無情なる一報
王国魔法騎士団 第伍番隊 第壱班がドラゴンを狩りに学校へ飛んでいって少し経った時ローリングさんが暗がりから息を切らして走ってきた。
「お母さんっ!!」
ダレンが母親の元に駆け寄る。
「あぁ、ダレン!!無事なのね!!怪我は無い?」
ローリングさんは泣きながら息子を強く抱きしめる。
「ローリングさん、無事で良かった!!今まで何処に?」
俺が尋ねると彼女は涙を拭きながら答える。
「家の事をしていたら出るのが遅れてしまいまして、急いで学校に向かったら周りに土の壁があって入れなかったんです。
中では何やら悲鳴や怒号が聞こえていたので何かあったのではと思い連絡用魔道具を借りようと色々な家を訪ねていました。
しかしどのお宅も肆部祭に行っててお留守で…
その最中に王国の騎士様達と会い、学校内で起きた事とここに学校から避難してきた人達がいると教えて頂いたのです。」
本当に良かった。
俺が胸を撫でおろしていた所に、サイノン兄妹とオクマサ姉妹が駆け寄ってくる。
「おばさん、僕たちの親は見なかったですか?」
アルフレッドがローリングさんにすがるように尋ねる。
ローリングさんは悲痛な顔をしながら顔を横に振る。
「ごめんなさい。残念だけど…あなた達のお家も訪ねたのだけれど留守だったわ…」
「そう…ですか…」
アフロディーテがアルフレッドの腰当たりに顔を埋め、サマンサとタバサはお互いに手を繋ぎながら俯いている。
…そうだ、あの会場にはサイノンさんもオクマサさんもいた筈なのだ。自分の子供達の晴れ舞台を見るために…
しかし子供たちはまだ泣いていない。
魔物達の目とドラゴンの炎から逃れ何処かに身を隠しているという希望を、奇跡のようなその希望をまだ信じているのだ。
「ぅ、うぅ…」
気絶していたナットが目を覚ました。
「ここは、村…か?」
介抱していたリンが涙を浮かべながら答える。
「そうよ…パパ。」
「リン、俺は一体…」
ナットは言い終わる前に気絶する前の状況を思い出し、勢いよく身体を起こそうとする。
「ッツ!!」
「動いちゃ駄目。
回復するまでにはまだ時間がかかるわ。」
「あの後どうなったんだ?
他の隊員達はどうした?アモンは?」
「慌てないで。
お願いだから今は体を休める事だけを考えて。」
「そんな訳には、いかん!!」
「…そうよね、隊長だもんね。」
リンは必死に身体を起こそうとする父親を見て話すべきだと思ったのだろう。
諦めたようにあれからの事を全てナットに話しだした。
「ドラゴン…だと…
そんな時に俺は暢気に寝ていたのか…」
ナットは怒りと悲壮の入り混じった表情を浮かべながらワナワナと震える。
そんな時この場に残っている騎士の1人の小型連絡用魔道具に連絡が入った。
ーーこちら第壱班、ドラゴンの討伐完了。しかしアモンは見つからず、生存者も無し。ーー
暗い夜の村に何人もの子供達の泣き叫ぶ声が響き渡る。
無情なその一報はもしかしたらという微かな奇跡を信じていた者達の心を容赦なくえぐり取ったのだった。




