アン ダンテ
今回初登場のアンさん。作者的にはアフロディーテと同じぐらい便利キャラだと思います。話の枕にしやすそうな感じで。
魔法部の顧問のミネルバ スミスと一悶着あった翌日、俺は絶対に優勝してやる、とやる気が満ち溢れていた。
アフロディーテに今日作ってもらう部品の説明をする。
しかし何だか違和感がある。アフロディーテも心なしかいつもよりも熱心に説明を聞いている気がするのだ。
まぁ、でもきっと気のせいだろう。俺が勝手に自分の心境を彼女に投影しているだけなのだと思う。
俺はその違和感を無視することにして説明を続けた。
「これで今日の部品の説明は終わりだが、何か質問はあるかい?」
「ない…任せて。」
アフロディーテはそう短く言うと魔法陣に魔力を流した。
出来た部品も完璧でその日の部活は終了した。
俺が部室を出ようとしたところにアフロディーテが小走りで近づいてきた。
「ディーテね、科学もね、科学部の皆もね、勿論先生もね…好き…だからね…ずっと、科学部にいる。」
微笑みながらそう言うと彼女は恥ずかしそうに部室を出ていった。
…やっぱり何か変だな。
昨日の事を知っているのか?
いや、あの場には俺とスミスしかいなかったし俺は誰にも言っていない。アフロディーテが知り得る筈無いのだ。
関係ない所で何かあったのかもしれない。しかしそれはあの表情を見る限り良い事だったのだろう。心配する必要は無さそうだ。
俺は宿直室へ戻り肆部祭の詳しいプランを練り始めた。
制作している物に関しては自信があるのだが肆部祭で優勝する為には見せ方が大事だ。いくら凄い物を作ってもただそれを見せるだけでは優勝は難しいだろう。
「出来るだけ派手な方が良いな。持ち時間30分を目一杯有効に使い観客を楽しませるには…」
俺は紙にいくつかの案を書いていくがどれもいまいちに感じる…
小一時間程考えていたが行き詰まってしまった。こういう時は気分転換でもしたほうが良いのだ。
「散歩がてらあの喫茶店にでも行くか。苦いコーヒーでも飲めば頭も冴えるだろう。」
喫茶店に向かう道中で見覚えのある顔に声をかけられた。
「あれ?科学先生じゃないスか。今日は買い物っスか?それとも喫茶店?サンセット行くにはまだ早いッスもんね。」
シルバークラス 出席番号1番 、アン ダンテ。学校でも授業以外ではあまり喋った事無い生徒だ。
「やぁ、アン。確かに喫茶店に行く途中だが…何故君があの喫茶店やサンセットに俺がよく行く事を知ってるんだ?」
「私散歩が趣味なんスよ。ひがな一日村中を歩き回ってるんスよね。それで村のおばちゃん達とも仲良くなって色んな噂や情報が耳に入るんッス。科学先生は村でも結構話題になってるっスよ。」
先ず科学先生とかいう珍妙な呼び方が気になるがまぁそれは置いとくとして…
「話題って…知らないところで自分の話をされるのはあまり気持ちの良いものではないな。どんな風に言われてるか分かったもんじゃない。」
しかも行きつけの店までバレているとはプライベートもクソもあったもんじゃない。
「仕方ないっスよ。突如現れて学校の先生になって、しかも教えてるのが科学なんスから。話題になるのは当然っス。でも帰ってきた救世主なんて言われてるぐらいスから悪く思われてはいないんじゃないスかね。」
「ちょっと待て、もしかしてその恥ずかしいあだ名は村中に知られ渡っているのか!?」
「まあ、そうッスね。」
なんて事だ。俺はこれからどんな顔をして村を歩けば良いって言うんだ…
俺が項垂れているとアンは思い出したかの様にこんな話をしてきた。
「そういえばあの喫茶店最近幽霊が出たって噂になってるんスよ。何でも誰もいない所から声が聞こえてきたとか、誰も入ったり出ていったりしてないのにドアが勝手に開いたとかなんとかで。」
「幽霊?くだらないな。どうせ風かなんかで開いただけだろ?声にしたって空耳かなんかだろうし。」
「それがその日は風なんて吹いてなかったって話っスよ。しかも見えない何かが肩にぶつかって来たって言ってる人もいるっス。」
「ふーん。まぁ魔法や魔物が存在してるんだから幽霊がいても不思議では無い…のか?」
「何言ってるんスか。幽霊なんか本当にいたら正直怖いっスよ。」
どうやらこの世界でも幽霊の存在は証明されてないらしい。
「まぁ、今のところその1日しか幽霊は出て無いみたいスけどね。もし今日も現れたら教えて下さいっス。」
「別に良いが、幽霊は怖いんじゃなかったか?」
「怖いけど興味はあるっスよ。じゃあ私はここらへんで失礼するっス。」
そう言ってアンは散歩を続けるためにその場を去っていったのだった。




