続く絶望
モリソンが特別審査員の3人を抱え校舎に戻ってきた。
「直ぐに拘束魔法は解けるだろう。隊長さんもこれに魔力をかける余裕など無いだろうからな。
どうか彼の覚悟と信念を見届けてやってくれ。」
モリソンは3人にそう言うと次は俺に尋ねてきた。
「朝倉先生、フォルトナー先生はどうした?」
「教務室に行ってるよ。
近隣の村の学校に連絡を試みるために。」
「なるほど、しかしあまり期待は出来ないな。夏休みの上にもう夕刻だしな。
取り敢えず俺はまた外に戻るから引き続きこの3人と生徒達を頼む。」
「任せろ。
死ぬんじゃないぞ。
サンセット奢りの勝負はまだ生きてるんだから。」
「こんな状況になっちまったら勝ちも負けも無いだろ。」
「それじゃあ、互いに奢り合おう。」
「そうだな、それがいい。
それじゃちょっくら行ってくる。」
そう言い残しモリソンは再び戦地へと赴いた。
外の魔物の数は未だに十匹はいそうだ。
危険度Aのスカイガー相手に1人で対応出来る程の実力者はナットとモリソンの2人だけである。
Bのジャイアントやブリザードでさえ単騎で討てる可能性があるのはブレイブス副隊長のバイスと強いて言えば魔法のエキスパートのスミスぐらいだろう。
他のブレイブスの隊員達は2人以上で固まり対応している。
さらには村人を守りながらの戦いはそれだけで枷になる。
状況は絶望的だった。
「イーナ!!気を抜くなよ!!」
「はい!!」
1人の先輩の隊員と共に数人の村人を守っていたイーナはその先輩からの激励ともとれる言葉にに気を張り詰めながら返事する。
もう既に守りきれなかった村人もいる。
戦いの中で村人を庇い倒れていった仲間もいる。
イーナはその地獄のような現実を見ないようにしていた。
そこかしこから聞こえてくる悲鳴を聞こえないフリをしていた。
それらを意識してしまうと自分の不甲斐なさや絶望的な状況に心が折れてしまいそうだったからだ。
今はただ自分の背後にいるこの数人を守る事だけに集中しろ、と彼女は自分に言い聞かせていた。
先輩の隊員が攻撃を仕掛け、イーナが村人を守りながら魔法でその援護をする。
そうやって対峙していたブリザードをなんとか退治した。
2人とも決して気が緩んだ訳ではない。
ただ一匹の魔物を倒し、次の魔物を相手にするために1呼吸し、そして先輩の隊員が言葉を発した瞬間。
「よし!!次だ!!まだ敵は大量に…」
その隊員の身体は空から襲い掛かってきた虎に噛み千切られた。




