チャックとビッグ・ジョーJr
地獄の様な時間が開始してから2時間近くたった。
校舎内には隙きを見て避難することが出来た村人が何人か増えていた。
外の様子はと言うと魔物の数は残り3匹。虎、蟻、蜥蜴それぞれ一匹ずつにまで減っていた。
しかし村人やブレイブスの隊員達も相当数倒れている。
どちらも最初にいた数の半分程度までに減ってしまっていた。
魔物を全滅させるのは時間の問題だがそれでももう既に被害は甚大なのだ。
「隊長、貴方はもう限界だ。残り3匹なら隊長がいなくても対処出来る。校舎に避難していて下さい。」
バイスのその言葉にナットは首を横に振り答える。
「まだまだ余裕だよ。」
しかしその言葉には力が無く、足どりはおぼつかない。
誰が見てもナットが限界をとうに過ぎている事は明らかだった。
「モリソンさん。」
バイスがモリソンに目配せをする。
「あぁ。」
モリソンはそう返事をするとナットのみぞおちに重い一撃を入れた。
「なっ…にを…」
ナットはそのまま気を失う。
「じゃあ隊長さんを校舎内に運んでくる。
動ける村人は一緒に避難するぞ。魔物がここまで減った今なら逃げ切れる。」
モリソンがナットを肩に担ぎまだ避難出来ずにいた村人を引き連れ校舎に向かう。
3匹の魔物達はその団体に攻撃を仕掛けるが残ったブレイブスの隊員やスミスがそれを全力で防ぐ。
そうして無事に校舎内に避難することが出来た。
「パパ!!」
リンが父親に駆け寄る。
「大丈夫。気絶しているだけだ。」
モリソンがそう言うと共に避難してきた村人の一人がそれを否定する。
「気絶しているだけ?とんでもない。これは時間との勝負ですよ。」
続けてその男は自分の足にしがみついている少年に向けてこう言う。
「チャック。急いで保健室からありったけの消毒液と包帯を持ってきなさい、あと傷薬、魔法薬各種も。どれだか分かるね?」
その男は村で唯一の医者、タイガーフォックス氏だった。
息子のチャックはいつかダレンをからかっていた2人組の1人だ。
チャックは頷き保健室へと急ごうとするが足がガタガタ震えて思うように前に進めない。
それもしょうがない。
今の今まで命の危機にあったのだ。
10才の少年が直ぐに冷静になるのは厳しいだろう。
「何やってんだ!!俺様も一緒に行ってやるからしっかりしろ!!」
一緒に避難してきた村人の中からガキ大将のビッグ・ジョーJrがそう言いながら前に出る。
「動ける中で一番薬に詳しいのはお前だ。他の奴が行っても正しいのを持ってこれるか分からないんだから!!
歩けないなら俺様が背負ってやる!!」
そう言いビッグ・ジョーはチャックを背中に背負い保険室へと走り出した。
「いじめっ子の彼らも根っからの悪い奴じゃないみたいだな。」
俺がその後ろ姿を見ながらダレンにそう言うと彼はこう答えた。
「そうですよ。調子に乗りやすいだけで彼らは根は良い奴らです。僕は初めから知ってましたよ。」
ダレンがそう言うと説得力がある。
もし本当に意地が悪いだけの奴らならダレンはもっと彼らと距離を置くだろう。
これは本人に言うとこんな状況で不謹慎だと怒られそうだから言わなかったが横目でダレンを見ると少し嬉しそうな顔をしている気がした。




