贈り物
アンに案内されとある雑貨屋に着いた。
店内に入るとそこはまさに種種雑多といった感じで、様々な商品が一見乱雑に置いてある。
俺は何か良い物がないかと店内を物色する。しかし人にお礼の品など贈った事が無い為どんな物が相応しいのか分からずにいた。
「…さっぱり分からん。値段もどの程度が相場なのだろうか…」
俺のそんな様子を見かねたアンがアドバイスをしてくれた。
「あまり高価な物はやめたほうが良いっスよ。逆に相手に気を使わせてしまうっス。特にイーナっちみたいな性格の人だと尚更っスね。
大事なのは気持ちと実用性っス。」
「気持ちと実用性?」
「そうっス。気持ちは言うまでもなく感謝の気持ちっスね。これが1番大事ッスよ。気持ちがこもってないと相手はそれに気がつくものっス。
次に実用性っスけど、これは相手にとって必要な物か、相手が気に入ってくれるか、とか、そういう事っスね。いくら良い物だったとしてもそれが相手が使わない物、好みじゃない物だったら貰っても困るだけっス。人に貰ったものは捨てるのも憚れるし。」
難しいな…
俺は続けてアンに教えを乞う。
「アンはイーナさんともよく話すのだろう?彼女の好みとか何を欲しがっているとか知ってたりしないか?」
「そうッスねー。甘い物に目がないって事ぐらいしか知らないっスね。
会えば世間話ぐらいはするっスけど特別仲が良いって訳でもないっスよ。言ったっスよね?“そこそこ”仲が良い、って。あくまでそこそこっす。」
甘い物か…確かに彼女はいつも紅茶に大量の砂糖を入れていたな。だとすれば菓子折り辺りが良いのかもしれない。
そう思い店の一角にあった菓子コーナーへ向かう。
その途中虹色に淡く輝く綺麗な石を花のようにあしらったヘアピンに目が止まった。とても彼女に似合いそうだ。手に取りそれを見ているとアンが思い出したように言った。
「あ、そういえばこの間髪留めが壊れたって言ってたっスね。自主訓練中に落として踏んじゃったとか。」
数分後買い物を終え店を出る。アンにも手伝ってもらった礼に何か欲しいか聞いたが断られてしまった。
「別に欲しいものとか特にないッスよ。代わりにといっちゃアレっスけど村で何か変わった事があったら教えて欲しいっス。」との事だった。
「今日はありがとうな。助かったよ。」
「いえいえっス。じゃ私は適当に散歩の続きでもして帰るッスよ。」
「あ、そうだ。例の喫茶店の幽霊だけどな、もう出ることは無いと思うぞ。」
「え?そうなんスか?何か分かったんスか?」
「幽霊なんていなかったって事だよ。」
俺はそう言い彼女と別れ、喫茶店に向かう。
思ったより買い物に時間をかけてしまった。急がなければイーナが帰る時間になってしまう。
夜、巡回で宿直室へ来てくれた時に渡すのも考えたが職務中に渡されるのも迷惑だろう。
やはりこのタイミングがベストだと思う。
急ぎ足で喫茶店に到着しドアを開け店内を見渡す。
まだ帰っていなければいいが…
…いた!
窓際の2人がけのテーブルに1人で座って本を読んでいた。
俺は彼女の席まで行き声をかけた。
「こんにちは、イーナさん。ご一緒しても良いですか?」
彼女は俺を見ると微笑みこう返す。
「こんにちは、朝倉さん。勿論良いですよ。」




