✕…望
危険な魔物を引き連れて突如として肆部祭のステージ上に現れたアモンと名乗る男はその目的を語りだした。
「私の目的、それは魔物の王の復活、そしてその魔王の野望の成就。つまり人間をこの世から排する。それだけです。
その為の計画の一つを遂行するためにこの村に来させていただきました。」
「魔物の王だと?見かけによらず随分と純粋な奴なんだな。そんなお伽噺を信じてるのか?」
ナットが気を張り詰めながらもアモンにそう問いた。
少しでも情報を探ろうとしているのだろう。
「魔物は確かに存在しているのにその王は信じないと?」
「まぁ、確かに…いてもおかしくは無いか…
だが何故それでこの村なんだ?
確かにこの村には魔物の王を倒した参英雄の伝説が残っちゃいるが…」
ナットが“参英雄”と口にした瞬間アモンの顔が変わった気がした。
「それですよ、“参英雄”。それが私が目的達成の為にこの村に来た理由。
その英雄達は実在してました。
いや、実在している…うーん、それも正しくありませんね…」
誰もがこの男が何を言っているのか理解できないでいた。
そんな事はかまわずにアモンは続ける。
「まぁ、それは言わば理由の理由。
あなた方が知る必要はないでしょう。
私がこの村に来たのはこの村の住人を皆殺しにするためです。
それは魔物の王の復活にどうしても必要な事なので。」
「な!?」
開場中が困惑の声を発するとアモンの笑顔が醜く歪む。
「では皆さん。絶望の中で死んで下さい。」
アモンは左手を胸に当て右手の指を弾いて音を鳴らす。
するとその周りがキラキラ光り出す。
「奴を捕えろ!!姿を消されたらマズイ!!」
ナットが獣が咆哮するが如く号令を出す。
すぐさまステージ上のブレイブス達がアモンに飛びかかる。
しかし今までおとなしくしていた魔物達が突如として動き出しブレイブスに襲いかかった。
間一髪で全員がその猛襲を躱したがアモンの姿はそこで見えなくなる。
「では私は離れた所から高みの見物とさせていただきます。せいぜい悪あがきをして楽しませてください。」
開場全体に嘲笑うかのような声がこだまする。
もはや声で位置を知ることは出きなさそうだ。
魔物達が周りにいる人間達を襲い始めた。
ブレイブスが襲われている人達を何とか助けようとするが十数匹の獰猛な魔物に苦戦している。
遂には魔物達の爪や牙で倒れる者が出始めた。
「朝倉先生!!流石のブレイブスでもこんな数の、しかも危険度B以上が相手じゃ対処しきれません!!
どうしよう!!このままじゃ皆本当に殺されます!!」
ダレンが泣きそうな声で俺にすがりついて来る。
「クソッ!!何とかする方法は無いか!!」
俺は頭をフル回転させるが会場を脱出する方法はおろか、魔物の大群の対処法など分かる筈も無い。
「取り敢えず校舎の中に逃げるぞ!!」
俺は近くにいた生徒達にそう叫ぶ。
ステージ上にへたり込んでいた魔物研の部員達は顧問のアンナ フォルトナーが足を怪我しながらも舞台袖まで救出していた。
生徒全員を顧問の教師達で誘導し校舎へと入る。
しかし観客を誘導する余裕など無かった。
つまりは生徒達の家族はまだ魔物の暴れまわる校庭に取り残されたままだ。
生徒達が家族の名前を泣き叫びながら窓から外を見る。
そんな中、武戦部顧問のモリソンと魔法部顧問のスミスが俺に話しかけてきた。
「朝倉先生、生徒達の事頼むぜ。」
「フォルトナー先生は部員を助けるときに足に怪我を負ってしまいました。
癒やしの魔法をかけはしましたがしばらくは自由に動けないでしょう。
校舎から生徒達が出ないようにあなたがしっかり見張っていてください。
簡易的な物ですが校舎に魔除けの結界を張りました。
しばらくは魔物は入って来れません。」
「まさか…」
俺がこの2人が何をしようとしているのか察し動揺しているとモリソンが懐から短剣をこちらに放り投げた。
「素人でも念の為に持っいた方がいいだろ。」
そう言い残しモリソンとスミスは校庭へと出ていったのだった。




