第24話 バイト? この俺にバイトをしろとっ!?
「はぁっ!? ニートがバイトするっ!!」
「そ、それどういう事っ!? 父さんっ!?」
「ああ、実はなんだがね」
やっべぇ。なんか変な事になっちゃったぞう。あ、あ……。まさか。まさか……。
バイトをする事になるなんてっ!!
それもこれも……。
◇ ◇ ◇
「え? お金が欲しいっ!?」
「え、あ、はいぃ……」
「だ、だからその……。この、ですね」
「母さん所からパクッて……。いや拝借した……。いや貰ったこの金の指輪を売ろうと、ですね」
町の質屋に金の指輪を売ろうとして断られて数分後。
近くの床屋に向かっていた、たかしくんのお父さんと遭遇した。
色々と迷ったけど、これも人助けの為っ!! って訳でここはなんというか。
交渉……。交渉だっ!! たかしくんのお父さんなら身元がしっかりしてるしIDも持ち歩いてる筈っ!!
そう言う訳でたかしくんのお父さんにお願いしてみた。
「なるほどね。母親の所から入手した金の指輪を売ってお金を作りたい、と」
はいはい。そうなのですよ。ここは、なんというか。恥も外聞もなく、ですね。
ひ、人助けの為。ここはその。なんとか。こう……。
「それで」
「この指輪はお義母様から許可を得て頂いた指輪なのですか?」
ああん。聞かれちゃった。どうしよう母さんに連絡入れられたら。
ぬ、盗んだ物だと思われたり? いやぁ、盗んでないよ。貰ったものでね。
だから、その……。
換金を、ですね。お願いしたい訳でして。
「良いですよ」
「えっ!? 本当ですかっ!?」
やった流石たかしくんのお父さんっ!! これで指輪が売れるっ!!
「ただし、売るんでしたら自分で売ってくださいね」
うん?
◇ ◇ ◇
「そう言う訳で彼はウィンチ2購入資金獲得の為に、バイトをする事になった訳だね」
「ゲーム機購入の為にバイトって学生かよっ!!」
おう。おう。おう……。そ、そんな訳で……。
実家からID取得を勝ち取る為に、軽くバイトをする事を了承してしまった……。
い、いやじゃ……。
い、嫌じゃっ!! 働きとうないっ!! ワシ働きとうないぞっ!!
「という訳で床屋さんに言ってすっきりしてきたんだよ。どうだい?」
「どうって……」
ああ。床屋さんで髪も切られて……。いつも髪は自分で切ってたのにっ!!
人に自分の髪を弄らせるなんていつぶりだぁ? くそぅ。さっぱりされてしまった……。
あとなんかスーツとか着せられた……。スーツなんて来たのは初めてだぁ。
うわぁっ……。バイトだ……。 バイトっ!! バイトさせられるっ!!
ぬわぁああああああああっ!! 働きたくなぁああああ――――いっ!!
「なんというか、その……」
うん? なんだい姉さん。
「色々整えば、貴方も意外とかっこよく見えるじゃない」
そーう? でも俺はうっすら髭があるボサ頭のままでも全然良かったんだけど。
でもそれじゃいくら伝手バイトでも問題だからって事で整えられただけ。
そういえば美容師のお姉さんもかっこよくなりましたねーっ!! なんて褒めてたっけ。
ふふふ。俺の時代来ちゃった? なんて。
「お、お……」
お、どうしたい? たかしくん。俺の立派な社会人姿に感激しちゃった? なんつってがははっ!!
「お……。おぉ……。まさかあのニートがゲーム機の為といえど働きたいなんて思うとは……」
「お、俺感激だよニートっ!! いや、お前はもうニートじゃないっ!!」
「バイトマンだっ!! バイト戦士だぜニートっ!!」
「お、俺感激だよっ!! うう、ううぉおおおおおおおおお――っ!!」
え、ええ……。たかしくん泣いてる?
や、やだなぁ。これはただのバイトであって就職って訳でなく……。
「彼には近々ウチの研究所でやる技術展覧会のスタッフをやってもらおうと思ってるんだ」
「そ、そんなまともな仕事をっ!? だ、大丈夫なのかい父さんっ!?」
「大丈夫だよ、そんな難しい事はさせないから」
「お、おお……。まさかニートが働く姿を見られるなんて……」
「か、母さんっ!!」
「そうね。今日はこの子が好きな唐揚げでも作ってあげようかしらね。長い事ずっと馬鹿してたけど。ようやく自分で立てるようになったのね」
え。え。いや、俺は別に。その、ちょっとした短期バイトをだね。
「そう言う訳でね。由美、実家から彼のIDを持ってきてくれないかい? 短期とはいえ仕事する訳だから。必要だろ?」
「そういう事ならオッケーよっ!! 母さんに言ってあげるっ!」
「馬鹿弟っ!!」
え……。
「頑張んなさいよっ!!」
お……。
う……。
や。
やだぁあああああああーっ!! ワシ働きとうなぁああああああぁあああいっ!!
◇ ◇ ◇
「あ、英雄様っ!! お戻りになったのですねっ!!」
「そ、それでっ!!」
「指輪は売れましたかっ!?」
「むむっ!! こ、これは沢山の食料に……。寝袋っ!! あとこれは何ですか?」
「何かスイッチがあるねお姉ちゃん。うわっ!! 押したら光が出たっ!!」
「これは……? これを押すのか? うわっ! 火が出たぞっ!!」
「これは魔法の道具……。さ、流石魔法使いの英雄様。魔道具を購入して下さったのですね」
「こんなに沢山色々な道具を……。ありがとうございます英雄様っ!!」
「では、英雄様行きましょうっ!」
「いざ、王都へっ!!」
「世界を救う旅を」
「開始いたしましょうっ!!」
そんな訳で……。ウチに戻ってきた。前金としてたかしくんのお父さんから3万円貰って色々工面した。
懐中電灯に寝袋。あとはライターにミネラルウォーター。それと食料。
あとはシャンプーだったり薬だったり。
もう色々集めて、キャラのアイテム欄に入れた。彼女達は喜んでくれた。
でも俺の心は憂鬱のままだ。だって。だって……。
明日バイト先に行かなければなんだからっ!!
バイト先の研究所に行って、技術展覧会のスタッフをしなければならないのだっ!!
うわあああ。うわぁああああ。
や、やだ。やだぁああああ……。
は、は。
働きたくなぁあああああああああいっ!!
ちっくしょぉおおおおおおおおお――――っ!!
「では行きましょう英雄様っ!!」
もうっ!! 分かったよっ!!
ううう。でもまぁ、人助けになったなら。
なら、ちょっとは……。良いかなぁ。




