夜明け
学校から逃げ出してきた者達はその夜、ブレイブスの本部で過ごす事となった。
もし再びアモンが現れた時にまとまっていたほうが護りやすいという魔法騎士団の意見を聞いた形だ。
とは言っても村人、騎士団合わせて200人程の人間がいる。
全員が入るには本部の屋舎は狭過ぎた。
なので中庭にもテントを張り、入り切らない者達はそこで過ごすことになった。
さらに王国魔法騎士団の何人かが村中の家を巡り肆部祭へと行かなかった人が家の中にいないか調べに行き、結果数人の村人を連れてきた。
当然だがその者達は学校で起きた惨事を騎士達から聞かされるまで知らなかったらしくかなり動揺している様子だった。
彼らは本部につくなり家族や知人を探しはじめ、安堵の声や嗚咽を漏らし始めるのだった。
そして夜が明け全員で学校へと向かう。
王国魔法騎士団 第伍番隊 第壱班が徹夜で後処理をしていてくれた。
校舎は全焼し跡形もない。
そして校庭には150体以上の遺体が並べられていた。
その殆どがドラゴンの炎に焼かれ原型をとどめていなかった。
だが可能な範囲では個人の特定をしなければならない。
ブレイブスの隊員達に関しては制服に銀製のネームプレートがついていたので直ぐに特定出来たらしいのだが他の村人はそうはいかない。
なので村長のカーマが持ってきた村民名簿やフォックスタイガー医師の持ってきたカルテと照らし合わせていく。
それで特定出来なかった遺体は身につけているアクセサリーなどがあればそれを校門で待たせている子供達に見てもらい心当たりが無いか確認する。
しかしそれでもおよそ半数の72人しか特定は出来なかった。
「この状態なんだ、半分も特定出来たのはいい方だろう。」
魔法騎士団第伍番隊隊長がそう言う。
しかしそこでカーマが暗い表情のまま応える。
「特定出来なかった76人ものご遺体を名前すら刻まれないお墓に埋葬しなければならないのは不憫で心苦しいですよ…
それに魔物達に骨まで喰われてしまったのか、炎に塵になるまで焼かれてしまったのか…ご遺体が何人か足りませんでした。
その方達に至っては埋葬すらしてあげる事が出来ない…
それが悔しくて堪らないのです。」
その後魔法で作り出した棺に遺体を1人づつ丁寧に納め、村の墓地へと運び、埋葬していく。
全ての遺体を埋葬し終わった頃にはもう日が沈み始めていた。
俺はある名前が刻まれた墓の前に立ち尽くしていた。
涙が出てしまいそうになったので目を閉じる。
するとその人の優しい笑顔が瞼の裏に浮かび上がり、余計に泣いてしまいそうになった。
そこに誰かが後ろから声をかけてきた。
「少し、いいか。」
俺は溢れ出そうな涙を必死に堪えて振り向いた。
そこには松葉杖をついて立っているナットの姿があったのだった。




