元部員達の話
「行ってもらう遺跡はここから少し距離がある。
馬車で3日と行ったところか。
道中にも魔物の生息地があるから気を抜かないように。
何か必要な物があったら言ってくれ。
こちらの方で5日後の出発日までには用意しとこう。」
伍番隊隊長がそう言い地図を渡してきた。
「この辺りは兎角-ホーンラビット-の生息地か。
まぁその程度なら余裕だな。」
モリソンが地図上の経路を指でなぞりつつそう言った。
その後少し会議をした後、伍番隊隊長がこう締めくくった。
「よし、じゃあ今日はここまでだな。また一週間後にここに集合だ。
早くても一週間は帰ってこれないからな、各自準備を済ましといてくれ。」
俺は帰りに書店に寄った。
考古学についての書籍を買うためだ。
いくら大天才の俺と言っても考古学については素人に近い。
ましてやこの世界に来てからまだ数ヶ月しか経っていないのだ。
出発の日までに少しぐらいは予習しておいた方がいいだろう。
魔力を電力に変える研究は一旦後回しとなるがしょうがない。
書店で良さそうなのを見繕い家に帰るともう夕方になっていた。
家の扉を開けようと鍵を鞄から取り出していると後ろから声を掛けられた。
「朝倉先生、少し良いですか?」
振り向くと元科学部の子供達が揃っていた。
「皆、どうした?」
俺が尋ねるとダレンが答えた。
「ちょっとお話がありまして……」
真剣な面持ちの皆を見て俺は立ち話でするような事では無いことを悟った。
「そうか、とりあえず中で話そう。」
男の一人暮らし、さらには越して来たばかりだ。
客人用の椅子は勿論、座布団やクッションも無い。
なのでベッドにアルフレッド、アフロディーテ、サマンサ、タバサの4人、ダレンには俺が普段使っている椅子に座ってもらった。
俺は皆にジュースを振る舞い床に座る。
「ベッドの上でこぼさないでくれよ。
マットレスも布団もそれ1セットしかないからな。」
俺は笑いながらそう言うが4人は「うん。」と小さく返事をするだけだった。
何やら元気が無いようだ。
やはり何かあったのか?
そう思っているとダレンが話を切り出す。
「朝倉先生、僕達にまた科学を教えて貰えないですか?
勿論、朝倉先生の時間がある時だけでいいんですが……」
「いや、俺としては科学への興味を失わないでくれているのは嬉しいんだが……
何かあったのか?」
「単純に皆科学部の活動が好きなのと、あと実は……なかなか新しい学校に馴染めてなくって。」
ダレンは少しバツが悪そうにそう答えた。
「馴染めてないって言ってもまだ転入してから2日しか経ってないだろ。
まだまだこれからじゃないのか?」
そう尋ねるとダレンは詳しく話し出した。
何やら理事長や理解ある教師達は優しく受け入れてくれているのだが一部の教師達や元々いた生徒達の殆どがカーマ村から来た生徒達の事を良く思っていないそうだ。
「カーマ村の参雄学校って言えば元々優秀な人材を多数排出している事で有名なんですよ。
魔法や武術の大会でも毎年上位に入賞していますし。」
「うん?それがどうしたんだ?結構な事じゃないか。」
「えーとですね、そういう大会にはだいたい一校あたりの出場枠が決まっているんですよ。
つまりその優秀な魔法や武術の使い手がいきなり入ってきて、元からいたその部の部員達は大会への参戦権が取られるかもって思ってる訳でして。」
「なるほど、要はやっかみか。」
「そういう事です。
恐らく学業に関しても元ゴールドクラスの人達が上位を示そうな感じです。
だってこの2日間でやった授業、全部僕達は夏休み前に終わっている内容でしたから。」
なるほど、私立なのに学費が安いだけあって教育の質はそこまで高くないのか。
それとも参雄学校のレベルが高かっただけなのか……
「わかった。
まぁ、長い学園生活ずっとその状況のままって訳にもいかないだろうが……
とりあえず科学部は続けよう。
いや、部活じゃないから塾?
なんか固苦しいな。
まぁそれらしく適当に“ラボ”とでも呼ぶか。
明日学校終わったらまたここに集合!!
5日後から一週間程遠出する事になってるからその間は無理だけどとりあえずそれまでは毎日大丈夫だぞ。」
皆は明るい顔になり大きな声で返事をする。
「はい!!ありがとうございます!!」
楽しみが1つ増えた。
俺としてもこいつ等に科学を教えるのは好きなのだ。




