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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
激闘、バイト生活っ!!

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第25話 ついにバイトっ!! の前に夜歩きだ。 なーんも無い所だなぁ


 「なーんも無いなぁ」


 ついに異世界の世界を冒険だっ!! なんて事になったのだが。


 「道ばっかり」


 いざ出発っ!! っとなったのは良いが、なんというか街道っぽい場所に着いたのは良い。

 しかしそれからどうもパッとしない。だってその街道しかないのだ。

 ずっと街道。ずっ――と舗装されてない固められた土の道を進んでいくだけの旅。

 オープンワールド。とは聞こえが良いが、それだけをずっと続けてるだけなので退屈なのだ。

 

 なもんでコントローラーのスティックを輪ゴムで良い感じに固定しながら、俺はウィンチでリンクの冒険をやっていた。輪ゴムで固定されたキャラは街道をただひたすら、まっすぐ走っていた。

 他2人はどうしたかって。それは。


 「なんというか、こんな事して良いんだろうか」

 「しかし英雄殿が絵でこうしろと指示なされたのだし、これが正解なんじゃないかな」


 2人は俺のキャラにソリを繋いでそれに乗って移動していた。

 こんな事もあろうかと買っておいたのだ。キャラにロープを結んでその結んだロープにソリを繋げる。

 そうする事で即席の乗り物が完成した。


 バイクとかなんかこう、そういう乗り物を買おうか。なんて考えたが。

 お金が無かったから……。

 

 だからこうして人間ソリを引いたまま街道を利用する。

 幸いにも俺のキャラに疲れは見えない。ブラックソウルはスタミナの概念はあるが疲れのそれはない。

 だからこうして2人を乗せて移動出来る。


 2人の体重によって多少の抵抗は見せるが、しかし夜間、街灯がない街道をおっかなびっくり進まなくて済む。俺のキャラの頭部にはヘッドライト付きのヘルメットが付けられ、先の道を明るく照らしている。


 2人にも懐中電灯を持たせ、これで夜間移動は完璧だっ!!


 「この道具は凄いですね。ずっと先も照らせる。これが異世界の魔道具ですか」


 小さい方の子がスイッチをカチカチしながら懐中電灯を弄っている。

 未だ名前は分からない。でもこうやって新しい玩具を楽しそうに弄ぶ彼女は年相応に可愛く思えた。

 大きい方の子も……。しかし大きいだの小さいだの。名前を知らないと言うのはやっぱり不便だな。

 正直初めくらいに名乗って欲しかった。

 でもまぁ自分も名乗れないし、そもそも会話も出来ないのだからしょうがないけど。


 ともかく先に進む。幸いにも街道はまっすぐで今のところ輪ゴムを外す必要は無さそうだ。

 1時間。2時間。3時間。走りながら街道を進む。


 彼女達はいつのまにか眠ってしまったようだ。

 最初こそ俺になにかしら話しかけようとしていたが、しかしどうせ返事は返ってこない。

 だから諦めたのだろう。俺としてもそちらの方が良かった。


 ソリに乗る2人は眠っているとは言ったが、しかし片方は起きているようだ。

 片方が起きたまま、俺が道を外れないように見張ってくれている。

 そうやって、ひたすら街道を進んでいった。


 進んでいく内に、2人が何だかムズムズしだす。

 俺はいつのまにかゲームをやっていなかった。2人の様子が気になったから。


 ふと時計を見ると深夜の2時だ。

 7時くらいに移動し始めたからもう7時間近くソリに揺られている事になる。

 そういえばソリには何も敷いてない。ならばその振動はかなりあるだろう。

 俺が常に進み続けている為トイレにも行っていないようだ。


 ここで気付いた。


 「やっぱり」


 「ゲームは、自分の手で動かさないとな」


 そうして輪ゴムを外しコントローラーを握る。

 ふと歩みが遅くなるキャラを訝し気に彼女達は見る。


 俺はそんな彼女達にメモ帳で書いた絵を1つ落とした。

 それは。


 「焚火……。あとは寝具ですか? ここで休もうと?」

 

 彼女達が使う文字は分からない。たかしさんが解読できるみたいだし、習ってみるつもりだけど。

 今は何も分からない。だから絵を書いた。

 学生の頃、授業そっちのけでノートに落書きしていた頃を思い出す。絵くらいは多少書けるのだ。

 柔らかいタッチで、一緒に休もうと。そう伝える絵を書いた。彼女達は。


 「可愛らしい絵ですね。英雄様」


 意図は伝わったようだ。森の中に入り、ホームセンターで買った小さな陣幕の中で焚火を焚く。

 火は簡単にライターで着き、陣幕で隠された焚火が静かに燃えだした。

 そして焚火を使ってエンデールに向かう。


 「ふぅ、やっぱり広い所は落ち着きますね」

 「魔法なのだろうが、このような巨大な空間に移動出来るなんて、流石英雄様の魔法だ」


 魔法。とは違うだろうけど、でもまぁ魔法と言えば魔法にも見えるか。

 ともかくなんでも良いや。


 俺は彼女達にデパートで買った敷布団を渡し、床に敷かせた。


 「さぁ、英雄様。どうぞお布団ですっ!! 今日のお疲れをお癒し下さいっ!!」


 大きい方の彼女が布団を敷いて俺にそこで寝るように促す。

 だが俺は広場の上の方に陣取り「寝る」のジェスチャーをして横になった。


 「英雄様?」


 そこから動かない。意図を汲んでくれれば良いけど。


 「英雄様は、私達にここで寝ろと言ってくださっているのでは?」


 小さい方の彼女は気づいたようだ。やっぱり賢い子だな。


 「そうなのか? しかし英雄様が」

 「やはりアレは英雄様のドール。英雄様そのものじゃないんだよ」


 「だから」

 「お言葉に甘えよう。お姉ちゃん」


 「……………」

 「そうだな」


 少し悩んだ後、大きい方の彼女が承諾した。


 「では英雄様。ご厚意、感謝します」

 「ありがとうございます英雄様。やっぱり英雄様は」


 「しっかり、心も英雄様なのですね」


 そうかな? ふふふ、ともかく今日はゆっくりお休み。

 俺も。


 俺も寝る。明日はきっと。


 きっと、忙しくなるからさ。


 「あ、そうだっ!!」


 うん?


 「まだ名乗っていませんでしたねっ!!」


 あっ。


 大きい方の彼女が言ってくれたっ!! おお、そう、そうだよ、名乗ってないよねっ!!

 そういうところ気が利く子なのかっ!! うんうんっ!! 名乗ってないっ!!

 名乗って名乗って――っ!!


 「長女の私がアニエス。そしてこの小さい方が」

 「小さい方って言わないでっ!! もうっ!!」


 「私の名前はコリンヌです英雄様。よろしくお願いします」


 おおぉおお――――。


 ようやく名前が分かったぞっ!! えっとアニエスとコリーヌだったな。

 へへへ。名乗ってくれて良かったっ!!


 よしよし、これからよろしくアニエス、コリーヌっ!!

 俺はジャスチャーで前を指さす動作を行った。現状行える……。


 いや。絵を書いた方が気持ち伝わるかな。

 俺はメモ帳に絵を書いて彼女達に渡した。最大限可愛いねっ!!

 なんて意思を伝えたつもりだ。彼女達はその絵を見て笑ってくれた。


 「英雄様は意外とお茶目な方なのですね」

 「そうね、姉さん。本当」


 「しっかり、お会いしたかったのだけど……」


 そこは言いっこなしだよお嬢さん。

 まぁそっちにとっては不具合でも、慣れない異世界に行かないで俺はラッキーっ!!


 って訳で。


 今日はゆっくり寝るとしよう。明日の備えて……。備えて。

 あ、そうだ。


 「うん? なんですかこれは英雄様」

 「コップと……。これは」


 「歯ブラシ? あと……。桶。あと、バケツ一杯の水」

 「この妙な入れ物は? あ、絵。これで体を洗う?」


 そうそう。シャンプーだよ。これで体を洗いな。あと歯を磨いてね。虫歯になったら困るから。

 お洋服もセールの安いのを。サイズは分からなかったから合うかは分からないけど。


 ともかくさ。女の子なんだし、やっぱりこういう身支度は。

 大事しないとねっ!!


 さて。


 俺もドラム缶に水入れてくるか――。


 あ――。


 風呂ってめんどくせ――。 ああ、明日……。


 本当、憂鬱だな――。

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