終わらない絶望
保険室へと薬などを取りに行ったチャックとビッグ・ジョーが戻ってくるまでの間、フォックスタイガー医師は癒やしの魔法をかける等の応急処置をナットに施していた。
俺はその様子を見ていたモリソンにもう外へと戻らなくても大丈夫なのか尋ねた。
「ああ、大丈夫だろう。残り3匹で無事な村人ももう全員避難したからな。あの人数で充分に対処できる筈だ。
それに実は俺の腕ももう限界でな。痺れが取れないんだよ。」
「モリソンさん、ナットさんの治療が終わったらあなたの腕も診せて下さい。
あなたの武器は腕への負担が大きい。」
フォックスタイガーがそう言い終わった時、保険室からチャックとビッグ・ジョーの2人が治療に必要な物を持って戻ってきた。
そしてナットの治療が始まった。
消毒液で傷口を洗い流した後薬を塗る。
そして栄養剤と魔法薬と呼ばれる血液中の魔血球を活性化させる薬を飲ませ、癒やしの魔法陣の書かれた包帯を傷口に巻いていく。
15分ほどかけて全ての工程が終わった。
「取りえずこれでもう安心です。回復には体力を使うのでこのまま寝かせておきましょう。
さて、次はモリソンさんの腕を診ましょう。」
ちょうどその時外の戦いも終わったようだった。
魔物を全て倒しきったのだ。
「終わったか…しかし被害が大きすぎた…」
外の様子を見ながらモリソンが悔しそうに言う。
「私の判断が間違っていた。
やはり肆部祭は中止にするべきでした。
あなたやブレイブスの方たちは良くやってくれましたよ。
全ての責任は私にある。」
村長のレオン カーマがそう言いながらモリソンの肩に手を置いた。
モリソンが唇を噛みながら腕の治療をする為に外から視線を外したその時、突然あの声が校内全体に響いてきた。
「およそ半分ですか。
少し甘く見すぎてたようですね。
さすが参英雄を有するだけはあるという事ですか。」
そして外からドーンという轟音が聞こえ、地面が揺れる。
皆が外を見る。
そこには一体の新たな魔物が召喚されていた。
全長10メートルはあろう身体は全身硬そうな鱗で覆われていて、背中には大きな翼。長い首と尻尾、そして手や足には鋭い爪。
それは正しく“竜−ドラゴン−”だった。
校舎内の空気が一気に絶望一色に染まる。
「そんな…もう、終わりだ…」
誰かがそう呟く。
ドラゴンがどの程度危険なのかを俺は知らないが皆の表情を見て察する。
「モリソン先生!!
あなたはドラゴンを狩った事があるんですよね!!」
ヨーダンブール校長がモリソンにそう尋ねたが痙攣をしているモリソンの腕を見て閉口する。
「残念ですがあの時は優秀な相棒と何日も前から準備をし、計画を立て、万全を期して挑み、それでもギリギリの勝利だったんです。
こんな急に、しかもこの腕の状態じゃ少しのダメージすら与えられませんよ。」
そう答えるモリソンの顔も引きつっている。
そして竜が深呼吸をするような動作をした次の瞬間…
校庭は火の海へと化したのだった。




