黒い靄
今回はダレン語り部回です
どうも皆さんこんにちは。僕はダレン ローリングと申します。
肆部祭まであと3日となりました。出し物で発表する制作物も今日で完成し、明日には試運転。今から緊張しています。
部活の終了後、魔法部も丁度終わったらしくリン姉と帰る事になりました。リン姉は僕の幼馴染で姉の様な存在です。魔法部の部長をしています。
歩きながらリン姉が尋ねてきます。
「どう?肆部祭上手くいきそう?」
「うーん、多分…明日の試運転で問題無ければ…」
「ハッキリしないわね〜。ホントに大丈夫なの?」
「正直わからないんだよね。
肆部祭に観客としてじゃなく出演者として参加するの初めてだから。」
今までは部活をしてこなかったので観客としてしか肆部祭を知りません。それに村の人達には馴染みの無い科学です。反応が読めないですし怖くないと言ったら嘘になります。
「まぁそうよね。けど魔法部は手を抜いたりなんかしないわよ。今年も優勝狙ってるんだから。」
魔法部は去年優勝しています。
今年も相当レベルの高い出し物をしてくるでしょう。
「リン姉は凄いね。いつも自信に満ちてるし、それに見合う実力もあるし…流石王国内でも有名な魔法部の部長だよ。」
「何言ってるの。アンタだって科学部の部長でしょ。その年で部長になるなんて凄い事なんだから自信持ちなさい!!」
「言い出しっぺだからなっただけだよ。別に凄くな…」
ゴンッと大きな音と共に僕の頭を鈍い痛みが襲いました。
「痛っ!!何するのさ、リン姉!!」
「部員の皆で話し合ってアンタが良いって選ばれたんでしょ!!
もっと誇りを持ちなさい!!
げんこつ程度で済んで良かったでしょう!選んでくれた皆の前で同じ事言ったらぶっ飛ばされるよ!!」
恐らく科学部の部員の中に人をぶっ飛ばすような人はいないと思います。1番アグレッシブなサマンサでも人に暴力を振るうような子ではありません。
だけどリン姉の言わんとしている事は分かります。
そしてそれが正しい事も。
「そうだよね…皆の思いを無駄にしちゃいけないよね。ありがとう、リン姉。」
少し気持ちが前を向く事が出き、目線を前に向けたその時、僕の体に悪寒が走りました。
血の気が引いていき真夏だというのにとても寒く感じました。
それなのに心臓の鼓動はとても早くてうるさいし汗が滝のように出てきます。
僕はその場から動けなくなりました。
「どうしたの?ダレン。」
リン姉が心配そうな顔で尋ねてきます。
僕は息が荒く声も中々出せなかったのですが伝えなくてはと必死に声を絞り出します。
「も、靄。今、あの角曲った人に…あんな濃い黒…見たことない…」
リン姉がその角に向かって凄い速さで駆けていきます。
曲ったその先を見てリン姉は悔しそうな顔をして言います。
「誰も…いない。」
僕達はブレイブスの本部まで行き、リン姉のお父さんでありブレイブスの隊長でもあるナットさんに話しをしました。
ナットさんは厳しい顔になり質問してきます。
「そいつはどんな身なりだった?この村の人間か?」
「ごめんなさい。角を曲がる所を一瞬しか見れなかったから格好までは分からなかったです。」
「そうか…どの程度の“濃さ”だったんだ?」
「2年前のあの時よりも数段濃かったです。初めて見ます。あんな濃い黒。」
「そんなにか…子供を拐って売ろうとする奴よりも邪悪な奴という事か…」
僕には悪意や害意と言った黒い感情が靄の様に見えるという不思議な力があります。
2年前、人身売買を目的とした誘拐未遂がこの村でありました。
犯人は旅商に扮し村に来ていたのですが、黒い靄をその旅商に見た僕はナットさんに報告し、子供が拐われる寸前で犯人は捕まりました。
その時の犯人も相当な濃さでしたが今日見た靄はそれ以上でした。
誘拐や人身売買以上に恐ろしい事をしようとしているのかもしれない…
「僕がもっとしっかり見ていれば…」
僕は悔しさと後悔で泣いてしまいました。男の子だというのに人前で泣いてしまうなんて…
「ダレンは何も悪くない。アンタのおかげで危ない奴がこの村にいるという事が分かったんだから。後はパパ達に任せましょう。」
リン姉がそう言い優しく抱きしめてくれました。




