出発の日
その日以降遺跡への出発の日まで俺は徹夜で考古学の本を読み、日が昇るとその日のラボで何を教えるかを考え、夕方子供達が集まったらそれを実践するという過酷なスケジュールを過ごした。
この間平均睡眠時間は1、2時間程であった。
つまりは圧倒的睡眠不足である。
「目、クマすごいぞ。
大丈夫か?」
出発日当日、再び王宮に集合し俺の顔を見たモリソンが開口一番俺にそう言ってきたので俺は寝不足の理由を話す。
それを聞いたモリソンがこう言った。
「そうか、生徒達は新しい学校に馴染めてないのか……
フレデリックなんか特にそうだろうな。
今度一度会って話を聞いてみるかな。」
確かにフレデリックのあの性格では敵を作りやすそうではある。
「まぁ、それはそれとして遺跡までたっぷり時間がある。
馬車の操縦は俺とマリエで交代でするから思う存分寝ててくれ。
着いてから寝不足で仕事にならなかったら困るからな。」
「あぁ、悪いけどお言葉に甘えるよ。」
荷台に荷物を積み込み準備は完了した。
「では頼んだぞ。
気をつけて行ってきてくれ。」
第伍番隊隊長がそう言って送り出してくれた。
いざ、神話時代の遺跡へ出発。
…と言いつつ俺は馬車に乗り込むなりものの数分で眠りについたのだった。
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「……さん、…て…ださい。」
誰かの声が聞こえる。
とても優しくて落ち着く声だ。
「朝倉さん、起きてください。
今日の分の魔力補充しますよ。」
目を覚ますと俺は宿直室の机に座っていた。
どうやら本を読みながら寝落ちしてしまったようだ。
「朝倉さん、そんな所で寝ていたら風邪ひいちゃいますよ。」
「あぁ、イーナさん。
すみません、僕の為にわざわざ足を運んでくれたのにお出迎えもしないで……」
「いいえ、これはブレイブスの仕事なんですから。
朝倉さんは気にしなくていいですよ。
それに授業や部活の準備しながら他にも色々研究しているんでしょう?
疲れててもしょうがないです。」
「授業や部活の準備も研究も楽しいんですけどね。
楽しいからこそ知らない間に疲れが溜まってたのかもしれません。」
あれ?授業?
俺って確か教師辞めたんじゃ……
いや、気のせいか。
「どうしました?
不思議そうな顔してますよ。
私どこかおかしいですか?」
「いや、そんなこと無いですよ。
いつも通り素敵でいらっしゃる。」
「何言ってるんですか。
私におべっか使っても何も出ないですよ。
それともからかってます?」
少し赤らめた頬を膨らましながらイーナはそう返す。
あぁ、とても暖かい気持ちだ。
内容は思い出せないが机で寝ている間に悪い夢を見ていた気がする。
良かった、悪い夢は覚めたのだ。
イーナは魔力池に魔力を補充しながら言う。
「…肆部祭、成功させたかったですね。」
「え?それってどういう意味…」
「けど夢の中ででもまた会えて良かったです。
あの髪留め、大事に持っていてくださいね。」
「ちょっと、何を言って…」
優しく微笑む彼女の姿が少しづつ薄くなっていく。
「イーナさん!!」
「さようなら。
朝倉さん。」
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目を覚ますと俺は馬車に揺られていた。
涙が頬を伝わる。
あぁ、あれこそ夢だったのか。
俺は自分の事を女々しいやつだなと思いながら窓の外に視線を向けるのだった。




