第3話 森を彷徨う……。って、彷徨ってばっかじゃねぇかっ!!
どうも、俺はニート。36歳。今現在大人気ゲームソフト。ブラックソウル5を絶賛プレイ中……。
の筈だったんだけど、なんかこのゲームちょっとおかしいような。
そういう訳で現在プレイ続行中。
続行中なのだが……。
暗っ!! 画面暗っ!! 外は夜。すっかり真っ暗だ。
それに比例してゲームの中も真っ暗。外の様子がまったく望めない。
見渡す限りの闇。闇。闇。
テレビの輝度設定も弄れないし、ひたすら画面の中で暗黒を眺める時間。
これがゲームの設定なのだとして、流石に暗いが過ぎる。
「たいまつも持てないしなぁ」
一応アイテム欄はあるらしい。が、そこには全く何も無い。
つまりアイテム1つ持たず闇の中ただひたすら歩き続けろという事だ。
「どうしろと?」
部屋の中、電灯の明かりに照らされながら暗い山中を進む主人公を動かす。
まるで貧富の格差を見せる夜間の航空写真のように。
快適な部屋で快適でない主人公を操作する。そんな不公平を感じつつ、ただ前に進み続ける。
「なんだこのゲーム。なんだ……」
本来ならクソゲー。の一言で片づけられるこの現象。
しかしどうにもならない胸騒ぎを感じて黙々とプレイし続けてしまう。
幸いにも敵が出てこない。夜だから、という事もあるのだろう。
敵が出てこないというのであれば、夜出歩く事はかなり有効な攻略手段なのかもしれない。
「つまりこのゲームは夜にやれって事?」
そんなゲームがあるか?
社会の人々が必死に働いているのを尻目に昼間っからやるゲームが良いのにっ!!
つまりこのゲームは俺に昼間は何かしてろと言いたいのだ。
なんて社会的に健全なゲームなんだっ!! こんなゲームが許されて良いのかっ!?
「あんま面白くないしこのまま止めるってのもアリだけどぉ……」
だけど。
お願い勇者よ。魔王を倒し世界を救って。
「なんて言われちゃったしなぁ……」
そう言われたら、どうにも続きが気になってしまう。
何が勇者で何が魔王なのか、今のところさっぱりだが。
しかし救って言われたからにはそこはゲーマ魂。救わないとっ!!
救わないと。とは思うが。
「暗くてまったく見えん……」
やはりこの暗さ。どうにもならない。
「このまま闇雲に進んで良いものかねぇ」
考えるが、しかし名案が出る事はなく。
だがこういう場合はアレだ。なんて事ないちょっとしたアイディアで事態が動くなんて事もある。
って訳で。
「じゃじゃ――んっ!! かいちゅうでんと――――♪」
って訳で、懐中電灯で照らしてみる事にしたっ!! ゲーム画面をそのまま懐中電灯で照らすのだ。
馬鹿げたアイディアだが別に照らして誰に恥じる訳でなく。
…………。縁側の引き戸を閉めておくか。
「って訳でっ!!」
改めてっ!! さぁいざゲーム画面に照射照射っ!!
ピカ――っと当てて、あら嬉しやその先光明っ!! なんつってっ!!
「……………………」
まぁそんな訳ないだろうって事は分かってた。
だけどこういう場合ちょっと試してみたくなるのが男の子ってもんだろ?
小生36歳。心はまだ小学生のつもりだ。
当たり前だがテレビに懐中電灯を照射しても何一つ起こらなかった。
当たり前だ。うん当たり前だが。
「ここはなんかあるかもって思うじゃん……」
戸を閉めておいて良かった。こんな事誰かに見られたら……。
見られたら? ああ、そういえば恥の外聞も関係な身分だったっ!!
でもちょっとはご近所を気にしちゃう。36歳だもん♥
「うわキモッ」
自分で考えて自分で気持ち悪くなってしまった。
ともかく懐中電灯照射作戦は失敗だ。
ならば次は。
「画面に直接アイテムを。あ、駄目? はい……」
駄目だった。画面に直接懐中電灯をコツコツしてみたが何ともならない。
そりゃあそうだ。そもそもどうにかなると思う方がおかしいのだ。
でもどうにもならない不思議な事が起きているのだ。
ならばこちらも同じ土俵に立たなきゃならんじゃないのですかい?
っと言う訳だっ!! 3度目の正直っ!!
まずはコントローラーから画面を操作してアイテムスロット欄を開く。
画面はそのまま。テレビ画面には空っぽのアイテムスロットが表示されている。
アイテムスロット。そこはつまりアイテムが入る所だ。
それならば。
アイテム入るんじゃね?
あ、入った。
「………………………………」
入った。
アイテムが入った。
懐中電灯がテレビの中に吸い込まれたっ!!
アイテムを使えないっ!!
うん。
「一歩前進、一歩後退ってこの事だねっ!!」
結局状況は変わらない。
でも。でも。
でもどういう状況だよっ!!




