た゛し゛の゛ま゛え゛がら゛い゛な゛ぐな゛る゛の゛よ゛ぉ゛お゛お゛お゛」


 「ううう、うううう……」

 「うわああああ。ひぐっ……。ぐぅううう」


 「あのぉおおお――」

 「うわっ!!」


 「な、なにっ!?」

 「いや、そのぉ」


 「労働条件についてのお話をしようかなって」


 「戻ってきたんですけど」


 そうそう、フルタイムでなければ。今後の事もあるし。

 バイトなら。


 バイトなら、良いかなぁって。

 えっと。


 駄目?


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