不思議な力
ナット、ダレン、アフロディーテの3人がブレイブス本部を出発した後、俺はナットの代わりに本部での対応の為に残ったイーナと話していた。
「それにしてもディーテちゃん凄いですね。びっくりしました。見た目はただの可愛い女の子なのに。」
「ナットさんもそう言ってましたよ。勿論僕から見ても彼女はとてつもない。」
「朝倉さんだってとてつもないですよ。オリジナル魔法陣なんてそんな簡単に作れる物ではありません。ましてや魔法を使えない人がそれをやり遂げてるんですよ。」
「元々色々な分野を研究して発明するのが僕の仕事ですからね。その経験が役にたっただけですよ。」
そう返すとイーナが呆れたように笑う。
「朝倉さんはもう少し世間の常識を身に着けた方が良いですよ。もし、あのオリジナル魔法陣が知られ渡ったらいくつもの研究機関から朝倉さんをスカウトしに来てもおかしくない代物なんですから。」
「例えそうなったとしても僕は全て断ると思いますよ。」
例えばこの世界のトップレベルの研究機関に所属すれば元いた世界に帰る研究も今より捗るかもしれない。
しかし最近俺はこの村での生活が嫌では無くなっている。
むしろ楽しく思っているのだ。
それこそ元いた世界での生活よりも…
あの世界での俺の生活はラボに籠もりひたすら研究と発明の毎日だった。
親も、友達も、恋人もいない。いつも一人きりだった。
1人でいるのは嫌いではないし 、昔からそれが当たり前だったので苦では無かった。
好きな研究や発明に没頭出来るので幸せだと思っていた。
いや、幸せだと自分に言い聞かせていたのだ。
しかしこの世界、この村に来て色々な人と出会い、関わりを持った。
教師をして人に教える楽しみも知った。
知らなかった“世界”を知ってしまったのだ。
俺は科学者だ。自分の知識にないこの“世界”の事をもっと知りたいという欲には抗えない。
そういう事もあり今では帰りたいという思いは段々と薄くなってきている。
科学者として帰る方法を見つけはしたいしそのための研究を止める気はないが見つけたとして、実際に帰るかどうかは今では自分にも分からない。
「ダレン君の靄を見る力も凄いですし、科学部って何気に凄い人達の集まりですよね。」
イーナがお茶を入れながらそんな事を言う。
「実は僕が一番不思議に…というか気になっているのがそれなんですよ。ダレン君のあの力。」
「確かに不思議な力ですよね。
魔法の一種…では無いですものね。魔力が無いんですもの。
強いて言えば、超能力…?」
「超能力ですか、科学者としては認めたくない力ですね。」
まぁ魔法が存在しているこの世界で何を今更といった感じだが…
イーナがお茶を運んで来てくれ俺の前に置く。
「コーヒーちょうど切らしていて、お茶ですいません。」
「いえ、ありがとうございます。」
イーナは向かいに座るとしばらくして小さくあくびをした。
「すいません、はしたないですね。」
「そういえばイーナさん昨夜遅番でしたもんね。
もしかしてそのまま朝から今まで村で調査を?」
「そうなんですよ。今日は緊急シフトでブレイブス総動員でして…
動いてる分には大丈夫なんですけどね。
座ると眠気が一気に来ちゃいました。」
それでも寝まいと体を伸ばしている彼女を見て、俺は村を守るブレイブスの大変さを改めて気が付かされたのだった。




