第13話 若者来襲っ!! ふぇええええ。若い子って本当エネルギッシュだぁああ。
「あ、はい。これが剣ね。いやぁごめんね返し忘れちゃって」
「はい。こちらこそ。あ、すいません勝手に縁側開けちゃって」
「ああ、いやいや。ははは」
完全降伏した。
持ち主が現れたのだ。惜しいが剣を返さねばならないだろう。
正直返すとしても、もうちょっと粘れると思った。
だがまさかこうも早く返還する日が来ようとは……。
いや、借りた物を返すのは当たり前だ。
そういう訳で一度縁側を閉めてテレビの中から剣を取り出して、それを返した。
グッバイロングソード。短い春だったなぁ……。
「本当、もう。昨日はすいませんでした。あれから沢山叱られちゃって」
「ははは、うん。もう良いから」
「本当、申しわけありませんでした。あの、息子さんは元気ですか?」
「ああ、僕は彼らの両親じゃないよ。まぁ叔父って言った方が早いかな」
「そうなんですか」
そうなんです。って訳でそろそろ帰ってくれない?
見た感じかなり若い女の子だ。こんな子が36歳無職親父と一緒に居たらいけないよ本当。
「そうなんですかぁ。ここに住んでるんですか?」
「そうなんです。ここに住んでるんですよ」
あらら。言葉のキャッチボールをお望みかいお嬢さん。
正直俺としてはそろそろ帰って欲しいなぁって。そんな風に思うんですけどもぉ……。
若い子と話す話題なんて無いよっ!! 当方今までゲームしかしてこなかった生粋のニートなもんで。
「そうなんですか。こじんまりとして良い家にお住まいですね」
「そうでしょう? こじんまりとしてるけど良い家なんですよ」
ともかく話すネタが皆無だ。こういう場合は言葉のオウム返しをして暇になって帰ってもらう。
女の子と楽しく話す術なんてない。
年齢=彼女いない歴のおっさんだ。若い子と話すスキルなんて皆無だ。
そんな訳で早く帰ってもらう事にしよう。
「ここにお一人で住んでるすか?」
「ここにお一人で住んでるですよ」
「そうなんですか。寂しくないですか?」
「そうなんです。寂しくないですよ」
「そうですか」
退屈でしょう? そろそろ帰っても良いのよ? ふふふ。
「お仕事は」
「お仕事は何をしておいでなんですか?」
あら、それ聞いちゃう? なら言っちゃうぞっ!!
「無職だよ。今まで何の仕事もしてないんだ」
はいそうです。当方無職のおじさん。人生詰み詰み。
そんな訳でそんな無職おじさんとこれ以上話しちゃいけないよ。
若者はもっと若者と付き合うべきだとおじさん思うの。
「そうなんですか……。まぁ、そういう時代でしたから」
はい?
「それでも。貴方という存在はいまここに居る」
「それが嬉しいです」
「これからもずっとお元気に暮らしてくださいな」
にっこり。彼女は笑顔になった。
あらまぁ。
優しい子だねぇ。
「ありがとう、そうするよ」
「ええ、そうしてくださいっ!!」
「ふふふ、こんな無職のおじさんの所に若い子がずっと暇でしょう? そろそろかえったら」
「随分開けた所にお住まいなんですね。広い土地……。ここは貴方の土地なんですか?」
うん? まぁたしかに周りは荒れた平地だ。昔は多少人も居たんだけど。
「えっと、ともかく君みたいな子が」
「あ、そうだっ!! おじ様っ!!」
あら、おじ様なんてお洒落な言い方だなぁ。
じゃなくて君みたいな子がね。その、ニートのね。家に居るなんてね。不健全と言いますか。
「たまにここに来て訓練しに来て良いですかっ!? 最近訓練場が一般兵用の練兵場として接収されちゃってしっかり訓練出来る所が無かったんですっ!!」
「うん?」
「はい実はですねっ!!」
ああ、変に返事したから続きが来ちゃったっ!!
わーたんまたんまっ!! 聞いてないっ!! 聞いてないからっ!!
「最近どうも軍縮傾向で……。私達みたいなのは奥に追いやられてまして……」
ああ、そうなのかい?
「だからたまにで良いんですっ!! 訓練しても良いですかっ!? 剣を振ったり走ったりするだけで良いですからっ!!」
いや、そのぉ。当方ニートなもんで。そういうのはちょっと。
「おじ様お願いしますっ!! 場所代も出しますのでっ!!」
え? 場所代?
「え、いくら?」
「1回3千円でどうでしょうかっ!!」
1回3千円?
今あるお金は500円。
つまり3500円。
うん。
斧が買えるじゃないっ!!
◇ ◇ ◇
「とぅわあああああああああああああああ――っ!!」
「てええあああああやぁあああああああ――っ!!」
「やぁああああああああああああああああ――っ!!」
ってな訳で引き受けてしまった。その後彼女は一旦帰り、それから巨大な丸太を担いで持ってきた。
持ってきた丸太を素手でガンガンと地面に打ち付けると丸太は縦に直立した
そうして直立した丸太をロングソードで切り付け、彼女の訓練が開始する。
なんだか凄い大きな雄たけびを上げながら、彼女は丸太に切りつける。
ともかくでっかい声だ。練兵場を追い出されたと言っていたが、恐らくこの大声が原因だろう。
朝の11時に来て、今はもう夜の7時だ。
夜の7時……。うん、もう帰る時間だよねっ!!
自主的に帰ってくれる事を願っていたから下手な事言わなかったけど訓練しすぎぃっ!!
んもうっ!! 大丈夫なのっ!?
「えっと、柊さん?」
「あ、はいなんでしょうかっ!?」
汗でだっくだくになった体で彼女はこちらを振り向いた。
スポーツブラとスパッツだけの簡易な衣装。衣装が汗に濡れてちょっぴりエッチだ。
まぁ今はそんな事より。
「ご苦労様。麦茶でも飲む?」
斧は買えなかった。麦茶と。
「おにぎりと、あと色々お惣菜あるよ」
お惣菜とか買ってしまったから。
お腹空くだろうと思って色々おもてなし用の食料を買ってしまった。
だってほら。流石に何も出さない訳にはいかないし。
おやつのおまんじゅうなんかも買ってしまった。
現在の残金56円。500円より減っちゃった……。 おっかしいなぁ――。儲け話だと思ったんだけど。
「炊き立てご飯なくてごめんね。ウチお米は生米派だから」
「そうなんですかっ!? 私も小さい頃生米齧ってましたよっ!!」
あらそうなのかい? 苦労したのかな? いっぱいお食べ――。
「ほら、若い人が遠慮しないで。沢山食べて――」
「はい、いただきますっ!! ありがとうございますっ!!」
良いのよ良いのよ。良いのか……? まぁ良いか。
◇ ◇ ◇
「じゃあ、今日は失礼しましたっ!!」
「うんうん、良い訓練が出来たようでなによりだよ」
「また来ますっ!! 本当、助かりましたっ!! ありがとございますっ!!」
「ご苦労様。えっと、大丈夫? もう夜だけど」
「大丈夫ですっ!! 夜間外出許可証は持っていますからっ!!」
「そうか。まぁ軍人さんみたいだし、そこは大丈夫かな」
「じゃあ、またね」
「はい、では――――――っ!!」
結局あの子、夜の11時まで居たんだけど……。
なんとも元気な子だ。柊智代、か。
また明日来たりして。
「どうもっ!! また訓練場お借りに来ましたっ!!」
ふぇえええええ。また来たぁああ。 若い子って本当エネルギッシュだぁああ。




