菓子折りとヘアピン
俺はイーナの正面に座りコーヒーを注文した。そして買ってきた菓子折りを彼女に渡しながら言う。
「これ、普段ブレイブスの皆さんにお世話になっているのでそのお礼です。皆さんで食べてください。」
「え、良いんですか?わざわざお礼なんていいのに…」
「魔力を持たない僕が生活出来てるのもブレイブスの助力あっての物なので当然の事ですよ。貰ってください。」
「ではありがたく頂戴しますね。うちの隊員達皆お菓子好きだから喜ぶと思いますよ。」
「あと、これはイーナさん個人に…」
そう言いかけた所で彼女の髪に真新しいヘアピンが付いていることに気がついた。
あぁ、新しいの買ったのか。そりゃそうだよな。
「どうかしました?」
イーナが不思議そうな顔で尋ねる。
「い、いや。何でもありません。」
俺は買ってポケットに忍ばせていた虹色の石のヘアピンをどうするべきかここに来て分からなくなった。
もし、このヘアピンのデザインが彼女の好みから逸脱していたら?
それに冷静に考えてこんな物をいきなり渡されたら普通なら引くのでは?
俺の頭の中がネガティブな思考で埋め尽くされる。
渡すべきでは無いのかもしれない…
「お待たせしました。アイスコーヒーです。」
ウェイトレスがテーブルにコーヒーを置く。
その音で俺はハッと我に返った。
「イーナさん、ヘアピン壊れたと聞いていたのですけど新しいの買ったんですね。」
「あれ?もしかしてアンちゃんにでも聞きました?そうなんですよ。ついうっかり踏んじゃって。
無いと困るから直ぐに買ったんですけどあまり好きなデザインが見つけられなかったんですよね〜。もう少し可愛げのあるのが良かったんですけど。」
「可愛げのある…」
「一応これでも女子ですからね。あまりにも装飾が大き過ぎると仕事的にも困りますけど、出来る範囲ではオシャレもしたいですよ。」
俺はポケットの中でヘアピンの入った小箱を軽く握りしめた。
「あ、あの、イーナさん。ではこれなんかどうですか?」
そう言い小箱をテーブルに置いた。
「イーナさんには特にお世話になったのでそのお礼です。気に入っていただけたらいいんですが…」
俺の心臓はバクバク言っている。
イーナは戸惑いながらも小箱を開けた。
「可愛い。」
彼女は一言そう言うと髪に付けていたヘアピンを外し代わりに虹色の石のヘアピンを付けた。
艶のある綺麗な金色の髪によく似合う。
「どうですか?」
「とても良く似合ってます。想像してた以上に…」
俺は嘘偽りのない感想を述べた。
イーナはとても嬉しそうな顔で言う。
「ありがとうございます。大事に使わせていただきますね。」
良かった…気に入ってもらえたようだ。
人に何か贈り物をするのがこんなに緊張するなんて知らなかった。
そのまま少し話をしたところでイーナが仕事の準備のため帰る時間になった。
「では、また夜お会いしましょう。ヘアピンありがとうございます。」
「いや、お礼を言うのは僕の方です。夏休みの間本当に助かりました。おかげで肆部祭にも間に合いそうです。」
「肆部祭楽しみにしてますね。警備しながらですけど見させていただきます。」
イーナと一旦別れ宿直室へと帰る。
夜にはまた彼女と会える。
俺はその事を嬉しく思っていたのだがその夜彼女から不穏な情報を得ることなるのだった。




